いつからか 葦は心の中で 静かに泣いていた そんなある晩 葦は 全身が震えていることに気づいた
風でも月の光でもない 葦は体を震わせているものが 自分のすすり泣く声だということに まったく気づいていなかった ―生きるとは ひとりこんなふうに 静かに泣くことだということを 彼は知らなかった
「詩が私に向かってきた」金龍澤編 (2001年 マウムサンチェク)
シン・ギョンリム
1936年忠清北道忠州生まれ。東国大学英文科卒。現在同大学教授。55年に「文学芸術」に「葦」「墓碑」が推薦され登壇。分断時代・民衆文学の旗手の一人。92年に民族文学作家会議会長。萬海文学賞、韓国文学作家賞、怡山文学賞などを受賞。「農舞」をはじめ多くの詩集、評論集がある。(選訳、康明淑)
[朝鮮新報 2007.10.22]