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〈point de vue 私はこう見る-5-〉 価格転嫁の「連鎖反応」

消費者と中小零細企業を圧迫

 投機マネーによる原油価格の暴騰、バイオ燃料転換による穀物価格の高騰を背景に石油製品はいうにおよばず、食料品をはじめ身近な生活必需品にいたるあらゆる商品価格が値上げされ、消費者の生活を脅かしている。

 暫定税率期限切れで一時は下がったレギュラーガソリンの価格(4月28日現在130.3円/リットル)がこの6月に入り171.9円/リットル(全国平均、石油情報センター6月2日)と1.3倍に跳ね上がった。

 総務省は5月30日、4月の全国消費者物価指数が0.9%(05年を100とする)上昇したと報じた。一時、下がったガソリン価格等の影響を考慮すると、実際はもっと上昇しているはず。穀類や肉類など食料品(変動の激しい生鮮食品を除く)が幅広く値上がりして物価を押し上げたとしている。

 値上がり品目の上位はスパゲティ(30.2%上昇)、チーズ(27.7%上昇)、即席めん(18.4%上昇)など(いずれも3月比)。

 5月26〜30日の全国約470店舗のスーパー、デパート平均小売価格は、今年1月に比して輸入牛肉が100グラム387円から403円に、豚肉が248円から254円に、鶏肉が125円から132円に、鶏卵(1パック10個入り)が185円から193円に上昇した(農林水産省6月2日)。輸入原材料の高騰、燃料費高騰による運賃高騰、光熱費高騰、配合飼料価格の高騰から肉類値上げ、乳製品値上げ、鶏卵値上げと次々に価格が膨らんでいく。価格転嫁が連鎖反応≠起こしている。

 去年から今年にかけて、原材料の高騰を理由に食品加工業をはじめ、あらゆる企業が相次いで値上げを表明した(表参照)。まさに値上げのオンパレードだ。

 連日の値上げ報道でうんざりしているこの頃だが、何点か気づく箇所がある。

 一つは、値上げに対する批判があまりないこと。マスコミがこぞって地球温暖化やCO2 排出規制問題、原油価格高騰、世界的な穀物価格の高騰を取り上げ、さらに消費者の関心が高い身近な食料品や生活必需品の値上げがあるたびに、繰り返し報道することによって、怒りは起こるものの、値上げは仕方がないという社会的な雰囲気に陥っているのではないか。このことは逆に、便乗値上げを覆い隠すことになる。いまだに便乗値上げに対する痛烈な批判は起こっていない。昨今の家電業界における熾烈な価格競争を鑑みると、果たして大手企業の価格転嫁が正当なものであるかどうか疑わしい。

 もう一つは、大手企業は堂々と値上げを表明しているのに対し、価格転嫁もできず、大手企業や同業者との価格競争の波にのまれて没落していく中小零細企業の存在である。

 帝国データバンクの07年度(07.4〜08.3)全国企業倒産集計によると負債額1千万円以上の倒産件数は1万3333件で前年度比18.4%増という。そのうち負債総額1億円未満の中小零細企業が6798件(前年度20.6%増)で全体の60%を占めている。

 業種別では資材価格の高騰のほかに「改正建築基準法」の影響による建設業と原材料高や個人消費の低迷による小売業が目立つという。中小零細企業は大手企業のコスト削減の影響をまともに受けており、さらに原材料高騰が経営を圧迫している。今後とも中小零細企業にとっては厳しい状況が続きそうである。(金在日、朝鮮大学校経営学部教授)

[朝鮮新報 2008.6.9]