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〈論考H〉 危機再来? 不安定な南経済

ウォン暴落と97年通貨危機

 米国発金融危機が世界経済を巻き込む中、アジアで最も打撃を受けているのは南朝鮮(以下「南」)である。とりわけ、ウォン安が止まらない。米ドルに対するウォンレートの推移をグラフにしてみると、暴落ぶりがはっきり見て取れる(図表参照)。ウォンレートは今年1月2日に1ドル=938.2 を記録していたが、11月17日現在1409.0 まで暴落している。その下落幅は470.8 で、実に50%の下落率となる。特に金融危機が始まった9月以降のグラフの傾きはすさまじい。

 ウォンの暴落で思い出されるのは97年の通貨危機である。当時、南はウォンの暴落により外貨保有高が底を尽き、「国家破産」の危機に直面した。その後、IMFを中心に世界各国から総額570億ドルにおよぶ緊急融資を受けたが、その見返りとしてIMFに経済主権を明け渡す事となった。今回もそうした事態に陥るのであろうか。

南政権、通貨危機否定

 李明博大統領は10月27日に行われた「国会」での施政演説で、「断言するが、通貨危機はない」と嘯いた。この強弁の背景には、第一に、97年と違い外貨保有高が豊富にある、第二に、米中日と通貨スワップ協定(※参照)を締結したという「自信」がある。

 南は10月現在、2123億ドルの外貨を保有しており、これは通貨危機の発生した97年12月の204億ドルと比較すれば約10倍の規模となる。また、韓国銀行は10月30日に米連邦準備制度理事会(FRB)と300億ドルの通貨スワップ協定を締結(2009年4月30日まで)し、中国、日本ともそれぞれ40億ドル(全額人民元)、130億ドル(100億ドル分の日本円+30億ドル)を結んでいる。つまり、有事の際には保有外貨が第一の防衛ライン、米中日との通貨スワップが第二の防衛ラインとして重層的に機能するため通貨危機には陥らないという「自信」だ。

「羊飼いの少年」

 李明博政権の「自信」とは裏腹に、現状として通貨危機の否定は確実性を帯びていない。その理由は、第一に、南の資本市場が97年危機以降、外資に対して完全に開放された事、第二に、世界市場を駆け巡る投機資本の規模が当時よりも増大した事にある。

 南は97年にIMFの融資条件に従って、外国人投資と関連したすべての規制を撤廃した(98年5月25日)。こうした規制のない開放的な資本市場に対して、約1兆8000億ドルの運用資金を持つとされるヘッジファンド等の投機資本が攻撃を仕掛けた場合、外貨は一気に底を尽く恐れがある。実際、米メディア・ブルームバーグは、投機資本が「アイスランドに続いて、南を次の標的にしている」と報道している。つまり、現状は投機資本の動向如何によっては、何が起こるか解らないという極めて不安定な状況なのだ。

 南の民衆は「大韓民国CEO(最高経営責任者)」という幻想を振り撒きながら、経済での失政を繰り返してきた李明博及び政策担当者達に対して、もはや「羊飼いの少年」のレッテルを貼っている。「CEO」及び「会社役員」は「会社」に真の危機が訪れた時、「社員」の信頼を失った事を後悔するのだろう。(楊憲、朝鮮大学校政治経済学部助教)

※通貨スワップ協定

 外国為替市場において自国通貨の暴落が発生し、一時的に外貨不足に陥った際、自国通貨と引換に相手国通貨を融通してもらう協定。この協定を締結する事で、当該国の外貨保有高は潜在的に増大する。

[朝鮮新報 2008.11.25]