top_rogo.gif (16396 bytes)

「学生芸術コンクール」

 先日、在日朝鮮学生中央芸術コンクールが行われた。私は声楽部門の審査委員を努めた。

 生徒たちが真剣な分、こちらも真剣に、公平に審査しなければならない。生徒たちは審査委員のちょっとした表情や仕草も逃さず見ているので、なるべくポーカーフェイスで冷静を装っているのだが、小さな初級部生たちが目を輝かせて一生懸命歌っている姿を見ると目頭が熱くなり涙が出そうになるのを必死で我慢したり、中高生が上手に歌えたときは審査委員だということを忘れて思わず拍手しそうになったりと、審査委員は審査委員なりに大変なのだ。

 できることならみんなに金賞をあげたいとも思うが、そこはコンクールなので順位はきちんとつけなければいけない。そうすることによって生徒たちも、今自分たちがどのくらいの水準で何が課題なのかということがわかり、次へのステップへとつながっていくのだ。

 それにしても毎回審査をするたび思うのだが、子どもたちには教えられることが多い。生徒たちの真剣な眼差しや歌にかける情熱は、日頃歌を仕事としている私にとって、最近忘れがちになっていた「初心」を思い出させてくれる。

 そして子どもたちの無限に広がる可能性を生かすのに、私たち大人の責任も大きいということをあらためて感じた。

 私は生徒たちにとって芸術的情緒や技術面ではもちろんのこと、在日としての誇りや民族心を与えていけるような舞台をこれからも作っていかなければ、と思うのであった。(蔡慶愛、金剛山歌劇団・声楽家)

[朝鮮新報 2007.11.9]