〈虫よもやま話-9-〉 共生 |
「そんなにストレートに朝鮮人って名乗る人と初めて出会った」 日本の大学院に通って3年。初めて会う人によくこのように言われます。 近年、日本社会では「多民族共生」や「多文化共生」という言葉をよく耳にするようになりました。社会がどんどん国際化していく中で、互いの立場を理解し尊重し合い、共に生きる大切さが強調されています。
しかし、この分野では昆虫界は私たちの大先輩。今では研究者によって、日々その驚くほど絶妙で巧妙な共生関係が解き明かされています。 アリがアブラムシから甘露をもらう代わりに、捕食者から身を守る関係などはその最も代表的な例です。共生には上の例のように両者が得をする「相利共生」や、寄生虫が宿主から栄養分を摂取する関係など片方だけが得をする「片利共生」があります(そんな人、身の回りにいませんか?)。 最近では昆虫界で見られるさまざまな共生関係の仕組みを解明し、そこから共生社会構築のヒントを得ようとする研究が活発化されています。そして、それらの研究で明らかになった共生の主な成立要素として「自分の立場を明確にする」というのがありました。 自分の立場を明確にするということは、あらゆる問題に対して常に自身の立場を明確にするということであり、そこから相互理解が生まれ、共生関係を構築する土台ができあがります。逆に自分の立場を明らかにせず、利益を得る方ばかりを選択する者がいる場合、昆虫界ではひんぱんに「だまし合い」が起り、共生関係を築くことは難しいでしょう。 私は現在、四国初中の寮で生活をしていることから、学校で行事があるたびに大学内で宣伝をして回っています。 そのかいあってか、複数の学生や先生たちがたびたび学校行事に訪れ、朝鮮学校について学び、感動し、そしてそこから芽生えたものを共に分ち合い育んでいます。 私たちは互いに共生できる社会を目指し、共に友好と親善の火を点し続けることが重要なのではないでしょうか? だから私はその第一歩として、自己紹介をする時にはいつも堂々と言います。 「私は在日朝鮮人です」 アリが決してアブラムシとは名乗らないようにですね。(韓昌道、愛媛大学大学院博士課程) [朝鮮新報 2008.10.3] |