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「ストップ! 学習権の侵害」 朝鮮学校差別問題、日弁連勧告報告集会

勧告内容実現に向け行動を 「ゴールでなくスタート」

 「ストップ! 学習権の侵害 中華学校・朝鮮学校への税制上の差別等に関する日弁連勧告報告集会」(主催=中華学校・朝鮮学校人権救済申立弁護団)が10日、東京・文京シビックセンターで行われ、東京、神奈川の朝鮮学校、中華学校の関係者をはじめ同胞、日本人ら約130人が参加した。集会では申立代理人の弁護士たちが日弁連(日本弁護士連合会)の勧告書と調査報告書について解説し、申立当事者である東京、神奈川の朝鮮学校、中華学校関係者、保護者たちが学校運営や教育現場の実情を語り人権侵害の是正を求めた。

「踏み込んだ内容」

日弁連勧告報告集会(10日、東京)

 日弁連人権擁護委員会への調査報告も行った李春熙弁護士は、日弁連が子どもたちの学習権の侵害状況を深刻に受け止め、日本政府による中華学校、朝鮮学校外しの問題点や学校運営の困難さなど細部にまで「かなり踏み込んだ内容で」言及したとし、その意義について▼指定寄付金制度、特定公益増進法人制度における税制上の差別的取り扱いについて初めて言及、▼徹頭徹尾、子どもの学習権保障の観点で具体的に考察、▼中華学校、朝鮮学校の「公益性」を正面から認定、▼一部の外国人学校を優遇する「ダブルスタンダード」「トリプルスタンダード」を批判、▼外国人学校全般を視野に入れて勧告したものだと強調。「根本的には民族教育の制度的保障につなげていかなければならない」と指摘した。

 金舜植弁護士は、教育補助金問題で朝鮮学校を各種学校として扱い「言い逃れ」をしてきた日本政府が、特定公益増進法人制度ではさらに欧米系のインターナショナルスクールとの差を設け朝鮮学校や中華学校を排除していると指摘、各地の多民族共生教育フォーラムや外国人学校協議会の活動、「外国人学校および外国人子弟の教育を支援する議員の会」の発足などに言及、共に理解を深め、力を合わせていかなければならないと強調した。

寄付依存の運営

 日本の国庫からの補助がなく自治体からの補助も極端に少ない朝鮮学校や中華学校は、学校運営の大部分が同胞らの寄付に支えられており、保護者の負担も大きい。日弁連調査報告書も「指定寄付金制度の適用は、むしろ寄付金依存の経営とならざるをえない中華学校、朝鮮学校にこそ積極的に行われるべき」と指摘した。

 横浜山手中華学校の潘民生校長によると、同校ではわずか376坪の敷地で448人の児童・生徒が学んでいる。生徒数増加に伴う校舎新設を寄付に頼るしかなく、資金繰りに苦心しており指定寄付金制度の不適用が足枷になっている。潘校長は、そうした不利な状況にあるため対象の子どもたち2万3000人のうち800人余りしか民族教育を受けられないでいると指摘した。

 東京朝鮮学園の李英銖理事は都内52校の私立小学校と東京朝鮮第3初級学校の財務状況を比較。私立小学校の場合、学校収入に占める補助金の割合が22.1%、寄付金の割合が7.1%(05年度)であるのに対し、東京第3初級の場合、補助金3.2%、寄付金60.7%と根本的な差がある。また日弁連報告書によると、学校収入のうち施設、教育機器に充てられる予算の割合が、私立小学校平均12.2%に対し、東京第3初級はマイナス7.3%と極端な開きがある。

 さらに李弁護士は、朝鮮学校への寄付行為に指定寄付金制度が適用された場合の試算を例示。10億円の寄付を集める場合、約3億3000万円の税負担軽減が見込めるという。

「理論的な武器に」

 金哲敏弁護士は「勧告はゴールではなくスタート。今後、地域でどのように運動を広げていくのかが大切だ」と述べ、李理事は「勧告は画期的な内容。朝鮮学校の教育環境を改善するための活動の理論的な武器になる」と強調した。

 神奈川朝鮮中高級学校の張末麗教員は、「子どもたちにはお互いの違いを認め合えられるよう育ってほしい。差別をなくすために行動しよう」と訴え、神奈川県オモニ会連絡会の孔連順代表は、「教育問題は待ったなし。大人たちが立ち上がり、勧告を実現させ、子どもたちがその恩恵を受けられるようにしよう」と呼びかけた。

 この日の集会には、「外国人学校及び外国人子弟の教育を支援する議員の会」幹事長の山下栄一参議院議員(公明)、事務局長の馳浩衆議院議員(自民)から連帯のメッセージが送られてきた。(泰)

[朝鮮新報 2008.5.19]