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〈point de vue 私はこう見る-10-〉 経営と会計

企業の利害調整機能

 6月は株主総会の季節。3月決算を終えた企業が株主に経営責任を説明する。今期の企業決算での特徴は増配と株主配分の増加である。

 日本経済新聞に「株主配分、利益の5割」という記事が掲載された。上場企業が株主に対して利益配分を増加させているという内容である。

 株主への利益配分には配当と自己株式の取得が含まれる。自己株式の取得は本質において株主の投下資本を払い戻すことになる。企業会計上、自己株式の取得は純資産の減少として計算される。

 01年に商法(現会社法)が改正され、自己株式の取得が解禁されて自己株式の取得と保有の規制が緩和された。これを契機に上場企業は資本政策として自己株式を取得できるようになった。

 自己株式を取得する主な目的は、企業にだぶつく余剰資金を株主に返還することによって株主に利益を還元すること。また、市場に流通する株式を回収することによって1株当たりの利益を上げること。そして、株価をつり上げM&A対策にすることなどである。

 このように、法制度上、経営政策上も株主重視の方向に向かっているといえる。株主に利益をもたらすために企業が活動していくということである。

 しかし、企業の利害関係者は株主だけではない。株主はもちろんのこと、債権者、そしてその会社の従業員、取引関係先も利害関係者になる。まさにこの中で利害対立が起こりうる。株主対経営者、株主対債権者など。

 株主は出資者なので、経営者がしっかり経営活動を行っているのかを決算書類を通して確認することになる。経営者が決算書類を通じて説明責任を果たすことによってこの利害対立は解決される。

 株主の利益を確保するために無制限に配当したり、自己株式を取得したりすると会社の財産を減少させることになるので債権者にとってはリスクの増加につながる。そこで配当や自己株式の取得には財源規制がかけられており、純資産の一定割合の範囲内で株主配分を行うようになっている。株主と債権者の間にはこのような会計を通じた調整機能が働くのである。

 しかし、ここでもう一つ見逃せないのは株主と従業員の利害対立である。

 従業員は自分たちの成果である収益からなるべく多く報酬をもらいたいと思う。しかし、従業員への配分は人件費となり、企業利益の減少につながってしまう。

 株主は企業の業績評価を企業利益によって行うので、あまり高い人件費を支払われると株主の利益配当が損なわれる。

 この利害対立の調整を行うのも会計の役割ではないだろうか。

 会計上、人件費支出は損益計算書に記載されるが、業態によって売上原価に含まれたり、試験研究費に含まれたりして見えづらくなっている。そこで、キャッシュフロー計算書の直接法を用い人件費支出を可視化することによってわかりやすくすべきであると考える。

 やはり、こういった会計による調整だけでは不十分なので経営者の采配も重要になる。

 株主と従業員、その相反する利害を調整するのは至難の業である。しかし、そういった利害対立に正面から向き合い、双方にとってよい仕組みを作り出すことが今日の経営者に求められているといえる。(廉貴成、朝鮮大学校短期学部准教授)

[朝鮮新報 2008.7.14]