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〈教室で〉 四国初中 中級部国語担当 李貴順先生

生徒の目線大切に 共に考える、想像力 チャレンジ精神を育む

 愛媛県松山市に位置する四国朝鮮初中級学校。四国4県、唯一のウリハッキョだ。全校生23人、寄宿舎を抱える。初級部3〜6年生では、2学年ごとに複式学級を実施している。学校に足を踏み入れると、小人数とは思えないほどの生徒らのハツラツさに圧倒された。上級生から下級生まで、みなが兄弟のように親しみ合う。実にアットホームな環境だ。そんな同校の最年長クラス−男子生徒1人の中級部3年生を受け持つのは、同校の卒業生でもある李貴順先生だ。

多くの時間を生徒と

いつも明るく笑顔を絶やさない

 「前の時間には、どんな内容を習いましたか?」−中3国語の授業が始まった。この日は、現代国語学の基礎を固めた国語研究者「周時経」の伝記の学習だった。

 内容は、受け答えをしながら、一つひとつ分析していく。新しい語彙も、そのまま教え与えるのではなく、一緒に意味を考える。前後の文章を見ながら、また、実体験を交えたヒントを与えながら意味を読み取っていく。

 たとえ生徒が答えを誤っても、その理由を探りながら、正解へと導く。「頭ごなしに否定をしてしまうと、生徒は尻込みし、答えることに臆病になってしまう」。問題集を解くにも、考え、まとめる力を引き伸ばすため、極力自分の言葉で答えを書くように指導する。すると、生徒も懸命に答えを考える。

 授業を終え、李先生が感想をたずねると、生徒は「周時経先生のように、家族や友だちを愛し、勉強をもっとがんばろうと思いました」と述べた。「国語は、教養科目でもある。小説にしても詩にしても、教訓や教えがある。より良い教養を与え、感性を伸ばそう」と、教授参考書だけに頼るのではなく、さまざまな関連知識も集める。また、生徒の想像力を豊かに育むために、感動やインスピレーションを大切にしているという。

 常に生徒の習得状況、弱点を見極め、そのつど、教授法や指導法を変えていく。

 休み時間、李先生はすぐに教室を去るのではなく、生徒としばし会話をしていた。少しでも多くの時間を生徒と過ごし、向き合うことで、互いをもっと深く知り、理解し合おうと心がけているからだ。

マンツーマンで

中3国語の授業風景。生徒の表情を見極め、指導を行う

 マンツーマンの授業ゆえの制約もある。

 例えば、「聞き、話し(会話)」の教材。聞き手も話し手も、生徒と先生、2人のみ。他に比べて水準がどうなのかわからない、多数の例も見られない、周りの評価も聞けない。「会話は実践が大事なのに、マンツーマンでは、なかなか難しいですね」。

 また、自分の考えをまとめ、話すことに苦手意識を持つ生徒もいる。大勢の前で発表する機会があまりないからだ。だから発表の授業では、聞き手を増やすために、教員室で作業する教員らに参加を頼むこともあるという。与えられた条件の下で、どれだけ発表、スピーチ能力を高められるか、模索する日々が続く。

 中3を受け持ったのは、今年から。その前の4年間は、初1を担任していた。ほとんどのことを手取り足取り教えていた初1とは違い、中級部生は、ある程度の責任感があり、大体のことを自らやりこなせる。「中級部になると、こんなにできるんだ」という思いの反面、成長がすぐにわかる初1に比べ、成長を見極めるのが難しいという。

 教室の掲示板には、朝鮮語と日本語のいろんな詩や言葉が張られていた。「朝鮮語の美しい音律を感じてほしい。また、多感な時期だから、多くのものに目を向け学び取ってほしい」という李先生の思いからだ。生徒もまた、それを熱心に読み、感想を語るという。

 クラスに生徒1人、同級生はいない。下級生と仲はいいが、ずっと同じ時間を過ごすクラスメイトとは、また違う。取材した時、生徒は足のじん帯を損傷し、松葉杖をついていた。彼の手を取り、荷物を持つのは李先生。「クラスメイトがいれば、手伝ってもらうのに。そしたら、先生に迷惑もかからなかったのになぁ」とは、生徒の言葉。「そんな時こそ、友だちのありがたみ、友だちを思いやる気持ちをより感じられるのに」と、胸をしめつけられる思いがした。

「生徒中心」

授業に集中し、ノートを書き取る生徒

 生徒には、「『自分はできない、成績が悪いから…』などと諦めるのではなく、自信を持って、なんでもやってみるというチャレンジ精神、自立性を培ってほしい」と願っている。

 そんな李先生が常に心に留めていることは、「生徒中心」。何をするにおいても、生徒のためになるのか、生徒はどう思うかなど、生徒の目線で考え指導をする。

 「李先生は、時に原則的に、時に姉のように生徒と接している」と、同校の金英雄校長。また、「生徒はこうあるべきと、自分の考えを押し付けるのではなく、前後を見極めながら的確に指導を行っている」と、付け加えた。

 「生徒たちの喜ぶ姿、成長に、何よりもやりがいを感じるし、それが力になる。また、共にがんばり、悩みを共有できる同僚の存在は大きい」から、どんな壁も乗り越えられると、李先生はいう。

 教員歴8年目。「常に生徒の中にいる教員でありたい」と目を輝かせた。(姜裕香記者)

※1978年生まれ。四国朝鮮初中級学校、広島朝鮮初中高級学校、朝鮮大学校文学部(当時)卒業。2001年度から新潟朝鮮初中級学校で3年間教べんを執る。04年四国朝鮮初中級学校に赴任。現在、中級部3年担任、中級部集団長を務める。05年度模範教授者。

[朝鮮新報 2008.8.22]