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人を探しています −洪允淑−

 人を探しています
 年齢ははたち
 背は中くらい
 まだ生まれたときのままの
 うす桃色の膝小僧と鹿の瞳
 ふくらんだ胸に抱えたつつじ色の愛
 お日様でいっぱいの籠を頭に載せて
 ある日何も言わずに家を出て行きました
 いつしか三十年、はるか遠く霧の中
 どなたかご存知ありませんか
 こんな世間知らずを
 もしかしたら今頃は空っぽの籠に
 白髪と悔恨を載せて
 見知らぬ町のうす暗い市場を彷徨い
 疲れ果てて眠り込んでしまったのでは
 ご連絡お待ちいたします
 宛先は
 私書箱 追憶局 迷子保護所
 懸賞金は
 残りの生涯すべてを捧げます

 「韓国代表詩人一〇一人選集−洪允淑」

 (2004年刊 文学思想社)

 ホン・ユンスク

 1925年平安北道・定州生まれ。京城女子師範学校を出て、ソウル大学師範学部に学ぶが、朝鮮戦争のため中退。1947年、詩壇デビュー。教師、新聞記者などの職を経て、今日まで詩ひとすじで来た女性詩人。「人を探しています」というフレーズに引き寄せられた。8月はなぜか人恋しくなる。他界した両親、海を隔てた祖国の大切な人々、尊敬する詩人、そして幼い日の自分を想う。(選訳、康明淑)

[朝鮮新報 2007.8.6]