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「北方限界線」の真相 労働新聞軍事評論員

「西海軍事衝突危機の根源」

 最近、朝鮮西海海上の緊張が高まっている。朝鮮人民軍海軍司令部は5月初めから南朝鮮軍の侵犯行為が、「新たな第3の西海海戦に、ひいては海戦の範囲を超える、さらに大きな戦争に拡大しかねない危険な火種になっている」(6月21日、代弁人談話)と指摘した。西海上での軍事衝突の危機が解消されない根本的な原因は、北南双方が互いに違う海上軍事境界線を主張していることにある。6月25日付労働新聞に掲載された軍事評論員の記事は、南朝鮮が主張する「北方限界線」(NLL)の真相とそれに対する朝鮮側の原則的立場を再び明らかにした。要旨は次のとおり。

今年5月に行われた第5回北南将官級軍事会談 [写真=聯合ニュース]

 最近、朝鮮西海海上に再び生じている緊張した情勢は、危険ラインを超えている。

 過去に起きた二度の西海交戦から教訓をくみ取るどころか、南朝鮮海軍艦艇の北側領海侵犯行為は6月中旬に至って、単純な挑発ではない侵犯水域に対する強盗さながらの維持策動に転換されつつある。

 無分別に続くこのような海上侵犯行為は、「北方限界線」を「固守」し「維持」するという当局の政略的企図を実現する凶計から、南朝鮮の好戦勢力が朝鮮西海海上に艦船力量を増強して陸海空軍部隊の即応臨戦態勢を維持し、現地司令官に発砲権まで付与した状態で行われていることにより、事態の深刻さを倍増させている。

 民族の頭上にまたしても戦争の暗雲が漂っているこの時刻、われわれは対決と衝突の危険な火種を抱いている「北方限界線」の真相と、これに対するわれわれの原則的立場を再度明らかにする。

1、不法の幽霊線

 「北方限界線」は、「国連軍」の帽子を被って南朝鮮を占領した米軍がわれわれの神聖な領海に勝手に引いた強盗さながらの界線である。

 1953年7月の朝鮮停戦協定は、朝鮮東海海上と地上における軍事境界線は規定したが、西海海上軍事境界線だけは画定されない状態にしておいた。

 当時、「停戦決死反対」のスローガンを掲げて「単独北進」を夢見ていた李承晩は、境界線のない西海海上を通じて北侵戦争を続けようとした。

 朝鮮戦争で類例のない惨敗を喫して疲弊していた米軍は、李承晩の無分別な「単独北進」企図とそれによって再発しかねない戦争を防ぐ一方、朝鮮へ向かう南朝鮮漁民の道を遮断する目的で、当時の「国連軍」司令官クラークをして朝鮮西海海上に「北方限界線」、別名「クラーク線」という遮断界線を画定するようにした。

 「北方限界線」は、このように米国の独善的な利害関係によって米軍司令官が一方的に引いた「最終越北遮断界線」「越線禁止限界線」であった。

 南朝鮮当局はこのような「北方限界線」を50余年が経ったこんにちになって、西海海上境界線に変身させようとありとあらゆる術策を弄している。

 われわれが「北方限界線」を不法、無法の幽霊線であるというのは、第1に、それが双方間に何の合意もなしに設定された一方的な境界線だからである。

 複雑な水域での境界線は当然、双方間の原則的な合意を経て公正に画定すべきである。

 とくに、わが国のように不安定な停戦状態が続いている朝鮮西海での海上境界線問題はさらにそうである。

 「北方限界線」が一方的に画定された幽霊線であるということについては、90年代に板門店で開かれた朝米軍部の将官級会談の際、米軍側も公式に認めたことがある。

 第2に、「北方限界線」が朝鮮停戦協定の要求にも反する境界線だからである。

 朝鮮西海での海上境界線問題は当然、停戦協定に基づいて解決されなければならない。

 それは、この問題があくまでも朝鮮戦争によって生じ、したがってこれに関する解決方途もやはり、戦争を技術的に中断するように規定した停戦協定の要求に即して求めなければならないからである。

