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〈危機迎えたブッシュ政権−〉 中間選挙後の政治動向

変わる政界勢力図 ネオコン外交の限界露呈

 昨年11月の中間選挙を前後して、米国内の政治状況に変化が現れている。変化は、同国の外交上の懸案に対するアプローチにもさまざまな影響を及ぼしている。中間選挙後の米国政治の動向を、外交安保分野を中心にまとめた。

レイムダック化進む

 周知のように中間選挙は与党共和党の敗北で終わった。一方で民主党が下院、州知事選挙で圧勝、上院でも多数派を占めて勝利を収めた。イラク情勢が最大の争点になり、ブッシュ大統領への信任投票の様相を呈した選挙だったが、米国民は現政権のイラク政策に対する明白な反対意志を表明した。

 選挙の結果、任期が残り2年となったブッシュ政権のレイムダック化が加速するとの見方が支配的だ。政権の失政を追及し、対イラク政策の見直しを求める声が、民主党のみならず共和党内部からも高まっている。

 1月22日に発表された米CBSテレビの世論調査の結果によると、ブッシュ政権の支持率は28%(不支持率は64%)で、大統領就任以来最低を記録した。内外のメディアは「ブッシュ時代の終わりの始まり」を強調している。年明けに2008年の大統領選挙の立候補者がほぼ出そろうなど、米政界はすでに時期大統領選挙に向けて走り出している。

破綻した「ドクトリン」

 中間選挙後に外交安保分野で起きている変化を一言で表すなら、政権の中枢を占めていた新保守主義(ネオコン)勢力の衰退と、伝統的主流派である現実主義勢力の復活だ。

 イラク戦争失敗の責任をとる形でラムズフェルド国防長官が更迭され(後任にはブッシュ元大統領時代のCIA長官だったロバート・ゲーツ氏が就任)、ボルトン国連大使も辞任するなど政権内強硬派の中心人物が相次いで表舞台から退場した。ネオコン勢力が一掃されたわけではないが、少なくとも影響力の低下は避けられないとする分析が一般的だ。

 対照的に、「国益」の追求を第一に考え、「必要とあれば『敵』とも交渉する」という現実主義的な外交を標榜する勢力の発言力が増大しつつある。超党派の「イラク研究グループ」のメンバーにも、ジェームズ・ベーカー元国務長官などブッシュ元大統領の中心人脈や、現実主義外交を主張する人々が大挙登用された。

 これら一連の変化には、独善的な理想主義のもと「レジーム・チェンジ(体制転換)」を掲げ、そのためには核先制攻撃も辞さない(2002年のブッシュドクトリン)とする、ブッシュ政権の外交政策に対する米国内の集団的危機意識が根底にあると指摘する向きもある。

 米国はイラクをはじめとして、イランや朝鮮半島の核問題、中東地域の不安定化、中南米での相次ぐ反米政権誕生など、外交安保上の難問に直面している。

 政権のレイムダック化によってイラク政策選択の幅は限定的にならざるを得ず、対朝鮮政策の見直しにも連動するだろう。

 現政権が一国主義や、「悪の枢軸(イラン、イラク、朝鮮)」とは交渉しないという硬直した政策から、外交交渉を重視する政策へシフトするのではないかとの見方が広がっている。政策が180度転換すると見るのは早計だが、以前のような独断的な強硬策の遂行には自ずと限界があることは確かだ。内外で「協調」的な立場を強調する姿は、「ブッシュドクトリン」の破綻が明らかになり、ほかになす術がないブッシュ政権の窮状を物語っている。(李相英記者)

[朝鮮新報 2007.2.19]