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〈教室で〉 東京朝鮮第1初中級学校付属幼稚班 金美好先生

付属幼稚班の特色生かし、七夕には「スイカの花菜(ファチェ)」作り

 7月7日は七夕である。日本では短冊に願いを込めて笹の葉に飾る風習がある。一方、朝鮮では願いを書いた紙をお盆の上にのせて月明りに照らす。

 東京朝鮮第1初中級学校付属幼稚班(東京都荒川区)の37人の幼児たちはこの日、教員たちとともに七夕を楽しく過ごした。

おり姫とひこ星の伝説

七夕にはひこ星役(左)に扮装して

 教室に座って「おり姫とひこ星の伝説」の話に耳を澄ましているつつじ組(年長)、まつばぼたん組(年中)、たんぽぽ組(年少)の子どもたち。

 金美好先生(24、つつじ組担任)が、パヂ・チョゴリを着た「ひこ星」の姿で、ダンボール箱で作った牡牛を引きながら教室に入ると、子どもは大きな歓声をあげた。

 天の国の王さまの命令によって、天の川を間に挟んでお互い別れて暮さなければならなくなったおり姫とひこ星。物語は日本語を一言も混ぜることなしに朝鮮語のみで話されたが、おり姫とひこ星役に扮した先生たちの演技も手伝って、子どもたちはピクリともせずに集中していた。

 お話の終わりを告げるピアノの音が鳴ると、子どもたちは声を合わせて元気いっぱい歌いだした。

 ひこ星は良い星
 まじめに働くね
 おり姫も良い星
 一生懸命働くね
 …
 からすはカウックカウック
 鵲はカアカア
 みんなで飛んで行って
 羽の橋を架けよう
 …

 続いて行われた「願い発表」では、子どもたちの「ぬり絵がじょうずに描けますように」「海の底までもぐれますように」「(通学用の)青いバスの運転手になりたいな」「ザリガニを100匹とりたいな」などの子どもらしい願いが発表された。

手作りの楽しさ

スイカの花菜作りに熱中する園児を見守る

 「スイカの花菜」作りで子どもたちは、三角巾とエプロンですっかり「ちびっこ料理人」に変身した。金先生が見守る中、スイカをスプーンで丸くくりぬく子どもたちの表情は真剣そのもの。子どもたちは、スイカをスプーンで慎重にくりぬきながら、手の力加減を学んでいく。

 ある程度スイカをくりぬいたところで、金先生が持って来たのはボウルの中に入った、刻んだいろんな果物だ。

 「何の果物がはいっているかな?」

 金先生の言葉に子どもたちは、「桃、パイナップル、みかん、リンゴ、…ナタ・デ・ココ?」と名前をあげてみる。果物の元の姿を見なくても名前をあげることができるのは、子どもたちの観察力と想像力が育てられたことを意味している。スイカの皮を器にして、くりぬいたスイカの実と果物を入れ、仕上げにサイダーを注き込めば、「スイカの花菜」のでき上がり!

 昼休みにはオンマ(お母さん)たちが作ってくれたのり巻きと 水キムチ、そして、子どもたちの手作りの「スイカの花菜」が配られた。

園児増加の秘訣

輪になって園児と遊ぶ

 金先生は、幼稚班教育を子どもたちが学校教育をスムーズに受けられるよう準備する期間だと考え、同校初級部1年生の受け持ちの教員との連係の下、園児教育に対する研究を深めている。

 金先生の話によると、この日子どもたちに聞かせた「おり姫とひこ星の伝説」は、中級部の国語の教科書にある内容をアレンジしたもので、歌は初級部の音楽の教科書に載っているものだという。

 「これが付属幼稚班の利点ではないでしょうか?」

 幼稚班の朝鮮語教育では、とくに聞き取り教育に力を注いでいる。

 「子どもたちがわかってもわからなくても、まずは朝鮮語で話しかけ、どうしても理解に苦しむようなら時には日本語で説明を加えるようにしている。言葉は耳で聞き、重ね重ね使っていくうちに身に付くもの。そういう日々の積み重ねのなかで、たんぽぽ組の幼い子どもたちまでもが日常生活の中で使う言葉―例えば、『おしっこをしに行きます』などを理解して、朝鮮語で言えるようになる」

 朝鮮学校・幼稚班への入学、入園を勧める活動を通じて、保護者たちの教育に対する関心の大きさを実感しているという金先生は、同幼稚班の園児数が近年、減少どころかむしろ増加傾向にある背景について、学齢前の小さな子どもを持ったオモニたちの子育てサークルと、若い母親たちのネットワークを通した活発な情報交換があると分析する。

 「日本の幼稚園にはない、朝鮮幼稚園独自の特色をいかすところに園児数拡大の秘訣があるように思う。父母たちの支持が大きいということは、それだけ朝鮮幼稚班の生活力が保護者たちの中で認められているからではないだろうか」

 複雑な情勢の中でも在日同胞社会の一員として、自分の役目を果たしたいとの思いから幼稚班の教員になったという金先生。子どもたちに、この厳しい世の中を生き抜く力と知恵を育ててあげたいというのが金先生の望みだ。

 ピアノを弾けば自然に肩が揺れてオッケチュム(肩踊り)がはじまり、チャンゴと太鼓、サンモ回しなども上手だという同幼稚班の園児たち。子どもたちの成長を1年生になった後もずっと見守ることができるというのも、金先生の喜びのひとつだという。(文=金潤順記者、 写真=文光善記者)

※1983年生まれ。東京朝鮮第3初級学校、東京朝鮮中高級学校、 朝鮮大学校教育学部保育科卒業。 東京朝鮮第1初中級学校付属幼稚班教員。つつじ組担任。

[朝鮮新報 2007.8.31]