〈在日朝鮮学生学術フェスタ 論文賞〉 民族音楽教育で民族チャンダンを教えるうえでのチャンゴの限界とプクの可能性 |
現在、朝鮮学校における民族音楽教育は、朝鮮の民謡とチャンダンが教材となり、児童らが民族の音楽を聴き、体で感じ、表現する過程で民族の固有な情緒性を習得し、民族性を育むことを目的に行われてきた。 民族固有のリズム形態であるチャンダンを教材とした教育では、民族打楽器の一つであるチャンゴを叩くことによって民族固有の音色を得ることができ、多くのチャンゴが普及されたことにより、チャンゴは民族楽器の代名詞となった。 しかし、民族固有の音色を得て、チャンダンを体で感じ表現するうえで、チャンゴはその構造と奏法において限界がある。 朝鮮学校に普及しているチャンゴは、伴奏チャンゴとサムルチャンゴに分けることができる。伴奏チャンゴは歌の伴奏や器楽伴奏で用いられ、サムルチャンゴはサムルノリやプンムルノリ、農楽などで用いられる。 伴奏チャンゴは伴奏用であるため音程が低く、サムルチャンゴはソロ楽器の性質を持つため音程が高い。よって演奏をするとき固有な音色を得て、アンサンブルの調和を得るためには正確なチャンゴの選択をしなければならない。 構造にともない奏法も異なる。伴奏チャンゴはクンピョン(左)を掌で叩き、チェピョン(右)を薄いチェ(撥)を持って叩く。サムルチャンゴはクンピョンをクングルチェ(撥)で叩き、チェピョンを太いチェを持って叩く。 このとき伴奏チャンゴとサムルチャンゴは演奏姿勢が互いに異なる。伴奏チャンゴは体の前にチャンゴの胴が来るように設置する。サムルチャンゴはソンバン(立奏)とアンジュンバン(座奏)で演奏姿勢が異なるが、どちらも体の前にチェピョンが来るように設置する。 演奏においてはクンピョン、チェピョンのどちらも手の微妙な力加減が要求される。チェピョンを叩くときには、チェが膜面に当たると同時にその弾力によりチェの先端部が膜面から離れるようにしなければならない。言い換えれば、チェを持つ部位の若干上部を、膜面の縁を目掛けて叩き、叩くと同時にチェの柔軟性により膜面にチェの腹部が当たるようにしなければならない。 クンピョンを叩くときには、膜面を叩いたときにその打音が目立たず、胴だけが響くように叩かねばならない。 構造にあった奏法で演奏しなかった場合、楽器本体とチェを破損する危険性が生じる。サムルノリ演奏時に伴奏用のチェを使用するとチェが折れる恐れがあり、伴奏チャンゴをもってサムルノリ演奏をした場合、クングルチェによってチャンゴの胴を割る恐れがある。 このように、構造と奏法において統一性が乏しいチャンゴは扱いが難しく、楽器に対する少なからぬ知識、相当な技術練磨が要求される。まして、週1回の音楽の授業に導入するには時間的にも困難である。このようなチャンゴの教育的限界を克服し、奏法に対する注意を軽減し、チャンダンを感じ、表現することだけに集中できる楽器として、同じ民族打楽器であるプク(太鼓)に定めた。 朝鮮学校に普及されているプクにはチュンブク、サムルブク、トンブクがあり、そのほかにも数十種にものぼる。構造において、チュンブクは膜が釘により固定され、サムルブク、トンブクは両面の膜を紐で胴に締め付けている。チュンブクを叩くときは椅子に座り、左膝の上に乗せる。サムルブク、トンブクを叩くときは地面に座り、あぐらをかき、外側の足を内側の足より若干離し、その足の内側に乗せる。膜面を打つ奏法はどの奏法も同一である。チェを持ち、持った手を挙げ、腕を降ろすと同時に手首を折り、膜面中心部を叩く。叩くとき、チェを持った手を握るように力を入れる。 そのほかのプクの奏法は、パンソリに使用するソリブクの場合、胴をチェで叩く奏法があり、宮中音楽の鼓吹楽で使用されたリョンゴの場合、膜面を上にして、紐で体に結びつけ演奏する。 このように、構造および手法は多様であるが、基本的な構造は同じであり、叩く部位もまた同じである。手法においても、こぶしを握るようにチェを持ち、膜面中間部に向けて叩くだけでよいので、児童はどんなプクでも安心して演奏できる。また、奏法が妨げとならないので、チャンダンを体で感じ、表現することだけに集中することができるのである。 チャンダン教育のためのプクの演奏法は、これを立て、両手にチェを持ち左手で膜面を、右手で縁を叩く。こうすることで、記譜法にそってチャンダンを叩くことができ、ほかの楽器にも対応できるのである。 以上、チャンダン教育をチャンゴではなくプクをもって実施する、より有効的な教育方法を考察した。(朝大教育学部2年 「烔烈) [朝鮮新報 2007.12.10] |