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〈月間平壌レポート〉 「慰安婦」、総連弾圧、我慢ならない

高まる反日感情、北南関係加速への期待

 【平壌発=李相英記者】金日成主席生誕95周年と朝鮮人民軍創建75周年を迎え、例年になく華やかだった4月の平壌。2大行事での高揚した雰囲気そのままに、5月に入っても市民らは意気軒昂だ。今年の3紙共同社説や、4月の最高人民会議で打ち出された経済の復興と人民生活の向上という目標に向けて一丸となっている。中旬からは全国的に田植えが始まった。朝鮮半島情勢転換の兆しを肌で感じているのか、農場で出会った人々の顔は一様に明るかった。一方、「従軍慰安婦」問題や総連弾圧と関連して、市民の反日感情は最高潮に達している。

日本の傲慢さ

金剛山青年駅で行われた北南鉄道連結区間の列車試験運行記念行事(5月17日、撮影=文光善記者)

 日本の政治家の歴史わい曲発言に対して、世界中から非難の声が上がる中、平壌でも安倍政権に対する批判がわき起こっている。

 4月から5月にかけて、「従軍慰安婦」問題と関連して、対日補償要求団体や被害者を中心に各界各層の声を取材した。

 「わが人民の日本に対する印象が肯定的だったことは今まで一度もない。現在、反日感情はかつてないほどの高まりを見せている」

 ある被害者団体の関係者は、歴史問題をはじめ「拉致問題」や6者会談でのふるまいなど、「日本の傲慢さには我慢ならない」と吐き捨てるように言った。

 5月初旬、ソウルでの会議参加を控えた朝鮮の日本軍「慰安婦」・強制連行被害者補償対策委員会の洪善玉委員長にインタビューした。「日本政府が過去の反人道的犯罪を完全に清算するまで、われわれの運動は終わることがない」と話す洪委員長の断固とした口ぶりから、この問題に対する朝鮮側の強い意志が垣間見えた。

 26日、平壌空港には、日本軍「慰安婦」問題解決のためのアジア連帯会議(ソウル、5月19〜21日)を終えて戻ってきた北側代表団の姿があった。

 代表団メンバーの一人は、「過去清算要求運動の世界的な盛り上がりに勇気づけられた。これからもさまざまな団体との連帯を強め、運動の発展に力を尽くしていきたい」と決意を新たにしていた。

 総連に対する日本当局の政治弾圧も市民らの怒りをかき立てている。

 この問題について話す人々は誰彼となく、「総連と在日朝鮮人に対する弾圧はすなわち朝鮮に対する『宣戦布告』である」という朝鮮側の立場を繰り返し強調する。

 現在、総連の活動や在日同胞に対する人々の関心はいつにもまして高い。この間、さまざまな総連代表団や同胞訪問団が祖国を訪れたが、現地の人々の「温かい励ましや声援に勇気づけられた」という声をよく耳にした。

シビアな認識

 一方、北南関係に目を移してみると、「開かれたウリ党・東北アジア平和委員会」代表団や、孫鶴圭・前京畿道知事を団長とする「東アジア未来財団」代表団の訪北、経済協力事業の進展などが目立った動きだった。

 中でも注目を浴びたのは、17日に東、西海線で同時に行われた北南鉄道連結区間の列車試験運行。朝鮮戦争時に分断された線路の上を、列車が軍事境界線を越えて北から南へ、南から北へ走った。

 東海線の試験運行を現場で取材した。「歴史的な瞬間」を期待していたが、行事はいささか拍子抜けするほど淡々としたものだった。

 今回の試験運行は、あくまで鉄道連結区間における安全を確認する「テスト」というのが北側のスタンス。双方の軍事的保障措置も1回限りのものだ。北側の乗客は南側の半分の50人で、内訳も鉄道、北南対話関係者ら実務陣に限られた。南側とは対照的に、北側に浮かれた様子は全くなかった。

 現場の関係者らは、「北南鉄道事業において確かな前進であり、これを喜ばしいと思わない人間は一人もいない」と、今回の試験運行の意義を認めながらも、口をそろえて「まだ第1歩にすぎず、正式開通までには問題が山積している」と指摘した。直前に行われた将官級軍事会談での対立点は、未解決のまま残された。北側が重視する東海線では、猪津駅以南の線路の連結工事がほとんど進んでいない。

 1回限りの行事に一喜一憂することなく、その先を見据えているからこその、南側に対する「注文」であるように思えた。

 着実に前進しているが、いま一つトップスピードに乗りきれない現在の北南関係。列車試験運行の現場で感じたのは、一種のもどかしさだった。

 昨年の北南関係の断絶によって一時中断していた北南経済協力事業は、本格的に再開する兆しを見せている。4月下旬の北南経済協力推進委員会第13回会議での合意を受けて、各分野の実務協議が相次いで開かれた。列車の試験運行以外にも、軽工業、地下資源開発協力事業の当面のタイムスケジュールに合意した。

 昨年の一時中断を経て再び始まった北南関係の歩みを加速させる一大転換期が、6月から8月にかけて訪れるのかに期待が集まっている。

[朝鮮新報 2007.5.30]