〈インタビュー〉 宋日昊・外務省朝日会談担当大使 朝・日の進展、「日本の態度次第」 |
「日本は6者合意覆した」 朝・日国交正常化作業部会(7〜8日、ベトナム・ハノイ)朝鮮側代表団団長の宋日昊・外務省朝・日国交正常化交渉担当大使は9日、本紙記者との単独インタビューに応じた。 宋大使は、日本側が6者会談の合意に逆行し、今回の作業部会で拉致問題に関する理不尽な主張のみを展開したと明らかにし、1年1カ月ぶりに再開された朝・日政府間対話を破綻させた安倍政権を強く非難した。 また今後の朝・日関係の展望について、「日本側が今回のような姿勢をとり続けるなら、朝・日関係の進展は不可能だ」と指摘、両国関係の進展は「日本側の態度次第だ」と強調した。 一方で、日本国内において総連と在日朝鮮人に対する弾圧が極限に至っている現状について、「朝鮮に対する自主権侵害」であると非難し、これらの問題を含めて日本側が自ら犯した過ちを認め謝罪するまで徹底して追及する意向を示した。 安倍政権の「拉致要求」で作業部会破綻 総連弾圧、「徹底して追及する」 【北京発=金志永記者】7日と8日、ベトナムの首都ハノイで行われた朝・日国交正常化作業部会は、何の合意もなされないまま予定された日程を繰り上げて終了した。朝鮮側代表団団長の宋日昊・外務省朝・日国交正常化交渉担当大使に、今回の会議に対する評価と朝・日関係の今後について聞いた。 ▽「死亡者生きて返せ」と要求 −朝・日政府間対話は1年1カ月ぶりだった。会議に臨んだ朝鮮側の基本姿勢は。
朝・日国交正常化作業部会の目的は、第5回6者会談第3ラウンドで合意された「2.13共同文書」に明らかにされている。両国が不幸な過去を清算し互いの懸案問題を妥当に処理したうえで関係正常化を実現するための措置を講じることにある。 われわれは、「2.13共同文書」を誠実に履行するために準備してきた。苦労して設けられたハノイ会議に誠実に臨もうとした。 しかし、日本側は準備をまったくせずに会議場に現れ、拉致問題が解決すれば国交正常化ができるという従来の主張を繰り返した。甚だしくは、拉致問題は被害者の死亡が確認されたからといって解決するものではなく、被害者が全員生きているという前提の下で彼らを全員返せば解決するという、理不尽きわまりないことまで言い出した。 われわれが「2.13共同文書」に明記された過去清算に対する日本側の立場を問い詰めると、強制連行や日本軍「慰安婦」問題など1945年以前の事柄については事実を確認することもできず、それらの問題は平壌宣言に財産および請求権の放棄が明記されているため、すでに解決済みであると答えた。 日本側は、6者会談の場で自らも合意した事柄を完全に覆し、過去の清算に対して発言はしても、行動は起こさないということを明確にした。 結局、作業部会で日本側は拉致問題のみを浮き彫りにさせながら、この問題を日本国内で政治的に利用しようとする特定勢力の立場を忠実に代弁したにすぎない。 −今回の会議は、安倍政権発足後初の朝・日政府間対話だったが。 昨年2月、北京で開かれた国交正常化会談で日本側は、死亡した人間を再び生き返らせ日本に戻せとまでは言わなかった。被害者が死亡したというならその事実を確認してくれ、朝鮮側から渡された調査報告書について疑問点があるので解明してくれというものだった。 しかし、今回はその立場を一変させてしまった。われわれは、疑わしき問題については解明することもできる。しかし、被害者の死亡が確認されても問題は解決されないといった難癖をつけるということは、問題を永久に解決しないと言っているようなものだ。 ▽計画された「強硬交渉術」 −日本側は、初めから会議を進展させようとしていなかったのか。 死亡が確認されても問題は解決しないという日本側の立場は、協議の過程で偶然に出てきたものではない。日本側は、そうした立場を文書化していた。日本側団長は、それをただ読み上げたにすぎない。きわめて意図的な発言であり、すべてが事前に計画されていた。 現在、朝・日間には数多くの問題が複雑に絡み合っているので、自分の意見を主張しながらも相手側の意見に耳を傾けて、互いの立場を調整しなければならない。一度会ったら互いに「宿題」を持ち帰って、それについて研究したあと、再び顔を合わせるべきだ。しかしハノイに来た日本側代表団を見るかぎり、そのように振る舞える状況にないということが明らかだった。彼らにそのような裁量権限は与えられていなかった。 拉致問題に関する部分は、安倍総理が直接指示を下し論議の枠組を定めたように感じられた。事実、日本側団長は、ハノイに来る前に安倍総理から直接、拉致問題に関する指示を受けたと話していた。 −朝鮮側は日本側が求めた拉致に関する再調査について、「対朝鮮制裁の解除、総連弾圧の中止、過去清算プロセスの開始」を前提に、これらの進展状況によって考慮できるとした。拉致問題に対する立場は? 今までわれわれは、誠意を尽くして拉致問題に関する自らの義務を果たしてきた。