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同胞による同胞の介護 ホームヘルパー2級への道 −10−

実習−通所介護事業所

必要以上の「して『あげる』」は「して『さげる』」こと

 東京都指定通所介護事業所で、利用者の送迎や歩行介助などの実習を行った。

 最初に歩行介助について手ほどきを受けながら、ホールでは利用者の状態をよく観察し、動いたらすぐに対応するなどの立ち回り方を教わった。全体を見渡せるように壁を背に立つことや、同じ目線で話すようにと強調された。

 自立支援をめざしているというここに通う利用者の特徴は、とても元気だということと、利用者の多くは同胞高齢者で、とりわけ済州島を故郷に持つ人が多かったということだ。したがって、ホールにはチェジュンマル(済州島の方言)が飛び交う。

 故郷の話に花が咲いた。「故郷はどこだい? そこはど田舎だ。トラクターしか走っておらん」と笑われたりもした。

 話が弾むにつれ、どんどんチェジュンマルは濃くなっていく。故郷を異にするせいだろうか、すべてを聞き取ることはできなかった。自分も同じように話すことができたなら、もっと喜んでもらえたのではないだろうかと思うと残念である。

 介護の現場では、「歌がうまい」「声が大きい」「囲碁が打てる」「方言が使える」とういったスキルや人となりが意外なほど役に立つ。介助者は、利用者が「自分らしく暮らす」ためのパートナーだからだ。

 送迎を行い、みんなで散歩に出かけた。

 公園までは車イスで行き、園内を介助しながらともに歩いた。

 左手を利用者の腰の位置において、杖の代わりとして握ってもらいながら、転倒、ふらつきに細心の注意を払いつつ、寄り添うように歩く。

 ひざをさすりながら歩く利用者の姿に胸が痛んだ。「もう少しがんばって歩いてみるわ」という声に、逆に励まされる思いだった。今日がんばらないと、明日はもっと歩くのが困難になるということは、本人が一番よく知っている。

 どこまで介助して、どこから本人に任せるのかの線引きは難しい。しかし、介助者がなんでも「してあげる」ことは自立支援につながらないばかりか、必要以上の「して『あげる』」は「して『さげる』」ことと理解しなければならない。ADL(日常生活動作能力)を下げることを意味する。

 (次回は、在宅サービス提供現場での実習。部屋の掃除を手伝ったお礼はコーヒーと「競馬必勝法?」)

(鄭尚丘記者)

ワンポイントレッスン 実習記録から

 利用者の方の状態における日々の変化をしっかり把握して介助することが必要です。何気ない会話や食事摂取量、歩行状態などから介助者が(変化に)気付いてあげることが求められます。そのためにもいろいろな会話ができるようになってください。(実習施設より)

[朝鮮新報 2008.2.1]