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夏休み、教員たちの講習会 全国から150人が参加

 夏休みを利用して朝鮮学校教員たちの各種講習会が、東京都小平市の朝鮮大学校で開かれた。「初級部教員教科講習」(8月20〜22日)、「中級部理科夏季教員講習」(8月20〜22日)、「情報教育担当教員講習会」(8月21〜23日)の模様を紹介する。(金潤順記者)

モデル授業に刺激を受ける 「情報教育担当教員講習会」

「moodleによる自習システムの活用」の講義

夜遅くまで行われた実習

 「情報教育担当教員講習会」には、24人の初中高級学校担当教員たちと朝大教員が参加した。

 9年連続開催されている講習会では「情報技術教育の現状況」についての講義と行政実務事業でのGoogle AppsとLinux(ubuntu)の活用、コンピューターネットワークの制御とPCの遠隔操縦についての講義および実技指導が行われた。

 他にも、各学校からの情報授業の経験発表、「簡単な測定と制御」「エクセルの基礎操作習得のための効果的な授業」「画像処理のモデル授業」「moodleによる自習システムの活用」「ウィルス駆除措置と迷惑メールの対処法」「文字のデジタル化と朝鮮語処理について」の講義が行われた。

 金炳潤さん(神戸初中)は、「難しい内容もあったが情報教育担当教員としてのあり方を学べた。そして、多くの先生たちの熱意と努力に感銘を受けた。モデル授業では具体的な授業のイメージがつかめた。今後は、レベル別講習、管理者講習なども企画してほしい」と感想を残した。

 また、崔玲姫さん(岐阜初中)は、「学校ごとに環境や条件が異なる中で皆がどのように授業をしているのか、そのためどんな努力をしているのかを知ることができて多くの刺激を受け、たくさんのことを学んだ。特に、技術を教えることがすべてではなく、授業を通して知識を与え、ただコンピューターを扱うのではなく、コンピューターをどのように利用するのかを教えることが大切なのだということを再認識した」と語った。

 河民一・朝大短期学部副学部長は、「教科書ができて5年が経過する中、今年の4月には新たに教育参考書が出版された。講習は教員たちの資質向上に大きな役割を果たしている。カリキュラムの要求に沿って授業の質を高めるのが当面の課題だ」と語った。

授業に利用できる化学、地学、物理、生物の専攻講習

「生徒主導型の授業観」に手応え

「中級部理科夏季教員講習」

理化学研究所の李秀栄さんの講演

ファラデイモーター作成実験のひとコマ

 全国的な理科教育水準の底上げを図るため理科教員たちを対象にした講習会は毎年開催されており、確かな実績を積んでいる。今回は対象を中級部に絞り、04年に改編された教科書の実用性を高めるためのさまざまな研究が執り行われた。

 「中級部理科夏季教員講習」には今回、31人の中級部理科担当教員を含め、朝大教員、学友書房職員、朝大研究院生など37人が参加。講習ではまず、04年版教科書を3年間利用した経験を踏まえて、申成均・学友書房職員と朴洋子・埼玉初中教員による講演「教科書編纂の意図と実効性」が行われた。

 講演では、03〜05年に行われた教育内容およびカリキュラム改編の目的と基本方針、改編の主な内容、そして、日本政府が推し進めている教育改革について語られた。講習ではこの他にも、化学・地学・物理・生物の専攻講演、模擬授業、実験、活発な討論なども行われ、最終日には李秀栄・理化学研究所協力研究員による講演「最先端の研究―量子、古典、そしてハイブリッドについて」が行われるなど盛りだくさんの内容となった。

 今回初参加となった朴志ラさん(和歌山初中)は、「中1から中3までの理科を担当する中で苦労も多いが、講習には実践にすぐ活用できる内容がたくさん含まれており、大変参考になった。とくに4つの専攻講演では学ぶことが多く、教師としてより知識を深めて教壇に立たねば、という刺激を受けた」と話した。

 鄭賢玉さん(山口初中)は、「山口県からは1人での参加となった。講習には同年代の教員や年配の先生方もいて連帯感を持てた。実験実習では私自身が楽しめたので、生徒たちもきっと楽しめると思う。学校に戻って実践してみたい」と語った。