しかし、日本は拉致問題を利用して国民の間で朝鮮に対する敵対感情を煽った。さらに、核やミサイルを口実に朝鮮に対する制裁措置を講じ、総連を弾圧している。 朝鮮側は日本側の要求に応じ拉致問題の解決に力を尽くしたが、日本側は平壌宣言発表後、過去の清算問題解決のためにいっさい動こうとしなかった。われわれは、非難され制裁を受けながら、ひたすら一方的に何かをしなければならないとは思わない。 現在は、われわれが朝・日関係改善のために動ける雰囲気にはない。動くとすれば日本だ。今こそ日本側が行動を起こすべき番だ。元来、拉致問題と日本の過去清算問題は比較すべきものではない。日本側の歴史的責務である過去の清算を、拉致問題が解決されれば行うというのは言語道断だ。 ▽「日本の支援求めない」 −日本国内には、6者会談の合意に従い朝・日対話の場が設けられたことについて、2国間の懸案、とくに拉致問題に対する国際的な共同対応の枠組が作られたと見る向きがある。 あまりにも我田引水的な思考だ。「2.13共同文書」に明らかにされているのは、6者が拉致問題を扱うという内容ではない。そのような懸案問題は朝・日2国間で解決すべきというものだ。朝・日作業部会もそうした脈絡の中で設置された。 さきの6者会談(2月)でも日本は、全体会合での基調演説で拉致問題について言及したが、どの国も拉致問題を6者会談の場で扱うことに賛同しなかった。かえって日本が孤立する結果になった。 日本は米国に拉致問題を提起し、朝米関係の進展を妨げようと必死になっている。しかし私の考えでは、かえって米国の方が拉致問題の解決プロセスについてよく理解しているようだ。少なくとも米国は死亡者を生き返らせろとは言わないだろう。 −安倍政権は、朝・日作業部会の停滞は6者会談の全般的な進展に影響を及ぼすだろうし、そうなった場合、朝鮮側は求めているエネルギー支援も得られないだろうという論理を展開している。 「2.13共同文書」には、原則的に一つの作業部会の進展はほかの作業部会に影響を及ぼさないと明記されている。日本側の言動はすべて6者会談合意に反している。 安倍政権は、拉致問題で進展がないかぎり6者会談で合意した対朝鮮支援に参与しないと言っているが、われわれは日本に対して支援を求めないし、支援を受ける気もない。日本が支援に加わろうが加わるまいが、われわれには関係のないことであり、それは朝鮮を除く5者の問題だ。 支援問題に関して安倍政権は、朝鮮との「取引」が可能であるかのように見せているが、真相は日本が6者会談の合意を機に走り出した「安全保障という名の列車」にタダ乗りしようというものだ。 「2.13共同文書」に明記された支援問題は、朝・日2国間関係における問題を解決することで得られるものではなく、朝鮮半島非核化のための初期段階行動措置として提起された支援だ。 日本側は支援の性格についてもっとよく知るべきだろう。朝・日2国間関係に横たわっている問題は、支援ではなく、日本が過去に犯した罪行に対する補償だ。 ▽在日同胞と同じ心情 −朝・日関係の今後をどう展望するのか。 日本が今のような態度をとり続けるならば、朝・日関係の進展は不可能だ。いったい日本は何のために6者会談に参加したのか。非常に疑問を感じる。 −朝・日作業部会の枠組維持のために、朝鮮側が進んで行動を起こすことはないのか。 それは日本側の態度にかかっている。日本が本当に朝・日関係の進展を望み、平壌宣言を履行し6者会談の合意に従って行動する準備ができているのなら、われわれもそれに応える。しかし、そのような準備もなしに拉致問題のみに固執して別の目的を追求するのならば、互いに会っても意味がないので、いっそのこと会わないほうがいいだろう。 −日本では総連と在日朝鮮人に対する弾圧が極限に達している。 われわれは、総連弾圧と在日朝鮮人に対する迫害が行われている現実を重く見て、今回の会議でこの問題を大きく取り上げた。現在日本では、想像しがたいほどのファッショ的弾圧の嵐が吹き荒れている。日本に住むわが国の公民および公民団体に対する弾圧は、わが国の自主権侵害であり、これを絶対に容認するわけにはいかない。この問題が解決されなければ、朝・日関係も改善されない。 総連と在日同胞が東京をはじめとする各地で日本当局の不当な弾圧に反対する集会とデモ行進を行ったが、祖国の人民も、彼らと一緒にデモに参加しているような気持ちになっている。祖国の人民はデモを繰り広げる在日同胞の民族自主精神に感銘を受けている。現在朝鮮国内では、反日世論が社会的にますます強くわき起こっている。 総連と在日同胞の心情イコールわれわれの心情だ。これは決して分離できない。祖国は総連と在日同胞の期待に応えられるよう、対日政策を展開するだろう。日本が自らの過ちを認め謝罪するまで徹底して追及する。 祖国は自らの責任を果たし、必ずやたたかいを勝利に導いていくだろう。在日同胞が信念を持って、日本で最後までたたかってくれることを願っている。 [朝鮮新報 2007.3.14] |