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安倍首相の詭弁を質す

 米紙ワシントン・ポストが3月24日付社説で「拉致問題で国際的な支援を求めるなら、日本の犯した罪の責任を認めるべきだ」と批判したことについて安倍首相は3月26日夜、「まったく別の問題だ。拉致問題は現在進行形の人権侵害。従軍慰安婦の問題はそれが続いているというわけではないでしょう」と反論した(朝日新聞3月27日朝刊)。

 翌日の朝日新聞社説は「問われているのは、過去の日本が女性たちの尊厳と人権を深く傷つけたという歴史の事実に、日本を代表する立場の首相がいま、どれだけ真剣に向き合えるか、という問題にほかならない。『いま』の話なのだ」と書いた。

 安倍首相は「従軍慰安婦」問題が過去の問題で、拉致問題だけが現在進行形の人権侵害問題であると云いたいようだが、それは詭弁である。

 「従軍慰安婦」の問題は「それが続いているのではない」といい、拉致問題は「現在進行形」というが、朝鮮による拉致が「いまも続けられている」と云いたいのであろうか?

 拉致問題は朝鮮がその犯罪を認め、謝罪し、生存の被害者5人とその家族全員を帰国させた。横田めぐみさんの遺骨をめぐる問題や行方不明者の調査すべき問題が残っている。その解決のための交渉が「現在進行形」であるというべきで、拉致が「いまも続けられ」「現在進行形」ではない。

 「従軍慰安婦」問題は1991年、南朝鮮の金学順さんが「慰安婦」であったと名乗りをあげたことから旧日本軍の犯罪がさらに明らかになった。南朝鮮政府が日本政府に実態調査を求めたため、日本政府はやむをえず、1993年「河野洋平官房長官談話」を出して「軍の関与」を認め、「おわびと反省」をした。しかし、国家犯罪として国の責任を認めたのではなかった。そのため日本政府は国民の拠金による「アジア女性基金」なるものをつくって、被害者に金を配るというやり方で国家補償を回避して責任逃れをはかった。

 安倍首相をはじめ自民党の一部政治家は、それまで歴史教科書に載せられていた「従軍慰安婦」の記述を削除させることに奔走し、「証拠」がみつからなかったから日本軍の強制はなかったとして、「河野談話」の実質的な骨抜きをはかってきた。

 米下院で、旧日本軍の「慰安婦」問題をめぐって日本政府に「謝罪」を求める決議案を提出したマイク・ホンダ議員が「旧軍の関与を認め謝罪した、いわゆる河野官房長官談話では不十分だということですか」の質問に、「それは閣議で決定されたものかと尋ねたい。日本は謝罪するに当たって非常に選択的だ。それでは誠実とは言えない。首相が発表して、国会で承認されるべきだ」と答えている。

 はっきりしていることは、日本政府が旧日本軍の犯罪を認め、犠牲者たちに謝罪と国家補償を行わないかぎり、「従軍慰安婦」問題に真の解決はないということである。したがって「従軍慰安婦」問題は「今も続いている現在進行形の人権侵害問題」である。

 性奴隷となり、悪夢のような人生をおくった被害者女性は数十万人といわれ、生存者は年々その数が減り、高齢化している。一日も早い日本政府の正式謝罪と国家補償が行われるべきである。安倍首相は被害者たちに口先だけの謝罪や詭弁を弄して、その責任から逃れようとせず、「従軍慰安婦」問題解決に誠実にとりくむべきではないか。(鄭晋和、朝鮮大学校元教授)

[朝鮮新報 2007.4.4]