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水害から3カ月 復興進む 江原道伊川郡を訪ねて

「洪水よりも強い住民の力」

 【平壌発=呉陽希記者、写真・文光善記者】8月中旬に朝鮮各地を襲った集中豪雨から約3カ月が経った。国では被害発生直後から各被災地へ緊急物資を送り復興事業に着手するなどすばやい対策を講じた。現在は被災地の住民生活も基本的に安定しているという。10月末、復興が進む江原道伊川郡を訪ねた。

ダム修復に全力

洪水で破壊された堤防の復旧工事現場

 江原道は今回の集中豪雨で最も甚大な被害を受けた地方だ。中でも伊川郡は道内で被害の大きかった地域の一つ。当時、豪雨による洪水が伊川郡邑中心部から5キロメートルほど離れた新堂里4班をそっくりのみこんだ。村の風景は洪水により一変した。 新堂里4班には60棟の住宅が建っていたが、比較的高台にあった7棟だけが何とか残っただけで、それ以外の建物はすべて流されてしまった。

 現在、郡では洪水被害を克服して被災者の新生活のための準備が盛んに行われている。しかし新堂里4班では住宅建設の光景を見ることができなかった。代わりに貯水池の堤防の補修事業が急ピッチで進められていた。

 8月の洪水によって貯水池が破壊された。貯水池の水は農業用水と住民の飲料水に利用されてきた。伊川郡では被害発生直後から、農業用水の確保に住民を動員した。堤防の決壊部分を手作業で塞ぎ、砂と小石で臨時水路を作った。その後、貯水池の本格的な復興に着手した。

 「みなが一丸となって早急に復興作業を終えましょう」

洪水で破壊された堤防の復旧工事現場

 堤防の復興作業は9月中旬から始まった。人びとは「今後、豪雨が再び襲っても崩れることのないよう」しっかり作ると口をそろえる。郡では11月末の完工を予定している。

 伊川郡人民委員会のシン・ヒョンチャン委員長(52)は、「郡の復興事業は11月のうちに終わらせる」と語る。被災民が厳しい冬を前に、新しい住宅での生活を始められるようにするためだ。

 現在、郡では邑地区にアパート25棟(300世帯)と、農村地区に単層住宅(350世帯)を建設している。ほぼ完工段階に入っており、一部住民はすでに新しい住宅で生活を始めた。

 新堂里4班の住民も邑地区に建てられる新築アパートに入居することになる。

 伊川郡の復興事業は堤防補修と河川整理、住宅の基礎作り、山崩れ防止のための植樹などに力を入れている。今後洪水が起こっても被害を最小限に防ぐための対策だ。

 水害直後、復興作業に追われ稼動を停止していた郡内の工場や企業所も今は基本的に稼動している。しかし最も被害の大きかった基礎食品工場は、いまだ稼動できないでいる。

 現在、復興を急ぐ全国の被災地では建設資材が緊要だ。伊川郡も例外ではない。被災地へは国から優先的にセメントや鋼材などが提供されているが、十分ではない。

 「復興事業を行っているのは伊川郡だけではない。不足しているものがあれば、自力でできることから何とかすべきだ。それぞれが国へ援助を求めるばかりでは、復興事業全体が進まなくなる」(シン委員長)

 伊川郡では秋の刈入が終わったトラクターを建設現場で輸送用として使っている。労力は人民班単位で住民を動員して確保している。

安定と楽観

 約3カ月前、伊川郡の住民は集中豪雨による未曾有の惨禍を経験した。しかし現在は安定を取り戻している。畑で草を食べる牛やヤギの傍らで元気に遊ぶ子供たち、家庭の畑で育つ青々とした野菜、暖かい日差しの下で一休みする労働者、洗濯をする家庭主婦など、平凡な農村の風景が広がる。

 洪水で家が丸ごと流されたというリ・ボクスンさん(56)は、「もう心配はいらない。生活も安定し、精神的にも楽になった」と話す。

 シン委員長は、「洪水の被害を克服する過程で人びとの笑い声も聞こえてくるようになった。今は今後の生活を見通して楽天的に暮らしている。崩れた橋も近日中に架けなおす。新しい食堂もたくさん作って、『変貌した伊川郡』を見せることができるようになるだろう」と語った。

 シン委員長は堤防の復旧作業が行われている光景を眺め、静かに口を開いた。

 「8月のあの日、村を襲った洪水の威力は本当にすごいものだった。しかし今は、復興事業に立ち上がる人びとの力が洪水よりも強いということを実感している」

被災民の声 「困難に打ち勝ち、復旧急ぐ」

 10月29日、500枚の毛布が江原道伊川郡の被災者たちに伝達された。

 毛布を受け取ったリ・ボクスンさん(56)は、「とても感謝している」「生活に不便がないわけではないが、心配はない」と話した。

 伊川郡には8月8日から10日までに、840ミリという記録的な豪雨が降った。リさん一家5人が住んでいた家は流され、跡形もない。現在新しい住宅が建設中で、それまでは隣の家で同居生活をしている。

 シン・ヒョンチャン委員長(52)は、「総連同胞らの熱い気持ちに感謝し、私たちも困難に打ち勝って、復興事業を早く終えたいと思っている。総連同胞が必ずや試練を乗り越えることを願う」と語った。

[朝鮮新報 2007.11.7]