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〈point de vue 私はこう見る-7-〉 企業永続化のポイントは?

「株主価値最大化(グローバルスタンダード)経営」からの脱却を

 各種偽装の発覚、老舗料亭が廃業に至る「滑稽な」経路などモラルなき「偽装大国」ぶりを余すところなく示している日本。一方で、日本が長寿企業大国の面を有することをご存知ない読者も多いのでは?(長寿企業とは通常、100年以上存続している企業を指す)

 創業200年以上の歴史を誇る企業は世界41カ国に5586社ある。

 国別に見ると日本3146社、ドイツ837社、オランダ222社、フランス196社、イギリス186社、ロシア149社、オーストリア142社、イタリア104社で、米国は14社に過ぎない。

 ひところ会社寿命30年説が話題になったが、ある調査によると日欧企業の平均寿命は12.5年。南朝鮮の場合、2000年の12.7年が06年には10.4年へと短命化に拍車がかかっている。

 なぜ、「カンパニー資本主義」の象徴−米国に長寿企業が少なく、企業の平均寿命は縮まるばかりなのか?

 いくつかある要因のひとつに米国発の「グローバルスタンダード経営」=株主価値最大化経営がある。

 たとえば、元来、資本「調達」=リスクマネー供給の場として機能した資本市場が、「モノ言う」株主によって多額の配当要求、自社株買い(一株当りの価値を押し上げる)を要請する資本「提供」の場に変貌し、企業の長期的視点に立った事業育成機会を奪っていると考えるからだ。

 また、「モノ言う」株主が短期的な利益を求め「株式の通貨化」をテコに、企業を「商品」のように売買する企業買収・合併が、世界的規模で頻発していることとも関連しているだろう。

 他方、株主に限らず顧客や従業員、取引先、地域住民など広範な利害関係者との「信頼」に経営の軸足を置く欧州企業に長寿企業が相対的に多いのはこの反証に値するのではないだろうか。

 1990年代以降、経営の「米国化」に邁進する日本。しかし、世界最古(西暦578年創業)の企業−金剛組(創業者は百済から渡来した工匠で日本最古といわれる飛鳥寺と並ぶ四天王寺を建立)−が存在するのも事実だ。世紀を越えて成長と存続を図ってきた老舗企業には「長寿の秘訣」ともいうべき共通項がある。

 第一に、経営者と従業員に一体感をもたらすアイデンティティやビジョンがしっかり根付いていること。

 第二に、本業中心に事業展開しつつも環境変化に機敏に対応できる、すなわち伝統継承の基盤の上に顧客起点の変革力を兼ね備えている点だ。

 第三に、歴史を通して培った独自の技術や知識を内部に蓄積し、その伝承を人材育成の礎としていること。しかも、この「人財」が伝統の継承と自己変革力の主体となっている。

 最後に、企業とは社会的公器という認識から取引先や顧客との関係を重んじ、長期的な戦略行動に焦点をあわせるため資本市場からの規律付けを敬遠する傾向が強い。

 経営の本質は新製品・サービスの創造による顧客評価の獲得にあり、その源泉は会社もしくは従業員の「知」である。まして、相対立する利害関係者の要求とのバランスを取りながら価値ある製品・サービスを創造するためには多くの時間を要すだろう。

 富の「創造」なしに「分配」はないのである。「グローバルスタンダード経営」との対極に企業(事業)永続化のポイントがありそうだ。(趙栄来、朝鮮大学校経営学部准教授)

[朝鮮新報 2008.6.23]