朝鮮の論調 2月 |
昨年12月以来、約1カ月半ぶりに第5回6者会談第3ラウンド(2月8〜13日、北京)が開催された。会談では、朝鮮半島非核化にむけて初期段階措置(各作業部会設置や100万トン相当のエネルギー支援など)を取ることで合意がなされた。会談終了後も、「行動対行動」の原則に沿って合意事項が着実に履行される傾向にある。また、日本当局による総連政治弾圧を非難した朝鮮外務省代弁人声明が発表(2月19日)されるなど、6者会談以外にも注目すべき動きがみられた。 −対米 依然、軍関連の動向を重視 最も多かった。先月のようにタイミングを計ったかのような動きはなく、ほぼ毎日のペースで等間隔に配信された。 内容は、依然として軍事関連が大多数を占める。 2月3〜7日までは、米国内の中学校で日本の朝鮮侵略歴史わい曲小説(筆者は日本人女性)を教材として使用している問題が立て続けに配信された。 その後、6者会談開始日の8日に「米国の核問題2重基準政策は不当」だとする論調が発表され、続く9日には「米韓行政協定発効40周年」で米軍犯罪真相究明全民族特別調査委のスポークスマン談話を発表し、合わせて米軍の南朝鮮占領政策を批判する論調も配信された。 さらに12日には米国内の好戦勢力を批判する内容が展開され、13日には「対話に逆行する危険な策動」「軍事的覇権を企てる武力増強策動」と題した長文の論調を配信した。 「手下の同盟者(日本)が振り上げる拳」と題した論調を、チェイニー米国副大統領の訪日(20日)に合わせて配信したのは、興味深い。 日本政府閣僚による相次ぐ米イラク政策批判について言及し、「(米国の)『心理的苦衷』『不機嫌さ』がよくわかる」と指摘。また、「世界の人々は、手下(日本)にまで非難を浴びねばならない米国の可憐な処遇を嘲笑している」とも評している。 何のためのチェイニー訪日だったのかが暗示されていると言ってよい。米日の動向を正確に把握している様子が窺える。 ほかには、米韓軍による北侵演習批判(15日)、08年度予算案における反朝鮮放送資金の増額批判(22日)、対話相手に軍事的威嚇を与える米国批判(24日)、米軍の北侵空中戦争演習突入に対する批判(24日)−などが配信された。 6者会談と直接的に関連する事に対していっさい言及がなかったことも注目される。 −対日 朝鮮外務省代弁人声明発表 先月に比してかなり少なかった。 1日に祐天寺偽遺骨問題を取り上げ、以後は4日に総連弾圧非難を、7日に憲法改悪論議批判および総連弾圧非難を配信した。 6者会談開催中には、9日に「6者会談を破綻させる日本」と題した内容を配信し、12日には米下院での「慰安婦」決議可決問題を流した。 注目すべき点として、朝鮮外務省代弁人声明の発表(19日)があったことを挙げねばならない。内容は、日本当局による総連への政治弾圧を厳しく糾弾するものになっている。 外務省声明は、国内メディアの論調とは次元が異なる。年に数回しか発表されない一国の政府公式見解だ。事態の深刻さを如実に物語っている。「安倍一派は、必ずやその代価を払うことになるだろう」という一文で声明は結ばれている。 ほかには、厚生労働大臣の「女性は子どもを産む機械」発言、自衛隊と他国軍の共同訓練批判−などが配信された。 −対南 引き続きハンナラ党を批判 数にさほど増減はない。内容の大半は、継続してハンナラ党批判である。 3日に「逆賊党代表の『新年記者会見』を評する」と題した論調を発表。文末は、「『大統領選挙』は、売国奴に対する峻厳な審判場に、また、彼らの墓場になるだろう」と結ばれている。5〜6日にかけては、「(ハンナラ党の前身である)『新韓国党』の11年備忘録」と題する内容を発表した。いずれも長文。相変わらずの力の入れようとなっている。 総じて、文頭から文末まで終始一貫して同党だけを個別批判するというよりは、「米国による大統領選内政干渉」「保安法撤廃」といった別の事柄と連動させながらのものが目に付いた。 ほかには、自由貿易協定反対闘争支持(8日)、南CBS「収監者集団脱出」ねつ造報道非難(9日)、米の介入許す大統領選(19日)−などが配信された。 米国に対しては、ほかの2者よりも論調の内容が多岐にわたり、定期的にメッセージを配信していたように見受けられる。 対日論調は、数こそ激減したが、その分、焦点が要点的であった。また、外務省声明発表前後のそれぞれ1週間は論調がまったく配信されなかった。このあたりに事の重大さが表れているように思える。「倭」表記の使用は継続中である。 南朝鮮に対しては、継続してハンナラ党批判を展開しているが、同党の歴史的変遷過程に言及しながらの緻密な分析批判が特徴的だった。南当局は「内政干渉」だと指摘しているが、年末の大統領選に関する言及も、日を追うごとに微増の傾向にある。 このほか気になる点としては、6者会談終了後の14日に配信された内容を挙げておきたい。会談開催の事実だけを「簡略」に流し、合意内容の詳細については、いっさい触れられていなかった。(まとめ=韓昌健記者) [朝鮮新報 2007.3.15] |