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「朝鮮国女の墓」−墓碑に込めた日朝友好の志

 7月半ば、高知県に取材に出かけた折、幡多郡大方町の土佐くろしお鉄道土岐上川口町駅そばの「朝鮮国女の墓」を訪ねた。

 人通りもなく夏草が茂り、ウグイスやセミの声が響く山里。それでもお墓には誰が供えたのか、花と水が置かれていた。約400年間、地元の人たちの手で大切に守られてきたお墓にそっと手を合わせた。

美しい花々と水が供えられていた

 81年、朝・日友好を願って建立された墓碑には、土豪小谷与十郎が長宗我部氏に仕え、秀吉の朝鮮侵略に従軍し、帰国の折に連行してきて、この地でひっそりと暮し夭折した若い女性の事績が記されている。

 異国で果てた朝鮮女性への尊崇の気持ちが込められたその一部を紹介しよう。

 「彼の国の進んだ機織りの技術を近郷近在に広めた彼女は、美しく、優しく、土地の人に愛され、慕われたと言い伝えられている。…いまこの朝鮮国女を世に顕わさんとするわれわれの志は、この悲劇の一女性の霊を慰めると共に、それを通して日本と朝鮮両民族の友好と連帯を誓うところにある」

 同行してくれた黄英信・総連高知県本部委員長によれば、墓碑を建てたのは、故関田英里・高知大学学長を会長とする「朝鮮国女の墓を守る会」のメンバーたち。その由来を学術的にも調査し、悲運の女性を偲ぶとともに、新たな友好親善の思いを碑文に込めたという。

 建立以来毎年墓前祭が行われてきたが、現在では、大方町教育委員会がその管理を引き継いでいる。ときには高校生たちが墓の清掃を手伝う姿も見かけられるという。

 高知で聞いた心温まる秘話。歴史の中に名前すら刻まれなかったこの女性も、泉下で和やかな眠りにつくことであろう。(粉)

[朝鮮新報 2007.8.24]