〈月間平壌レポート〉 再び動き出した合意履行プロセス |
BDA問題解決で朝米関係進展 【平壌発=李相英記者】世界の注目が6月の平壌に集まった。月の前半には6.15記念行事など北南関係のイベントが相次いだ。下旬には「バンコ・デルタ・アジア」(BDA)問題の解決を前後してヒル米国務次官補や国際原子力機関(IAEA)の実務代表団の訪朝が実現し、朝鮮半島核問題の解決へ向けた動きが急進展を見せた。 教訓残した北南関係 5月29日から6月1日までソウルで開かれた第21回北南閣僚級会談は、6.15共同宣言発表後7年が過ぎた北南関係の現状を反映する結果となった。3泊4日間会談を取材しながら見えたものは、北南関係進展に対する南側のアプローチがはらむ根本的な問題点だった。 南側は、北に対する40万トンのコメ借款の時期を北側の「2.13合意」履行に合わせて調整するという方針で会談に臨んだ。 会談が「荒れる」ことは半ば予想されたことだった。 南側当局は「国内世論」と「国際社会との関係」を考慮したものだと説明したが、結果的に米国の「速度調節論」が強く作用した形になった。南側の「外勢共助」的態度は協議に否定的な影響を及ぼした。2日目にはコメ借款問題で双方の立場が鋭く対立、本来の議題の討議に入れぬまま会談は空転した。 最終日、午前中の団長接触で何ら進展がないと見ると、南側の一部メディアは性急に「会談決裂」の第1報を流したが、双方は土壇場で共同報道文をまとめ決裂を回避した。しかし、次回の日程も決められぬまま具体的な合意なく閉幕した会談は、北南関係の今後に不安を残す結果となった。 閣僚級会談の2週間後に平壌で開催された6.15共同宣言7周年記念民族統一大祝典。初日こそ予定通りに進んだが、ハンナラ党所属国会議員のひな壇着席問題をめぐって2日目の民族団合会議は開催されなかった。2日目の日程は全面中断、3日目以降の予定も大幅に変更された。結局、会議の開催は最終日にずれ込んだ。 北、南、海外の3者合同行事史上前例のない事態によって、北南間の葛藤のみならず「南南葛藤」も表面化した。 南側のある代表は閉幕後、「今回の問題は3者統一行事の根幹に関わる重大な問題。どうにか体裁を整え閉幕にこぎつけたが、統一運動は大きな課題に直面している」と、神妙な面持ちで語っていた。 祝典は「民族大団結」の強化を高らかにうたい上げた。北南とも「わが民族同士」を強調しているが、では民族の和解と協力、統一の促進に立ちはだかる内外の障害にどう対処するのか。閣僚級会談と民族統一大祝典での出来事は、北南関係と統一運動に深刻な教訓を残した。 ヒル次官補の訪朝
「失われた時間を取り戻すことができるよう望んでいる」 21日昼、雨の降りしきる中、平壌空港に降り立ったヒル次官補は、記者団の質問に開口一番こう答えた。 「2.13合意」の履行過程をストップさせ北南関係にまで影響を及ぼしたBDAの凍結資金問題。6月に入り、問題の解決へ向けた動きが急展開した。朝鮮半島非核化と朝米関係正常化プロセスが再始動する中、6者会談米国代表団団長の「電撃」訪朝は実現した。 一行を出迎えた朝鮮外務省の李根・米州局長とヒル次官補は、笑顔で会話を交わしながら空港ビル内を並んで歩いた。朝米直接協議に対する双方の積極的な意気込みと、対話の相手に対する尊重の姿勢が垣間見える光景だった。 ヒル訪朝のちょうど3カ月前、北京で開かれた第6回6者会談はBDAの朝鮮側凍結資金の送金問題がこじれたため、実質的な討議がなされず休会した。「2.13合意」の履行は一時中断を余儀なくされた。 この3カ月間は、ヒル次官補が語ったように、米国にとって「失われた時間」だったかもしれないが、合意履行プロセスを進展させるうえでは決して無駄な時間ではなかった。 朝鮮側は機会あるごとに、合意の履行に関する強い意欲を示してきた。16日には原子力総局総局長名義の書簡をIAEAに送り、同機関の実務代表団を招請した。資金の送金が最後の段階にあると認めたうえで、問題の最終的な解決を待たずしての決断だった。 22日、ヒル次官補は平壌出発に先立ち記者会見、「『9.19共同声明』の完全なる履行」を強調しながら、「(米国側は)問題の包括的解決を望んでおり、朝鮮半島非核化はその重要な要素」だと語った。 これに呼応するように翌23日、朝鮮外務省スポークスマンはヒル次官補の訪朝について言及、朝米協議は「包括的で生産的だった」と評価した。スポークスマンの発言は、金融取引分野での協力強化や6者会談団長協議および6者外相会談の日程にも言及するなど、ヒル次官補の訪朝を機に朝米双方の間で幅広い問題が協議され、意見の一致を見たことをうかがわせる内容だった。 朝鮮側は直後の25日、「BDAの凍結資金問題が解決した」(外務省スポークスマン)と発表、「行動対行動」の原則に従って「2.13合意」の履行を推し進めていくと指摘した。翌日にはIAEAの実務代表団が平壌に到着し、30日まで朝鮮側と寧辺核施設の稼動停止および封印に対する監視、検証作業についての協議を行った。 6者会談の再開が日程に上っている。7月以降も朝鮮半島情勢は慌しく動くことが予想される。時が経てば、6月に起こった一連の動きが情勢の転機として記憶されるかもしれない。 [朝鮮新報 2007.6.29] |