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合唱コンサート−結びついた「原爆」と「朝鮮人」

 先日東京で開かれた、アジアの平和と共生を願う合唱コンサート「隣人と友に〜隣人と共に〜」は、心にずしりとのしかかる骨太の舞台だった。

 作曲家の林光、池辺晋一郎、金学権の各氏らがそれぞれ日本の植民地支配、朝鮮人強制労働、朝鮮人被爆者をテーマに作曲。自作曲のタクトを振った。観客たちは、「歌を通してはじめて知った事実」に驚き、「始終苦しい思いでいっぱいだった」などと感想を残したが、その思いは出演者たちも同じようだった。

 楽屋で出演間際まで金さんと熱心に語りあっていたバリトンの小林昭裕さん(33)は、「今回、金先生の『スニのための鎮魂歌』を通じて広島で原爆の犠牲になった朝鮮人がいたことをはじめて知った。強制連行の歴史は学んで知っていたけれど、それと原爆が結びつくことはなかった。池辺先生の『海の墓標』では、強制労働の末落盤事故の犠牲となり、今なお海の底に放置されている犠牲者の悲劇を知った。知らないということは恐ろしいことだ。重いテーマの作品を、戦争を知らない僕がどのように表現したらよいのかとても悩んだ」と話した。

 また、フルート奏者の岩佐和弘さん(45)は、「僕も曲を聴いてはじめて知った歴史的事実にショックを感じた。ヨーロッパにはナチスによるユダヤ人大虐殺などを扱った作品が多いが、アジア、こと日本を取り上げた作品にこれまで触れることはなかった。林先生の『空と風と星と詩』は、簡潔な曲の中にメッセージが込められていて演奏のしがいがあった。このような曲がもっといろんな所で紹介されることを望む」と語った。

 音楽で政治を直接動かすことは不可能かもしれない。しかし、これらの感想から、人々のゆるやかな「心の動き」を感じ取れたことが何よりの励みとなった。(潤)

[朝鮮新報 2007.11.9]