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〈インタビュー〉 宋日昊 朝鮮外務省朝・日会談担当大使

「過去清算で行程表明確に」

 【北京発=金志永記者】5〜6日にかけてモンゴルのウランバートルで開かれた6者会談の朝・日関係正常化作業部会で朝鮮側代表団の団長を務めた宋日昊・外務省朝・日会談担当大使に、今回の会談に対する評価と今後の朝・日協議の展望などについて聞いた。

過去清算から論議

−今回の会議に臨んだ日本側の姿勢をどのように評価するのか。

 本来、悪化するだけ悪化した現在の朝・日関係の雰囲気を考えるなら、双方が会談のテーブルにつける状況ではなかった。われわれが会議の開催に応じたことそれ自体が、日本にとって幸いだったはずだ。

 朝鮮半島を取り巻く状況には、はっきりとした変化が現れている。マカオの「バンコ・デルタ・アジア」の凍結資金問題が解決し、6者会談「2.13合意」が本格的な履行段階に入った。関係各国の対応もおおむね肯定的なものだ。このような情勢の中で、7月には6者団長会談が北京で開かれた。会談で朝・日作業部会の開催も決まった。

 今回の作業部会では朝・日国交正常化の実現において基本である日本の過去清算と、日本側が大きな関心を持っている拉致問題を含め互いの懸案問題について協議した。

 日本側はこれまで「拉致問題が先決」、すなわち拉致問題の解決なくしては国交正常化もなく、6者が合意した朝鮮に対する支援にも参加できないという強硬な態度をとってきた。日本はわれわれに対して圧力をかけると言い、朝・日両国間の問題である拉致を国際的な問題であると主張し、他国に出かけて提起したりもした。事態を複雑化し、朝鮮側と対決する道に進んだわけだ。

 過去の協議の場で日本は、平壌宣言にのっとって過去の清算問題に誠実に取り組むと言葉では話したが、実際には宣言にある「財産および請求権の放棄」を口実にODA(政府開発援助)を適用する方針を基本にこの問題を論じた。過去の清算問題をあまりにも単純に考えていたようだ。

 今回日本は、過去の清算問題も合わせて論議しようという態度に出た。過去、朝鮮人民に与えた人的、物的、精神的被害を含めた包括的な過去清算に臨む姿勢を見せた。この問題に関する協議のために初歩的な準備を行ったうえで、会談の場に姿を現したようだった。

 今回、拉致問題に対する日本側の立場も明らかになった。いまだ疑問点が残っているので朝鮮側がいま一度この問題に取り組んでほしいとのことだった。

総連弾圧を重視

−今後、具体的な行動計画についてどのように協議していくのか。双方が作業部会を「可能なかぎりひんぱんに開催していくことにした」という発表もあったが。

 協議を行うには、そのための環境と条件がそろわなければならない。また、準備も必要だ。

 われわれとしては何よりも、協議を通じて朝・日関係の中心的な問題である過去の清算を実現するためのロードマップ(行程表)が明らかにされるべきだと考えている。

 過去の清算には補償の問題とともに在日朝鮮人の地位問題、文化財の返還問題が含まれる。

 現時点でわれわれが重視するのは、在日朝鮮人の地位に関する問題だ。しかし、この問題について協議するための雰囲気はいまだ整っていない。それよりもまず解決すべきことがある。総連弾圧問題だ。

−今回の作業部会でこの問題をどのように協議したのか。

 日本は在日朝鮮人に対する待遇を改善するどころか、総連中央会館の土地と建物を強制競売しようとしている。会館の売却問題について日本側は、債権に関する問題であるため不渡りを出した多くのほかの企業と同じようにRCC(整理回収機構)が処理する問題であると主張するが、われわれはそうは思わない。

