「在日朝鮮人歴史・人権週間」08年度後半期 関東大震災 朝鮮人虐殺をテーマ |
実行と事件の誘発 日本政府の責任明らかに 関東大震災(1923年9月1日)から85年、関東を中心に各地で講演会や写真展などさまざまな行事が行われている。日本人と在日朝鮮人の調査団体、市民団体などの賛同の下で昨年から2度行われた「在日朝鮮人歴史・人権週間」は、08年度後半期のテーマとして震災直後に発生した朝鮮人虐殺事件を取り上げている。歴史的事実と国際的な人権基準による検証、事件を誘発させた日本政府の責任が追及されている。 埼玉で全国集会
「在日朝鮮人歴史・人権週間」の全国集会(実行委員会)が8月30日、さいたま市の大宮ソニックシティ国際会議室で行われ、関東を中心とした全国各地の研究者、活動家をはじめとした同胞、日本人ら約200人が参加した。 集会では劇団「タルオルム」が演劇を披露。関東大震災が発生した当時の時代背景や朝鮮人虐殺が起きた経緯を再現し、同胞の無念の思いを表した。 また、事件当時、朝鮮人虐殺を目撃し、99年に日本弁護士連合会に人権救済を申し立てた故・文戊仙さんの娘、尹峰雪さん(66)が、母親から「何度も聞かされた」当時の体験談や、同胞の無念を晴らすために証言を決心した母親の思いを語った。 「(朝鮮人殺害現場を目撃した)母は夏の夕焼けのたびに震災当時を思い出し、『日本人を怒らせるな。殺される』と言って震えていた。ただ、虐殺したのは日本人だが、助けてくれたのも日本人だと言って、みんなが仲良く暮らせるはずだと願っていた。日本政府は真相を解明して、謝罪し、二度とこうしたことが起きないよう務めてほしい」
続いてシンポジウム「今問われる真実と責任、そして現在」が行われた。 埼玉県朝鮮人強制連行真相調査団の石田貞・日本人側団長は、内務省から県、市町村へと伝えられた埼玉県の移牒文を示し、それにより自警団が組織され朝鮮人殺害に走ったと経緯を説明。「政府の責任を問うと共に、虐殺に走った民衆の意識についても問うていかなければならない」と指摘した。 立教大学の山田昭次名誉教授は、日本当局が朝鮮人虐殺の証拠隠蔽や事実抹消を図った事実を公文書などから指摘した。また、朝鮮人虐殺事件の被告たちの「実刑率」が日本人虐殺や「警察を襲撃しての朝鮮人虐殺」と比べ極端に低いことを指摘し、今なお責任から逃れようとしている日本政府の姿は「恥の上塗りだ」と批判した。 日弁連人権擁護委員会で同事件の調査委員長を務めた梓澤和幸弁護士は、朝鮮人虐殺の責任を認め謝罪し調査するよう日本政府に求めた2003年日弁連勧告の内容とその意義について解説。「国が(虐殺を)自らやり、やらせた」ことが徹底した調査で明らかになったと指摘した。 東京造形大学の前田朗教授は、ジェノサイド(集団虐殺・抹殺)の国際的定義について解説。関東大震災朝鮮人虐殺について国連で「日本人による最初のジェノサイド」と非難されたことを挙げ、日本政府がジェノサイドや人種差別を取り締まる法律を制定しようとしないことを批判した。 集会では、愛知、京都、大阪、山口での「在日朝鮮人歴史・人権週間」の取り組みが紹介された。 また、日本政府が過去の加害の歴史と教訓を踏まえ平和と友好のために朝・日関係を改善させるとともに、「在日朝鮮人歴史・人権」運動を幅広く推進していこうとのアピール文が採択された。 各地で賛同企画 1日、東京・墨田、埼玉・大宮、熊谷、本庄、児玉郡上里町、千葉・船橋など各地で、虐殺された朝鮮人の追悼式が挙行され、多くの日本人と在日同胞が参列した。また、群馬、千葉、大阪などでは集会や写真展を予定している。 神奈川では、神奈川県朝鮮人強制連行真相調査団の主催の下、8月26日に横浜市の神奈川県民センターで講演会が、8月25〜28日にかけて横須賀市の横須賀三浦教育会館で写真展が開かれた。写真展に訪れたある日本人は、「デマで朝鮮人が殺されたと聞いたことはあったが、あらためて知って衝撃を受けた」と語った。 朝鮮人強制連行真相調査団日本人側共同代表の原田章弘横須賀市議は、「基本的な歴史問題が解決されなければ、遺族や在日朝鮮人はいつまでも心に引きずったまま生きていかなければならない」と語り、国や自治体が責任を認め謝罪し、碑の建立や追悼会など誠意をもって供養すべきだと指摘した。(取材班) [朝鮮新報 2008.9.3] |