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同胞による同胞の介護 ホームヘルパー2級への道 −12−

実習−介護老人保健施設

利用者本位であること

 介護老人保健施設での実習に臨んだ。ここが最後の実習地となる。

 認知症の方が多数入所する同所で学んだことは「何をするにも工夫を」、そして「利用者本位であること」だ。

 たとえば、「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼ぶより名前で呼ぶように心がけることが大事だ。個人を尊重するという意味では当然のことだが、ここでの工夫とは、名字で呼ぶ場合と名前で呼ぶ場合とを、その人によって使い分けることである。

 歩んできた人生はそれぞれに違う。慣れ親しんだ呼び名で話しかけるだけで、返ってくる反応が変わると言うわけだ。

 呼びかけ方を意識しつつ、食事介助を行った。スプーンを使って食事を口に運ぶ。

 「これは、にんじんです。これはお肉です。次はなににしましょうか」

 返ってくる反応は、正直なところ、ほとんどない。しかし、担当の介護士によれば「目で、心で通じることが大事。また、通じていると思うことが大事」だと言う。そういわれれば、心なしかほうれん草を口に運ぶときの反応がかすかに違うように感じられる。積極的にほうれん草をスプーンに取った。きっと好物だとこのときは思ったのだが、いま思えば苦手な食べ物だったのかもしれない。これは「厳しさ」や「やさしさ」とは違う、ただの「おしつけ」ではなかったのかと後悔している。

 午後はレクリエーションの時間だ。

 将棋、ぬり絵、旗揚げ、体操をして過ごした。

 将棋の勝負を挑まれ、真剣に対局した。多少の心得はあるつもりでいたうえに、おぼつかない指先を見ておごりがあったのかもしれない。「なかなかやるな」と言われたのは序盤までで、終わってみれば飛車角を落とされての大敗だった。「まいりました」に歓声が上がり驚いた。

 相手は人生の大先輩。どんな状況、どんな状態であろうと習うべきことは山ほどあることを痛感した。同時に、歓声に驚くなど、周りが見えていなかったことに他なく、現場で必要な注意力に欠けていたと言える。

 「人生のパートナー」への道は険しくも楽しい。無事、すべての実習が終わった。

 (次回で最終回。16人の同胞ヘルパーが誕生。林瑛純理事長の目に涙)

(鄭尚丘記者)

ワンポイントレッスン 実習記録から

 こちらの話をよく聞き、利用者に対する接し方もよい印象を受けた。こちらから話しかけ

るといろいろと疑問を投げかけてくれたが、自分からというのはあまりなかったので、もう
少し積極的になれると、とてもよい方向に進んでいけると思う。今後ともがんばってくださ
い。(実習施設より)

[朝鮮新報 2008.2.15]