 この問題は、総連側が当初から誠意を持って合理的で妥当な解決策を提示してきたにもかかわらず、安倍政権が突然政治化したことによって起こったものだ。

 日本は「万景峰92」号の入港中止措置もとっている。「万景峰92」号は在日同胞と祖国に住む肉親たちとを結ぶ「人道の船」だ。「人道の船」の就航には、在日朝鮮人の帰国、祖国訪問をはじめ歴史的に見て日本側も赤十字が人道主義的に関与した。しかし、現在はそれが政治化されている。

 総連中央会館や「万景峰92」号の問題は、単なる技術上、実務上の問題として法律的に処理すればいいというものではない。日本政府が当然、人道主義的見地から政治的勇断を下して処理すべきだ。総連中央会館問題に関して言えば、総連側が主張している和解提案を受け入れればいいことだ。

環境作りが必要

−朝・日関係改善のための具体的な行動と関連して、日本国内には双方が並行して必要な措置を講じていこうという主張がある。

 まず、具体的な行動について協議する雰囲気作りを進めるべきだ。そのためには、まず日本が動かなければならない。

 総連弾圧は、在日同胞だけでなく全朝鮮人民の反日感情を悪化させた。今回の会議で合意した内容を行動へ移すには、まず敵対的な雰囲気が緩和されなければならない。緊要な問題を処理してから次の段階へ移るべきである。

 在日朝鮮人問題は過去清算の重要な一端を占める。われわれは過去に拉致問題で誠意を尽くし、できるかぎりのことは全てした。日本側は疑問点がまだ残っていると言っているが、われわれは解決のために努力した。そして実際に目に見える結果を出した。

 日本は、われわれがすでに実行した分だけでも行動を起こすべきだ。今回の会議でわが方は民族教育をはじめ総連と関連した問題に言及した。これらの解決が過去清算の始まりになるとも強調した。補償や経済協力だけが過去清算ではない。

−朝・日関係の実質的な改善を期待することができるのか。

 6者会談の展望については、現在のように良い方向へ向かうのではないかと考えられる。このような流れの中で、日本が従来と同じ対決路線を追求しても得るものは何もない。敵対的な雰囲気を緩和し、関係改善の方向へ向かうことが日本の利益になる。日本では平壌宣言が死文化したとの声が上がったりもするが、政府の公式立場ではないと考えている。平壌宣言を自国に有利に解釈して、拉致問題を口実に朝鮮と対決しようとする勢力が日本に存在する。彼らが死文化を云々しているのだ。

 日本にも、平壌宣言が両国関係正常化の里程標であり、必ず宣言を履行すべきだという人びとが大勢いる。

 今回の会議で双方が一致して平壌宣言について言及したのは、日本側もこの宣言を大事にしているためではないのか。現在の国際社会の全般的な流れを見ると、日本で平壌宣言を履行しようとする人々の存在感、発言権が高まっているのかもしれない。

 今後このような肯定的要素をうまく活かしていけば、朝・日両国が関係改善の軌道へ乗ることができると考えている。

国際情勢の変化

平壌宣言が発表されて5年が経ったが。

 平壌宣言が採択されたあとも、朝・日関係は引き続き悪化していった。今回、双方は早期国交正常化の意志を再確認したが、ここには重要な意味が込められている。

 日本も、6者会談の進展や朝鮮半島核問題解決のための関係国の動きを分析したことだろう。国交正常化の実現を可能にする環境が醸成されているとの判断の下に、早期国交正常化という表現が生まれたと考えられる。これまでとは様相が異なる。もちろん今後の事態の推移を引き続き注視しなければならないが、現段階ではそのように判断できる。

−今回の会議は総連と在日同胞にとっても、大きな関心事だった。

 協議に関する報道を在日同胞も注視したと思う。朝・日関係に対する朝鮮の立場は始終一貫して変わりはない。総連と在日朝鮮人の地位問題に対する立場も明白だ。

 われわれは、日本で暮らしている総連の同胞もわが国の主権下にあると常に考えている。会談でわが方が総連問題を無視して他の問題を協議していくことはありえない。

 これからも在日同胞が信念と勇気を持ち、一致団結して愛族愛国運動を力強く繰り広げていくことを願っている。

[朝鮮新報 2007.9.19]