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問われる国家責任 返還、和解、そして平和へ

 2004年12月、鹿児島で開かれた「韓日首脳会談」の席上、盧武鉉大統領(当時)が小泉首相(当時)に、朝鮮半島出身者の遺骨の返還について協力を要請。その後、今日まで両者で遺骨返還のための調査と協議が続けられた結果、不十分ながらも今年1月22日、東京・祐天寺において旧軍人・軍属犠牲者の遺骨「返還」が実施された。

 しかし、企業によって強制連行されて犠牲になった遺骨については、今も調査段階にとどまり、返還の見通しどころか、返還協議すら行われていない。

 強制連行、強制労働の加害者である日本国政府と使役した該当企業の責任ある説明と謝罪を遺族たちは求めている。「北海道フォーラム」は日本政府と後継企業に誠意ある対応を申し入れた。それを受け、新日本製鐵は法要への供花と弔電を届けた。北海道炭鉱汽船は「法的責任は無い」との態度を表明。日本政府からの謝罪などはなかった。

 犠牲者は日本による侵略と植民地支配、無謀な戦争の結果、異国で命を落とした。その犠牲者の遺骨を遺族に返還する作業は当然、政府と関連企業の責任において行われるべきだ。いま続けられている政府間の遺骨協議が進展し、彼らの言う「民間徴用者」の遺骨返還についても、実現する日の近いことを期待する。

市民の手で返還

 室蘭市では市民が中心となって「強制連行犠牲者の遺骨返還を実現する室蘭市民の会」が結成され、学習会および街頭募金も行われた。2月17日には130人の参加者の下、光昭寺を会場に遺骨返還の追悼法要が営まれた。

 赤平市では「趙龍文さんの遺骨を返還する赤平市民の会」が作られ、募金が実施された。2月16日には宝性寺で80人が参加し追悼法要が営まれた。赤平高校生や在日朝鮮人の子弟の高校生も参加した。北海道のみならず全国から支援金が届けられた。道内の仏教寺院や市民団体、多くの方々も支援金を送ってくださった。

 「恨」を「恨」のままにするのではなく、克服しなければいけない。植民地支配の犠牲者に対する第1の責任は国家にあるが、国家間のみの構図はしばしば極端なナショナリズムに変質し、遺族の意思からかけ離れた「解決」に至る危険がある。今回の遺骨返還の実現は、市民らの手による真相調査活動の絶え間ない努力によって今日まで運動が展開されてきたことの貴重な結実だ。人から人への和解の意思と平和への願いが導いたのだ。

 残念ながら市民団体の力量には現実的に限界があり、すべての遺骨を届けることはできないかもしれない。だが、真の過去清算、「恨」の克服のために、市民らによる恩讐を超えた国際的連帯と市民レベルの遺骨返還を続けていきたい。

 この試みはささやかなものであるかもしれない。だが、「いつまでも過去にこだわるべきではない」といった風潮がしばしばなされるなか、掛け違えられたボタンをそのままにしておくことはできない。

[朝鮮新報 2008.3.14]