〈祐天寺遺骨問題〉 遺骨まで差別する日本政府 |
「強引な返還」に非難の声
東京都目黒区の祐天寺に安置されている朝鮮人の遺骨が1月22日、初めて遺族を迎えた上で返還された。しかし、取材を厳しく制限し民間の支援者を一切排除して敢行された「密室での追悼式」に非難の声が挙がっている。 旧日本軍によって軍人、軍属として強制連行され命を落とした朝鮮人の遺骨を返還する「韓国出身戦没者還送遺骨追悼式」は当初、メディアと一般市民を完全に排除した形で行われる予定だった。日本政府はその理由を「遺族の要望」と伝えたが、虚偽だったことが式直後に判明した。 式への参加を拒否された民間調査団体関係者は、「まったくの言行不一致。日本政府の謝罪の言葉が虚しく聞こえる」と嘆いた。 祐天寺に安置されている朝鮮人の遺骨については、厚生労働省が関わるいくつかの疑惑が存在する。日本政府はそれらの隠蔽を試み、強制連行という犯罪の、遺骨返還が遅れたことの責任から逃れようとしているのだ。 祐天寺には、旧日本軍の軍人、軍属として強制連行されアジア各地で命を落とした朝鮮人ら1135人の遺骨が安置されてきた。今回、返還された遺骨はそのうちの101人分。だが、いずれも本籍地は南。430人に上る北出身者には一切言及されなかった。遺族が判明している遺骨が存在するにもかかわらず、何ら通知もされなかったのだ。 2004年には、祐天寺に保管されていた北側出身のある犠牲者の遺骨が偽物であることが判明。厚生労働省が隠し持っていた名簿の「遺骨欄」には「無」と記載されており、許可なく靖国神社に合祀されていたことまで明らかになった。にもかかわらず、日本政府は遺族の入国を2度も拒否した。さらに06年には、南側出身者704人のうち7人の遺骨が他人のものであり、うち2人は生存していた事実も明らかになった。 数十年間に渡って引き取り手がいないと放置されてきた遺骨が、こうした多くの問題を引きずったまま周囲の懸念をよそに今回、強引に返還されたのだ。日本人に対して行われてきたDNA鑑定も行われないまま。こうした背景には、疑惑が噴出する前に遺骨返還を穏便に済ませようとした日本政府の思惑があった。 長年、遺骨調査を行ってきた日本の民間団体関係者は、遺骨返還の原則について、「なぜ遺骨となり、その時、その場所に存在しなければならなくなかったのか、その経過と責任の所在を明らかにし、謝罪、償い、再発防止を実行しなければならない」と指摘する。 2004年12月の韓日首脳会談で、盧大統領は小泉首相(当時)に、徴用者の遺骨調査を申し入れた。これに応じた日本政府は各自治体や関連企業などに遺骨の情報提供を依頼した。しかし、これはアリバイ作りのアンケート程度にすぎなかった。民間レベルでは調査が進み、多くの遺骨と遺族が判明したが、日本政府は市民の思いを無視し、遺骨返還に協力しようとしない。 北海道では市民の手で遺骨が返還されることになった。いずれも遺骨発見、遺族判明から2、3年が経過したが、日本政府が一向に協力しないため、遺族の意思を尊重した。 日本政府は自国が始めた侵略と戦争に起因する問題であるにもかかわらず、軍か民間か、北か南か、日本人か朝鮮人かといったレベルで遺骨までも差別し、外交カードとして利用している。これは過去の犯罪からの責任逃れだけでなく人権蹂躙行為でもある。つまり遺骨問題は人権問題でもある。「強引な返還」の代償は大きい。 [朝鮮新報 2008.2.8] |