 また、金誠俊さん(北大阪初中)は、「理科教育を通じてどのような人材を育てるのか、自然や科学に対する知識・技術・技能をどのように伸ばすのか。講習を通じて、教科書の内容を一方的に与えるのではない、『生徒主導型の授業観』というのを学んだ。さっそくその課題に取り組んで行こうと思う」と述べた。

 教科書編纂委員の朴洋子・埼玉初中教員は、「理科教員講習は今年で4年目。1.2回目は初中級部講習、昨年は初級部講習、今年は中級部講習と、内容を対象化して充実させてきた。同時に理科教員たちの教育ネットも立ち上げ、ネット上で授業研究の報告、資料提供ができるよう体制も整えた。実験指導書もアップされ、理科教育の財産としてすべての理科教員たちが共有している。講習では日本各地に散在する朝鮮学校の教員たちが顔を合わせ、授業研究を共にし、悩みを打ち明け、共に教育現場を守っているという連帯感を深めるのもひとつの狙いとなっている。今後の課題のひとつは、この講習を毎年継続すること。今年は5人の新任教師が参加したが、毎年新しい教員が増える中、彼らが学べなければせっかく積み上げてきたものが崩れてしまう。講習の継続−これが何よりも大切だ」と切実に語った。

思考力育てる授業を 「初級部教員教科講習」

「初級部6年間の作文指導」についての講義

 昨年開催された21全大会では、朝鮮学校を守り民族教育をより発展させるため、教員たちの資質向上に力を注ぎ、校種別特性に合った教育内容と方法を改善するよう方針が示された。

 今年の「初級部教員教科講習」では、多科目を教える初級部教員たちの実情を踏まえて算数と日本語の2科目に焦点を絞り、教育理論と具体的な授業方法についての講義と、各地域での授業経験、資料の交換などが活発に行われた。

 日本語教育の講習では、「敬語について」「PISA型読解力について」「初級部1.2年生の日本語授業」「初級部6年間の作文指導」についての4つの講義が行われたほか、1.2年、3.4年、5.6年と学年担当別の討論も行われた。

 また、講義内容に沿って参加者全員が400字詰め原稿用紙に向かい、生徒同様、作文を書き発表するというユニークな実践も行われた。

 算数教育講習では、「思考力について」「学力について(統一試験の分析)」「教科書についての解説」の講義他、実際の授業風景(録画)を教材に低・高学年別の授業研究が行われた。他にも学年ごとの教材解説および質疑応答などが深夜まで続けられた。

 講習に参加した李英華さん(西東京第2初級)と李綾香さん(西神戸初級)は、「参加して良かった。とても勉強になった」と口をそろえた。2人はこの春、大学を卒業した新任教員だ。

 「自分の授業を客観的に振り返ることができ、克服すべき点を明確につかめた。ベテラン教員のアドバイスも受けたし、モデルになる授業方法も学べた。学校現場に戻れば、ぜひ、実践したい」(李英華さん)

 「今まで45分間の授業を組み立て実践するのでいっぱいだった。振り返ってみると、生徒一人ひとりを見る余裕すら持てずにいた。今回、いろんな先生たちの経験を聞いて、授業は生徒たちのものであることをあらためて気づかされた。まだまだ未熟なので、今後、他の科目の講習にもぜひ参加して多くの事を学びたい」(李綾香さん)

 授業風景(録画)を講習の教材として使われ、参加者たちの厳しい批評を受けたという許貴男さん(東京第5初中)は、「算数教育で生徒たちの思考力を育てるという講義内容がとても印象深かった。思考力は生きる力につながる。子どもたちの思考力をのばすため、質問の工夫をしていかねば」と話した。

 また、李哲玟さん(尼崎初中)は、「久しぶりに朝大で宿泊し、初心を取り戻した気がする。教員として13年のキャリアがあるとはいえ、学ぶことには限りがない。思考力についての講義やPISA式読解力についての講義では新鮮な刺激を受けた。ぜひ、実践で試したい。今後も講習を毎年続けて、多くの教員たちが参加できるようにすると良いのでは」と語った。

 朝鮮大学校教育学部教育学科および初級部算数・日本語教育分科の主催で開かれた同講習会には、39校、80人の初級部教員たちを含む朝大・朝高教員ら87人が参加した。

[朝鮮新報 2008.9.5]