 南朝鮮当局は、停戦協定の調印当事者ではないが、戦争参加者として当然、この協定を徹底的に遵守し、履行しなければならない。

 第3に、「北方限界線」が国際的に公認されている海洋法の要求にも反するからである。

 とくに、相手側の12マイル領海権尊重問題はもっとも核心的な要求となっている。

 米軍も一時、自国で開かれた国連海洋法会議の参加者に朝鮮地図を配布しながら、そこに朝鮮西海の北南「仮想境界線」を国際海洋法が規定した等距離原則に基づいて「北方限界線」よりはるかに南方に表記したことがある。

 「北方限界線」は、国際的に公認されたこのような海洋法条約のどの原則と要求にも、南朝鮮当局がつくった「海洋法」にも甚だしく反する不法、無法の幽霊線である。

2、通用しない詭弁

 「北方限界線」がこの50余年間、誰かの黙認のもとに維持されてきた海上界線であり、その南の水域もやはり自分たちが伝統的に管轄してきた水域であるというのが南朝鮮当局の主張である。

 80年代には、われわれが熱い同胞愛と人道的立場から水害救護物資を南側に引き渡したあと、その時に定めた双方海上対面地点をわれわれが「北方限界線」を認めたという根拠にしようと騒ぎ立てた。

 その一方で、60年代に行われた軍事停戦委員会会議で、あたかもわれわれが「北方限界線」を認める発言をしたかのように、70年代に双方飛行通報区域の西海界線を調整する時には、双方が「北方限界線」を基準にしたかのようなデマを流布したりした。

 最近では、90年代北南間の不可侵に関する合意も我田引水して解釈し、それを「北方限界線」を正当化するのに利用しようと愚かに画策している。

 周知のように、不可侵に関する北南付属合意書の第3章第10条は、西海海上に明白な海上境界線がないという共同の認識を前提に、それを今後、協議して正確に画定していこうという約束を盛り込んだ条項である。

 南朝鮮当局のこのような行動は、米国の要求に無条件追従しながら6.15統一時代を逆戻りさせ、北南関係をまたしても悪化させようとする政略的な企図を実現するところにその目的がある。

 それはまた、朝鮮半島の平和体制樹立問題が日程に上がったこんにち、西海海上不可侵境界線を画定することにした北南合意にも関わらず、不法、無法の幽霊線である「北方限界線」を何としても固守しようとする無分別な悪巧みとも関連する。

3、民族の確固たる意志

 「北方限界線」に対する立場は、朝鮮西海で平和を願うか否かを分かつ試金石であると言える。

 今後、再び西海海上で武力衝突が起これば、それは過去の西海交戦とは比べようもないたたかいとなり、地上と空中を含む全面戦に拡大してわが民族の生死はもちろん、世界の平和も重大に脅かすことになるであろう。

 軍事的見地から見れば、朝鮮西海にはすでに双方の軍事的衝突の序幕が開かれた状態にあると評することができる。

 事態の深刻さに備えてわが軍隊と人民は、これまで強い忍耐と雅量をもって取りえるすべての措置をすべて講じてきた。

 それには、双方の軍当局が主体となって西海海上での衝突防止問題を根源的に一日も早く解決する提案もあり、これまでわれわれが行った主張が正当ではあるが、それをも含めて双方のすべての主張を共に大胆に放棄し、「ゼロ」の状態から新たな西海海上境界線を画定しようという提案もある。また、公正さを期するため、すでに遂げられた北南合意と停戦協定、国際的に公認されている法律的要求を基礎に西海海上衝突問題を取り扱おうという提案もある。

 しかし、南朝鮮当局は、衝突の根源除去問題は軍事的信頼が先に築かれなくてはならないと反対しており、公正な西海海上境界線画定提案は時期尚早であるだの、それを扱うところが別にあるだの、何だのとして背を向けている。

 わが軍隊と人民は、われわれの神聖な海に侵入して意のままに振る舞う南朝鮮海軍艦艇の無謀な行為と、それを後ろで操っている南朝鮮軍当局の行為を決して傍観しないであろう。

 南朝鮮当局は、わが海軍の忍耐とたび重なる警告が正義の怒りとなって爆発し、断固たる行動へ移らないよう熟考すべきである。

 朝鮮西海にはもっぱら公正な海上境界線だけがあるべきである。

 「北方限界線」を排撃するわが民族の確固たる意志には、いささかの揺るぎもない。(朝鮮通信)

〈解説〉 北側、新たな領海権設定主張

[朝鮮新報 2007.7.4]