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春・夏・秋・冬

 安倍首相が政権担当に当たって自身の名前で出版した「美しい国へ」とは、ナチスドイツのホロコースト(ユダヤ人虐殺)を凌ぐ日本の血塗られた過去の罪悪を覆い隠し、それらを葬り去って歴史にない歴史をねつ造、創造することであったのではないか。旧日本軍の「従軍慰安婦」(日本軍性奴隷)問題に対する一連の否定発言などからは、そうした底意がありありと汲み取れる

▼歴史事実のわい曲、ねつ造は、一度手を付け始めるとその範囲は国外、国内に関わらず際限なく広がっていくものだ。自らの都合の良いように作り上げるのだから、終わりというものがない

▼そのことを示すかのように、文部科学省は2008年度から使用される高校歴史教科書検定で、沖縄戦での「住民集団自決」への日本軍関与記述を削除、修正させた。「軍命の証拠がないので強制とは言い切れない」というのが理由だ

▼沖縄戦では強制連行、徴用された朝鮮人が日本軍将校によって惨殺されるなど犠牲になっており、慶良間諸島での軍強制による「集団自決」についての住民の証言もつとに知られている。また米国の公文書には、米軍が沖縄上陸後に行った住民の聞き取り調査の結果、「日本軍から自決するよう指導されていた」との調査報告もある(沖縄タイムス1日付社説)

▼不法に植民地支配した朝鮮半島、そして唯一、日本列島で戦場にした沖縄。いずれも包み隠しておきたい事実なのだろうが、それを直視し乗り越えないかぎり「日本の再生」はない。それにしても、次にはどういう事実が創造されていくのか。(哲)

[朝鮮新報 2007.4.4]