東京第3初級「家族 ウリマル マダン(朝鮮語の広場)」 子どもの「ウリマル言語環境」を広げよう |
オンマ、アッパも一緒に! ユニークなウリマル(朝鮮語)教育に取り組んでいる東京朝鮮第3初級学校(東京都板橋区)で10日、全校児童135人と保護者約80人による「家族 ウリマル マダン(朝鮮語の広場)」が催された。 児童たちの話し言葉のスキルアップに力を入れている同校では、7年前から保護者たちにも協力してもらい、毎年3月に家族ウリマル発表会を開いている。 「ソロマル(対話)」の見本が事前に配られ、親子で練習して発表したこれまでとは違い、今年は各家庭オリジナルの「ソロマル」が発表され、教室は大いに盛り上がった。 「ソロマル」は卒業試験中の6年生を除き各クラス別に行われた。料理、掃除、赤ちゃんの誕生などを題材に、家庭の日常が生き生きとウリマルで表現された。 伝わる家庭の風景
2年生の教室をのぞいてみると、姜希純ちゃんがオンマと一緒に「掃除の日」のソロマルを発表していた。「オモニ、今日は掃除の日でしょ?」「そう、今日は掃除の日。まず、あなたは床を拭いて。オンマは窓を拭くから」「終わったわ。次は何を?」… オンマは娘に、次々に用事を言いつける。机、本棚、玄関… しまいに娘は「ヌガ サルリョチュセヨォ〜!(誰か助けて下さい〜!)」と悲鳴を上げる。 オンマの言う「チョンソエ ナリヤ(掃除の日だよ)」「マルルル タッカラ(床を拭いて)」の語尾にある「−ヤ」「−ラ」は話し言葉の特徴的な表現だ。 朝鮮語は日本語に比べて上下関係がはっきりしている。目下の者が年長者に向ってこういう表現は決して使わない。発表からは、希純ちゃん親子のほほえましい家庭の風景が伝わってきた。 金★浩くん(2年)のタイトルは「インフルエンザ」。こちらは事前に作成した原稿はなく、★浩くんが思いつくまま、その場で息子のリードにオンマがついて行く形となった。
インフルエンザにかかりひどく咳き込むオンマを「病院ヘ行って」と見送る★浩くん。オンマの留守を見計らってマンガを読み、戻ってきたオンマに気づかれまいと次々になぞなぞを出す。「若い時は青い服、老いては赤い服、これなあに?」(答え―とうがらし)、「雨が降った後に現れる『ケ』はなあに?」…。 「ペゲ(枕)?」「チウゲ(消しゴム)?」…。困ったオンマがついに出した答えは「ムジゲ(虹)!」。 軽快な言葉のリズムと★浩くんのおかしなジェスチャー、豊かな表情に教室中がどっとわいた。 一方、1年生のクラスでは、親子一緒に「発音練習(早口言葉)」が行われていた。ピョル ハナ(星1つ) ナー ハナ(私が1つ)、ピョル トゥル(星2つ) ナー トゥル(私が2つ)…。リズムに合わせて数字がどんどん大きくなる。これを席順に沿って、児童が星を数え、保護者が「私」を数える。まちがえた人はその場に起立。最初はゆっくり、徐々にスピードを上げていくと…あらら、起立しているのは保護者ばかりになってしまった。 ほかにも学年別に、しりとり遊び、反対語遊び、単語の翻訳、伝言ゲーム、クイズなどが行われ、教室ごとににぎわいを見せていた。 毎日少しずつ
全体集会では、同校教師による朗読「あおがえる」、アフレコ「となりのトトロ」が披露され、児童、保護者たちは朝鮮語の響きに耳を傾けていた。 各学年代表によるソロマルの発表で、安理沙ちゃん(1年)はアッパと弟の秀浩くん(3歳)とともに舞台に立った。 アッパ−理沙や、ウリハッキョ(朝鮮学校)に入学してもう1年になるね。学校は楽しい? 理沙−ええ、楽しいわ。 アッパ−理沙はこの1年でどんなことができるようになったんだ? 理沙−電車にのって学校に通えるようになったでしょ、算数の勉強もできるようになったし、1人で飛行機にのってハラボジ(おじいさん)、ハルモニ(おばあさん)がいる大阪にも行けるようになったわ。
ひとつ、またひとつと指を折りながら話す娘の姿を父親の判鎔さん(40)が温かく見つめる。 「この日のために毎日15分ずつ練習した。文章を考えたのはオンマ。アッパとは通学途中に練習をした」(判鎔さん) 母親の李京華さん(32)は、「私たちが学んだ頃とは違い、生活でよく使う言葉を学んでくるので、家でもよくウリマルを使う。上の子がウリマルをよく使うので、3歳になる下の子も一緒になってウリマルで話すようになった」と、うれしそうに話す。 康成天教員(28、少年団指導員)によると、同校の試みは保護者を取り込むことによって、子どもたちの「ウリマルを使える言語環境」を広げていこうという点に狙いがある。1世のウリマルが飛び交ったトンネが減少するなか、子どもたちがウリマルを学ぶ「場」は、もはや学校だけになってきているからだ。
また康教員は、同校では朝鮮で人気の「賢いたぬき」や、ジブリ、ディズニー映画などの朝鮮語版を、昼休みの時間に流しているとも語った。 「大人は北の作品、南の作品と線引きをするけれど、子どもたちにはそれがない。単純に好きなアニメの登場人物がウリマルで話している、と思っているだけ。耳が柔らかいうちにたくさん聞いて、話すことが大事」 発表会が終わったあとも、校内には子どもたちの元気な朝鮮語が満ちあふれていた。 (金潤順記者) ★=少に隹 [朝鮮新報 2007.3.16] |