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社協公開セミナー「崩壊に向かうドル支配」

経済不安を招いた米「金融帝国主義」

 在日本朝鮮社会科学者協会が主催する公開セミナー「崩壊に向かうドル支配〜『サブプライム危機』と世界同時不況の可能性〜」が 2月28日、朝鮮出版会館(東京都文京区)で行われた。セミナーには社協中央の金和孝会長をはじめとした会員たちと研究者、活動家らが参加した。

 米国発の「サブプライムローン問題」は世界的規模で株式相場の下落を招き、経済恐慌に対する不安を広げている。朝鮮中央通信はその根本原因が米国の無謀な戦争政策、「反テロ」戦略にあると批判した。そうしたなか、社協傘下の研究グループである朝・日問題懇談会の提案で今回のセミナーが企画された。

 セミナーでは、朝鮮大学校政治経済学部の呉民学助教授と埼玉大学の鎌倉孝夫名誉教授が報告を行った。

 「『サブプライム危機』の構造と『ドル危機』の表面化」というテーマで報告した呉助教授は「サブプライムローン問題」の所在と経済的背景について解説。「サブプライム危機」は不動産市場で始まった危機が証券金融市場での危機、流動性危機(世界同時不況)、ドル危機へと拡散する構造を持つと述べた。

 呉助教授によると、約1兆5000億ドル(約168兆円、米GDPの10%以上)の債務担保証券の評価損があり、そのうち46%がヘッジファンドが発行するものだという(日本は約6000億円)。この評価損が清算され金融機関に影響が広がったとき、世界同時不況がより深刻な問題として提起されるとしながら、これを政府がどのように防ぐかが注目されると警鐘を鳴らした。

 そして、米国の学会でも見解が分かれるが、金融市場と実体経済、世界的な金融体系と米国の金融体系など、どこに問題があり欠陷があるのかを論議する必要があると問題提起した。

 「崩壊に向かうドル支配−サブプライムローン問題を通じて−」というテーマで報告した鎌倉名誉教授は、低所得者を含めてローンを返すことができなくなる恐れが大きい人々にマイホームを持つことができるという夢を抱かせて貸し付けを拡大していったことが問題で、ローンを証券化し世界に拡散する資本主義経済の「擬制」的側面、ヘッジファンドやデリバティブに代表される証券投機などにも問題の根源があると指摘した。

 また、「サブプライムローン問題」に対する金融機関と政府、中央銀行の対応策が結果的に資金を滞留させ、現実的には低所得者や貧困者たちが住まいを失っているように、その矛盾が拡がっていると批判した。そしてドル離れが進み過剰ドルが増幅しドル環流策を失うと、ドルの流れが逆流しドルが暴落するという危機に向かいつつあると指摘した。鎌倉教授は数十年間、世界を支配してきた米国の「金融帝国主義」が崩壊するか継続されるのか、世界が注目していると述べた。(鎬)

【金融危機の発生と伝播】

@不良債権の計上→実質損失の発生→資産圧縮→信用収縮

A下落関連証券の売却→実質損失の発生→資産圧縮→信用収縮

B投資実需減少→暴落懸念増加→資本逃避→株・債権価格暴落→金融危機

サブプライム危機→金融危機→流動性危機→通貨危機

※作成=呉民学助教授

[朝鮮新報 2008.3.7]