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〈point de vue 私はこう見る-6-〉 朝鮮の要求は米国の政治的補償措置

日本の意図的曲解とその結末は

 「行動対行動」原則に基づく朝鮮の対米圧力が米国を動かし、6者協議が新たなステージを迎えようとしている。

 核施設無能力化および過去の核計画申告という「行動」に対し朝鮮が米国に求めている「行動」は、「テロ支援国」指定および「敵性国通商法」適用の解除である。

 この問題をめぐる日本での一般的論調は、「カネのほしい朝鮮が経済制裁解除を米国に求めている」というものだ。マスコミは、朝鮮が求めている二つの行動のうち「テロ支援国家」指定解除を意図的に大きく取り上げ、それを朝鮮の経済的困窮と結び付け論じている。

 米国は「KAL機爆破事件」(1987.11)を契機に1988年1月、朝鮮を「テロ支援国」に指定した。米国はテロ支援国に対して大きく4つの経済制裁を課している。その内容は@武器輸出の禁止、A軍需・民生二重用途品輸出統制、B貿易制裁、C対外援助の禁止である。

 この中で特徴的なのは対外援助禁止措置である。これにより米国は、自国の対朝鮮援助および輸出銀行の保証を禁止するだけでなく、IMFや世銀などの国際金融機関において対朝鮮借款供与および事業支援について常に反対票を投じることを義務化している。つまり朝鮮はいかなる国際金融機関による支援からも締め出されているのだ。

 このように見るとその通りではと思いがちだが、これは大きく二つの意味で間違っている。

 ひとつは、米国の対朝鮮経済制裁の根幹は朝鮮戦争開戦を契機に1950年に適用された「敵性国通商法」であるということだ。「敵性国通商法」は、適用国との交易を禁止し国内のすべての資産を凍結するだけでなく、適用国と交易した国に対しても米国との交易を禁止する。つまり、この法が適用された国は国際社会全体から経済的に孤立させられることになるのだ。「テロ支援国」指定解除による経済制裁が解かれたとしてもこの適用国である限り経済制裁は続くのであり、これこそ対朝鮮経済制裁の根幹を成しているのである。

 もうひとつは、朝鮮が米国に求める問題解決の核心を曲解しているということだ。

 朝鮮が米国に一貫して求めているのは、対朝鮮敵視政策の転換である。その中で、今回米国に求めている「行動」は経済的問題ではなく「政治的補償措置」(朝鮮外務省スポークスマン)だということを逃すと本質は見えてこない。

 先に見たとおり、「テロ支援国」指定解除要求が経済目的でないことは自明であろう。これは「テロとの戦い」を錦の御旗に掲げる米国の対朝鮮敵視の政治的根拠を取り除くことにある。

 では、「敵性国通商法」適用解除要求はどうだろうか。確かにこれは直接的には経済制裁解除を求めるものである。朝鮮経済はこれにより、60年近くも国際経済システムから不当に排斥され、正常な経済活動は大きく制約された。現在の経済的困難もこれによるものが大きい。

 しかし、この問題を米国に対する経済的要求問題としてのみ捉えるのは一面的であろう。注目すべきは、この法律が適用されるのは朝米が未だ交戦国であるからという事実だ。つまり、この問題は朝米敵対関係の根源である朝鮮戦争の終結を経済的に宣言するという大きな意味をも併せ持つと見るのが正しい見方である。

 朝鮮を「テロ支援国」とし、朝米関係の改善を経済問題に意図的に矮小化する日本が、他の選択肢が無いことに気づくのはいつなのだろうか。(朴在勲、朝鮮大学校経営学部准教授)

[朝鮮新報 2008.6.16]