若きアーティストたち(52) |
朝大 舞踊部員 李蘭淑さん 8月23〜26日にかけて福岡県北九州市の九州厚生年金会館で催された「第9回北九州&アジア全国洋舞コンクール」のC部門ヴァリアスシニアで、2位の福岡県教育委員会賞に輝いた。2年に一度開かれている同コンクールは、日本国内及びアジア地域の文化交流を深めるとともに、参加者の創作意欲を促し、舞踊芸術の発展に寄与する場として各方面から注目を浴びている。 李さんが参加したC部門は民族舞踊と児童舞踊、フラメンコ、ジャズダンスなど分野を超えたあらゆる踊りが競い合う。ここで、朝鮮舞踊の独舞「若き舞姫」を披露した。受賞者たちによるグローリアス公演では、会場から割れるような拍手が送られた。 「朝鮮大学校の学生として参加し、朝鮮舞踊を愛し守り続けているということ、とくに多彩なジャンルの中で、朝鮮舞踊のすばらしさを誇りたいというチャレンジ心があった」と参加の動機を語る。 同コンクールは、中級部時代に続いて2度目。しかし、中級部の頃とは違い、今回は1人での出場だった。「自分との闘いだった。精神的にも肉体的にも常に緊張が必要だった」。今までいろんな踊りを踊り、さまざまな舞台に立ってきたが、今回は出場を前にして作品に込められた思いをうまく表現できず、技術不足を思い知った。「初めて葛藤し、挫折感を味わった」。
そんな中、母校の広島朝鮮初中高級学校を、自主練習と中級部生徒の指導に訪れた。「生徒たちとのふれあいの中で新たな発見をし、初心に戻れた」。 また、多くの人たちの期待に応えるために賞を取る考えだけが先立ち、大きなプレッシャーを感じていたが、指導の先生の「賞や順位も重要だけど、生まれ育ち、舞踊を習う過程で支えてくれた全ての人たちの愛情を踊りに込め、表現することが大切」という言葉に打たれ、気持ちをあらためることができた。 本舞台では、「全ての人たちに朝鮮舞踊をアピールして、自分にしか表現できない『若き舞姫』=自分自身を踊ってみよう」と全身全霊で舞った。踊りを終えて「今までにないほどの爽快感と満足感であふれた」。 その結果としての2位の受賞は、「予想外だった。最後までやり遂げて本当に良かった。そして、朝鮮舞踊には他者の心を惹きつける魅力があるとあらためて実感した」と感想を述べた。 頭からつま先まで、全身を使い表現をする。「舞踊にはその人自身が映し出される」。考えも性格も、踊り一つを見ればわかると言う。 美しい舞と衣装で、観る人を魅了させる朝鮮舞踊。「同胞をはじめ観覧者が声援を寄せ喜んでくれる」。そんな反応が励みになり、もっと舞台に立ちたいという想いを強くする。 作品に込められている思いを自分の中で噛み砕き、それをアウトプットする。観る側にどこまで思いが伝わるか、全て伝えられるか。動作一つ一つに心を込め、誠心誠意で踊る。 「朝鮮人としてのプライド」と「舞踊を愛する気持ちに偽りがないこと」が大切であり、常にそう心がけている。「ありのままの自分を表現している。舞踊を愛する気持ちは誰にも負けない自信がある」と笑い、輝く瞳からは、舞踊に対する熱い思いが伝わってくる。 学業に励み、学部では役員も務めながら、大好きな舞踊に打ち込んでいる。「自分自身を磨き、誠実に舞踊と向き合い、支えてくれる全ての人たちへ感謝の気持ちを忘れずに、精一杯舞う姿を通じて、民族教育と舞踊の素晴らしさを伝えていきたい」。(姜裕香記者) ※1987年生まれ。広島朝鮮初中高級学校卒業、現在朝鮮大学校教育学部3年制教育学科在籍。05年平壌音楽舞踊大学(当時)専門部卒業。「在日朝鮮学生中央芸術コンクール」で金賞を多数受賞。02年「第6回北九州&アジア全国洋舞コンクール」ヴァリアスジュニア第2位(双舞)。06年「第8回なかの国際ダンスコンペティション」シニア3位。 [朝鮮新報 2007.11.5] |