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〈在日朝鮮学生学術フェスタ 論文賞〉 「わが民族同士」の理念のもと歩み寄る北南の童話世界

「光復60年間もっとも輝く南北創作童話」中、北の作品を中心に

 歴史的な6.15北南共同宣言発表以後、「わが民族同士」の理念のもとに、北南間の交流は活発になった。

 文学分野でも、2005年7月に開かれた「6.15共同宣言実践のための民族作家大会」をきっかけに、北南間の交流と協力は著しく前進している。2006年、南の南北経済文化協力財団と北の著作権事務局が、47冊の北の著作物を南で出版することで合意し正式契約を結んだことは、その具体的な実例といえる。

 「わが民族同士」の理念のもと思想や制度を超えて、文学作品が持つ感動をわが民族が現実的に共に味わうことになったといえる。本論文では「暁里沅」(「韓国児童教育研究院」の管轄下にある児童書専門出版社)から出版された「光復60年間もっとも輝く南北創作童話」(全3巻)を研究対象にし、収録された68編の童話中、18編の北の童話を分析した。

 北南童話作家の作品を選別し刊行したこの童話集は、南で出版された書籍の中において、北南の子どもたちが共に読めるという点で意義深いだけではなく、これから統一時代を迎える子どもたちに北南の互いの文学を理解し親しく接する事ができる機会を与えることになるだろう。また、分断以降、政治、社会制度、言語分野だけでなく大きな違いを生んだわが児童文学をひとつにつなぎ、童話を通じて北南が童心の交感を得ることで私たちが同じ民族であることを確認することができるであろう。

 私たち在日同胞の児童文学創作の道も、「わが民族同士」の精神で進むべきであり、それは統一時代を生きる文学徒たちの切実な課題でもある。

 本論文は卒業論文の一部分になるが、今日、同胞民族圏拡大と同胞社会の民族性固守が切実に要求される中で、育ちゆく子どもたちのための児童文学がどのような姿で、どのように創作されなければならないかを明らかにしようと思う。その研究の一部分になるこの論文が、これから現実的に近づいてくる統一祖国と在日同胞社会を童話でつないでいくうえでその出発点になれば幸いである。

 この童話集の特徴の重要な一つは、北で使われる語いと表現をそのまま載せたことである。18作品中176語の北で使われている語いと表現を紹介しながら、その意味も説いている。北で使われる語いは、外来語をなるべくひかえ固有な特色ある朝鮮語を生かして使っている。北の社会生活で使われる特徴的な語いも見られる。

 また、平安北道、黄海道などの方言も紹介されている。これは北半部地域の地方方言を紹介することで、朝鮮の三千里江山がひとつになることを望む6.15がもたらした具体的な統一意識の反映であり、統一の脈拍であるといえよう。

 2007年7月16日から8月31日まで南で開かれた「第1回統一読書会」(任軒永大会長)でも、洪錫中の小説「黄真伊」の次に多く読まれ、もっとも評価されたこの童話集は、文学が与える美しい感動は理念とは関係なくすべての人たちに共感を与えるという真理をあらためて認識させてくれる。

 しかし、在日同胞社会には日本語で書かれた作品は多くあるが、朝鮮語で書かれた子どもたちの嗜好にあった児童文学作品はほとんどない。北南が一つの言語による文学作品を持ってその感動を共有している今日、在日同胞もその感動を共有しなければならない。

 そのためには、在日朝鮮児童文学も朝鮮語で創作されなくてはならないし、わが民族が共に読むことができなければならない。朝鮮語を通じての北南、そして海外同胞たちの共通の感動こそ、「わが民族同士」の理念のもとに進み行く児童文学の使命であり道である。

 在日同胞がこれまで世代を越え創造してきた誇らしい歴史、文化、そして生活を朝鮮語で児童文学に反映したとき、それは朝鮮文学の範疇に属する在日朝鮮児童文学として、わが民族文化と統一祖国に大きく貢献するであろう。

 祖国統一が夢でなく現実として迫っている今、統一の新しい時代に生きる未来の主人公たちがどのような夢を持ち、どのような人生を過ごすのかは、大変重要なことである。

 同胞民族圏拡大と同胞社会での民族性固守が切実に要求される中、育ちゆく新しい世代のための児童文学は、6.15精神である「わが民族同士」の理念のもとに、今確固たる一歩を踏み出すときが来た。

 統一時代を生きる私たち文学徒は、「わが民族同士」精神の具現を児童文学の切実な課題として良い方途を探しだし、より旺盛な創作活動を繰り広げていかなければならないだろう。(朝大文学歴史学部3年 金真美)

[朝鮮新報 2007.12.10]