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朝鮮の論調 4月

 第6回6者会談が「バンコ・デルタ・アジア」(BDA)問題をめぐって休会したままだった4月。朝米間の動きとしては、ビル・リチャードソン米ニューメキシコ州知事一行の訪朝があった(8〜11日)。一方、朝鮮国内では金日成主席生誕95周年(15日)と朝鮮人民軍創建75周年(25日)を記念し、「アリラン」公演や軍事パレードが盛大に行われた。また、月末には安倍首相が初訪米(26〜27日)。それに合わせるかのように、日本では在日本朝鮮留学生同盟中央本部と、すでに解散した朝鮮問題研究所の元事務所に対する不当な強制捜索(25日)が警察当局によって大々的に行われた。

−対米 対話と戦争は両立しない

 1日に「平澤米軍基地移転分担金合意を断罪」という祖国戦線代弁人の談話を配信。以降、21回にわたって、大半が米軍の動向を注視する内容に論調が集中した。

 かいつまんでみると、▼「朝鮮半島情勢を悪化させるための計画的な火遊び」(2日、労働新聞)▼「対話雰囲気を壊す背信行為」(4日、労働新聞)▼「軍備競争を激化させる挑発行為」(9日、労働新聞)▼「北侵戦争演習に狂奔」(21日)−などの内容が配信された。

 論調の根幹に一貫しているのは、「対話と戦争は絶対に両立しない」というものだ。また、「…われわれは戦争挑発策動を絶対に傍観視せず、不意の事態に対処するための万端の準備を整えている」とも繰り返し主張している。

 6者会談関連に言及したのは、「2.13合意を履行するわれわれの意志に変わりはなく、(BDA資金の)制裁解除が現実に証明されれば、われわれも行動するだろう」(13日、朝鮮外務省代弁人)、「凍結解除確認即時実務代表団招請」(20日、原子力総局長が国際原子力機関総局長にあてた手紙)の2回だった。

 また、朝鮮人民軍創建節の前日には「国防力は国と民族の自主権であり生存権」という内容を配信。「帝国主義は死ぬまで侵略と略奪の本性を棄てない。侵略者たちに譲歩すれば国と民族の自主権、生存権が無惨に踏みにじられるだろう」と主張した。

−対日 6者会談参加資格を問う

 いま焦眉となっている問題について、まんべんなく論調が配信された。

 2日 「日帝の悪名高い『治安維持法』」(朝鮮中央通信)
 3日 「下村の『慰安婦』犯罪わい曲」(労働新聞)
 3日 「教科書検定結果は厳然たる歴史的事実のわい曲」(外務省代弁人談話)
 5日 「在日朝鮮人弾圧、人権蹂躙は中止されなければならない」(国連駐在朝鮮代表)
 11日 「地域安保を威嚇する侵略勢力−防衛省特殊部隊」(民主朝鮮)
 13日 「右翼保守界の代表的売文紙らしい妄動−産経新聞『慰安婦』報道」(民主朝鮮)
 20日 「日本の制裁措置延長」(民主朝鮮)
 30日 「軍国主義勢力の無謀な軍事行動『PAC−3』配備」(労働新聞)−などが配信された。

 6者会談関連は、「会談を台無しにする日本の態度を論じる」(7日)、「6者会談の進展を妨害する日本」(19日、ともに労働新聞)の2回が配信された。

 また、日本当局によって行われた総連関連施設への強制捜索(25日)に対する言及はなかった。

−対南 鎮静? 「ハンナラ党叩き」

 今年になってから、執拗とも言えるほど続いていた「ハンナラ党叩き」が激減した。

 前月と対比してみてもその差は歴然。

 30回だった対南論調は9回しか配信されず、そのうち、ハンナラ党関連は12回から2回に減った。

 なぜ減ったのか。

 大統領選を絡めた意図的な背景も考えられるが、邪推は禁物。真意のほどはもう少し推移を見守る必要があろう。

 そのほかは、「親北サイト遮断−人権を切りつけるファッショ暴挙」(3日、労働新聞)、「開城化粧品原産地問題妄言は主権侵害」(22日、祖平統代弁人)−などが配信された。

 毎年4月、朝鮮では民族最大の慶事−金日成主席の生誕節を迎える。論調も太陽節を祝う内容に集約され、対外的なものは全体的に数が少ない。

 朝鮮との対話路線に踏み切ったかのようなブッシュ政権は、他方では一連の軍事挑発行動を止めないでいる。対話か戦争か。米国に「真の決断」を迫る内容が多数を占めていた。

 日本国内を見渡せば、依然、総連と在日朝鮮人に対する政治弾圧が続いている。発足当初から「拉致問題」を「錦の御旗」として掲げてきた安倍政権。今後も振り続けるだろう。

 そのような情勢下で総連は21全大会を迎えた。新たに示された里程標にそって、さらなる一致団結のもと、運動を展開していかねばならない。と同時に、いかなる不測の事態にも対応できるよう、警戒を高めていく必要がある。

 南では、そろそろ12月に控えた大統領選に向けて動きが活発になり始める頃。有力立候補者が訪北するなど、北南関係も例年になく慌ただしい様相を呈するかもしれない。

 6者会談は依然、膠着しているが、BDA問題という「堰」が切れれば、今夏に向けて情勢は一気に推移するだろう。6月中の打開はあるのだろうか。(まとめ=韓昌健記者)

[朝鮮新報 2007.5.24]