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ダブルトーク 通じない奇弁、愚弄

 今から11年前、吉見義明・中央大教授にロングインタビューを行ったことがある(全文は「日本と朝鮮を考える―明日へのメッセージ」所収・本社刊)。国連人権委で、「慰安婦」制度は、「日本軍奴隷制」だとする「クマラスワミ報告」が決議された直後のことだ。

 92年1月、同教授によって、日本軍が「軍慰安所」を設置した資料を発掘したことが、新聞で公表されると、翌日、加藤紘一官房長官(当時)が日本軍の関与を認め、翌日には、謝罪談話の発表を行った。ところが、この談話では、強制の事実を認めなかったため、内外から批判が続出。結局、93年8月、河野官房長官談話で、強制の事実も認めた。しかし、この河野談話の問題点についても同教授は、「政府や軍は『要請しただけであり、慰安婦の徴集、軍慰安所制度の運用の主体は業者である』かのように言っていることです。『従軍慰安婦』制度の創設、運用の主体が日本国家であったことや国際法違反を認めないままに、『お詫びと反省』を口にしても、被害者の心に響くはずがないでしょう」と当時から鋭く指摘していた。

 17日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見した同教授は、「今、この問題の焦点はどこにあるのか」と切り出して、「安倍首相が、河野談話の継承を言いながら、軍の関与を否認する下村官房副長官を譴責していない」と指摘、安倍首相のダブルトークを厳しく指弾した。

 日本政府が置き去りにしてきた戦争責任問題を追及する声は、いま、米国はじめ国際社会で、燎原の火のように燃え広がっている。女性への暴力を許さないという国際世論もかつてないほどに高まっている。奇弁、愚弄、言い逃れは通じないよ、安倍さん。(粉)

[朝鮮新報 2007.4.21]