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〈教室で〉 東京第4初中 呉英哲先生

ヒントを元に答えを探す、ユニークな詩作の授業も

 「日本で梅雨がない地域はどこですか?」

 初4社会の授業。

 小テストの答案を返しながら、前の時間に学んだ内容を復習する。東京朝鮮第4初中級学校(東京都足立区)で呉英哲先生(38)は、初4社会と中2、中3の日本語の授業を受け持っている。

初4社会

教壇に立つ呉先生

 この日、社会の授業で4年生たちは、日本にあるいろんな産業について学んだ。

 「日本の農業の中心は稲の生産です。私たちが主食にしている米の栄養価は、タンパク質、炭水化物、ビタミンなどです。稲作は4月に田植をした後、10月に収穫をします…」

 呉先生は、黒板の横に吊り下げられた大型スクリーンに関連内容を映しながら、児童たちに「新しい知識」を与えていく。

 日本地図の上で耕地面積が占める割合を見ると、主な稲の生産地は、「上の部分」に集中していることがわかる。呉先生は児童たちに質問する。

 「なぜだろう?」

 子どもたちは、先生が出したヒントを頼りに、「寒い地方は有害な虫が少ないから農薬をたくさん使わなくても良い」「都会と違って土地が多いので農業をしやすい」「品種改良が成功して寒い地方でも稲作ができるようになった」「平野には川が流れているから農業に必要な水が豊富」という答えを探し出した。

 続いて野菜、果物、畜産物の生産地を学ぶ。スクリーンに映し出された日本地図を指しながら、呉先生は児童たちに地名を答えさせる。キャベツは長野、群馬、愛知、神奈川、千葉、ブドウは山梨、リンゴは青森、秋田、長野、ミカンは愛媛、和歌山…。

 授業で使ったプレゼンテーション装置は、同胞、卒業生、青商会の会員らが寄贈したものだという。

いろんな「枝」

初4社会の授業風景

 呉先生の初4社会の授業の基本スタイルは「講義」である。

 「子どもたちの興味をひきつけながら、その日の到達目標に合わせて、多角的な知識を正確に伝える。知ってること自体が少ない状態では、まずいろんな知識の『枝』を与えて、その中から児童たちが情報を総合的にまとめ、答を探し出していくのも大切」と、呉先生は考える。

 中2、中3の日本語の授業でも、「生徒たちがいくら日本で暮らしていると言っても、正確な日本語を聞けるのはこの時間しかない」と、文学作品の鑑賞やそれについての解釈にも力を注いでいる。

 中2(06年度)の詩作の授業では、ユニークな取り組みも行っている。日本の代表的な詩である「道程」(高村光太郎作)を素材に、@ポイントとなる言葉を抜いてそこに自分の言葉を入れて詩を作ろう、A自分の隣に座っている友逹を素材にして詩を作ろう、B起承転結の詩を作ってみよう、C自分の詩を作ってみようという4つの段階別に生徒を指導する。

 呉先生は、「これもいろんな『枝』を与えて生徒たちの想像力をかき立てるための方法」だと説明する。

 作品には生徒たちの個性と観察力、創造力が凝縮されていた。

 今日も見える君の背中
 おもしろいよね
 やんちゃだよね
 君のことを誰もが見てる
 いつもと違う君の表情
 しっかりしてるりりしい姿
 君のことを誰もが見てる
 君が注意すれば
 ほら、静かになった
 ねえ、わかるでしょ?
 ねえ、気づいてるでしょ?
 君の存在が
 どれほど大きいかって
 君には皆を引っぱれる
 すごい力があるんだよ
 (康絢順、「自分の隣に座っている友逹を素材にして詩を作ろう」より)

学校を愛する心

教室には寄贈されたスクリーンが

 思春期を迎えた子どもたちと接するうえで難しい問題もあるが、それより同じ教室でいろんなことを共に感じ、共に発見する喜びを共有したいと考える呉先生は、常に生徒と一緒に学ぶ姿勢を持ち続け、生徒の言葉に耳を傾けることを座右の銘にしている。

 「日本には思春期の子どもたちに接するためのマニュアル本もある。しかし、それを参考にはしても、そのまま適用はできない。なぜなら、民族教育を受ける子どもたちには特有の問題があって、共通点があるからだ。朝鮮学校の子どもたちは仲間意識が強く、愛校心も強い。日本で暮らしていても、日本の子どもたちとは違う面がある。高学年にもなると、学校を愛する気持ちが芽生えて、厳しい情勢の中、朝鮮学校を守らなければならないという強い意識を持つようになる。 同胞たちが守り、良心的な日本の人たちが支えてくれる朝鮮学校は、言葉通り子どもたちの学びの搖りかごですよ」

 教員として、代を引き継いで同胞社会を守り、発展させていく人材を育てるために、毎日の授業研究を疎かにはできないと言う呉先生。「足立同胞社会の拠点であるわが校の生徒数を増やすため、これからもっともっと頑張らなくては」と、新たな決意を固めていた。(文=金潤順、写真=盧琴順記者)

※1969年生まれ。東京第4初中、東京朝高、朝大歴史地理学部(当時)卒業。東京中高中級部で9年、東京第4初中で8年間教べんをとる。同校教務主任、初4社会、中2、3日本語担当、卓球部指導員。中央教研初中社会分科分科長。

[朝鮮新報 2008.3.21]