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静岡大で在日同胞2世が歴史と現状など講義

草の根の朝・日交流

 静岡大学の森正孝講師(平和学)は、2002年から中日戦争や朝・日問題に関する講義を行ってきた。当初は一人で講義を行っていたが、03年からは御殿場に在住する李憲一さん(53)を客員教授に招き、朝・日問題、とくに在日の歴史と現在について語ってもらっている。18日、5回目の講義が行われた。学生たちの反応はとてもよく、「日本の歴史について深く考えさせられる」と率直な感想が寄せられている。

自身の経験に基づき

講義には毎年多くの学生が出席している

 講義は毎年、3年生を対象に行われている。そのうち朝・日問題については3時間(計270分)行われており、1時間目は李さん、2時間目は学生たちからの質問に答えるディスカッション形式で、3時間目に森講師がまとめるという形で行われている。

 講義は選択だが、毎年100人以上の学生が参加しているそうで、今年もすでに約130人が講義に出席している。

 李さんは朝鮮半島分断の歴史や、在日朝鮮人の歴史的経緯と現状など、初歩的な知識から日本の侵略史と強制連行、在日朝鮮人の権利獲得のためのたたかいの歴史などを平易に、自分の経験に基づいて学生たちに語りかける。

 18日、静岡大学工学部・情報学部キャンパス(浜松市)で行われた2時間目の講義では、「なぜ朝鮮に帰らず日本に残ったのか。なぜ日本に残らざるをえなかったのか」「在日朝鮮人は現在の日本をどう思っているのか。好きな点、嫌いな点は何か」「今と昔では、在日朝鮮人の生活はどう変化したのか。経済的な面や処遇などについて教えてほしい」など学生たちから出された質問をもとにディスカッションが行われていた。なかには、「台湾は日本に占領されてインフラ整備され豊かになったらしいが、朝鮮では被害しかなかったのか」といった質問もあった。

 李さんはこれに対し、「足を踏んだ人間はすぐに忘れてしまうが、踏まれた人間はいつまでもその痛みを忘れない。朝鮮にも日本によって敷かれた鉄道はあるが、それはあくまで日本が大陸を侵略するなど、自国の利益のために敷いたもので、決して朝鮮のためのものではなかった」と説明した。

 また、在日朝鮮人への差別問題についても「就職差別や就学差別など、いまだに厳然と残っている」と具体的な例をあげながら学生たちに語りかけた。

「感想文見るのが楽しみ」

 森正孝講師は、「李さんの講義は、学生たちに多くのインパクトを与えている。私が講義をする時とは明らかに学生の注目度が違う」と笑いながら、「大阪や東京、川崎などと違い、静岡では在日朝鮮人と接する機会がほとんどない。日本人と在日朝鮮人がどのように友好的な関係を築いていくのかを、とくに若い世代にどのように伝えていくのかが大切だ」と語った。

 また、「李さんの講義は一般論ではなく、自身の体験を基にした『在日の歴史と現在』なので、学生たちにも大きな影響を与えている」と話す。

 実際、学生たちの感想には肯定的なものが多く、日本のメディアの影響を受けているものはごく一部しかなかった。

 李さんは、「朝鮮半島のことや在日朝鮮人に関心のない、いわゆる普通の日本の青年たちに話しかけられる機会を設けてもらい感謝している。私の話を聞いたほとんどの学生は、最初はびっくりするが、その後は素直に受け止めてくれる」と語る。

 また、「初めての講義の前、森先生が『寝る子やヘッドホンをつけたままの子もいるが、気にしないで』と言っていたが、そんな子は一人もいなかった。すべての学生の目が集中していることに最初はどぎまぎしたが、今は自分の話を一生懸命聞いてくれる学生たちがいることをうれしく思う」とほほえむ。

 李さんは講義を終え、学生たちの感想文に目を通すのが、目下一番の楽しみだという。

 森正孝講師と李憲一さんは、ほかの地域でもこうした活動を通じて、草の根レベルでの朝・日交流がいっそう進んでほしいと口をそろえた。(李松鶴記者)

[朝鮮新報 2008.1.21]