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朝大理工学部生が朝高生のための実験DVDを制作 「科学探究の感動を伝えたい」

化学、生物、物理、数学など15の実験 2枚のディスクに

 朝大理工学部の学生47人が朝高生向けの実験DVDを制作、各地の朝高に寄贈した。

 「愛する朝高生たちに送る実験DVD」は、2枚組みで1枚目に化学、生物実験、2枚目に物理、数学実験と理工学部の紹介映像が盛り込まれている。

 企画、演出、出演、撮影、編集、発送すべて学生たちの手作り。

学部の特性を生かして

「愛する朝高生たちに送る実験DVD」。制作には8カ月が費やされた

 DVDの制作は昨年4月、朝大朝青活動の一環として、各学部支部別に行われる社会実践活動のひとつとして手がけられた。

 呉永鎬さん(物理科、4年)は、「理工学部の特性を活かして何かをしたかった。議論を重ね、教育現場で実践的に役立つものを、そして、ぼくたち自身も勉強になるものをテーマにしようとDVDの制作を決定した」と話した。

 実験内容は、化学−「酸素の濃度とスチールウールの煙硝反応」「金属元素の炎色反応」「塩素作りと塩素の性質」「金属イオンの分離と確認」、生物−「DNAの抽出と確認実験」「赤血球の観察」「ねずみの解剖」、物理−「運動量保存の法則」「磁化実験」「アルミホイルのブランコ」、数学−「確率実験」など15種類。

 DVDには、朝高生たちに理科の楽しさと自然の神秘、科学探究の感動を伝えようとする、先輩たちの熱い想いが込められている。

楽しめる教材に

DVDの一場面。朝高生にもわかりやすいようにと会話のシーンも盛り込まれた

 実験は高1から高3までの理科の教科書を元に、各学科別に行われた。黙々と実験の手順を紹介するだけではなく、朝高生たちに少しでもわかりやすいようにと、会話を織り交ぜながら楽しめるよう工夫を凝らした。

 出演者は全員、理工学部の現役学生たち。その多くが演劇経験のない学生だけに、カメラの前でうまく話せなかったり、仕草がどこかぎこちなかったりという場面もしばしば。撮影中はNGもたくさん出たという。

 鄭賢玉さん(化学科、4年)は、「出演者たちがセリフをなかなか覚えられず苦労した。自習やサークル活動などを犠牲にすることなく、そのほかの時間を利用して撮影したので、夜11時から明け方3時までかかることもあった」とふり返る。

 洪明貴さん(数学科、3年)は、「実験は成功しやすいものもあるけれど、なかなかうまくいかないものもあって、撮影には想像の10倍以上の時間がかかった」と話す。

 制作期間8カ月、4月にスタートして12月の完成まで、途中、駆け足で撮影する場面もあった。

 DVDの編集を担当した李得誠さん(電子情報工学科、3年)は、「実験の編集ははじめてだった。実験によっては1時間以上もかかるものもあったが、それを15分以内に収めるよう苦心した。ホームビデオカメラを片手に5人の制作スタッフで撮影、編集を行った」と話した。

現場の反応

DVD制作過程をふり返る学生たち(左から、李得誠さん、鄭賢玉さん、呉永鎬さん、洪明貴さん)

 朝大生たちから実験DVDを受け取った朝高教師と生徒たちからはいろんな反応が返ってきた。

 洪さんは、「神奈川中高にDVDを持って行ったとき、理科担当教員が、『これまで日本語で作られたものを授業で使ってきたが、朝鮮語で作られたものがあるというのは本当にありがたい』と褒めてくれた」という。

 1月末に東京中高で開かれた、各級学校教員の教育研究大会・中高級部理科分科では、このDVDの一部が上映され、その内容が紹介された。東京中高では、高2の授業で「ねずみの解剖」と「運動量保存策」が上映された。

 後日、朝大理工学部あてに200枚の感想文が送られてきた。

 「ねずみの解剖はお腹を割く場面がすごく印象的だった。でも、とても勉強になった。やってみたい実験は、化学の、炎の色が変わるもの。DVDはすべてわかりやすかった」「スーパーボールを使った実験や、ガラス玉の実験がわかりやすかった。磁石とクリップの説明は難しかった。このようにストーリー式の理科の実験を見たのは初めて。おもしろく見ることができて満足している。もっと別のバージョンも見てみたい」などと好評だった。

 東京中高の李美恵教員は、「実験にストーリーがついているので見ていて楽しい。授業でも利用したいと考えている。現場では、高級部の教員には理工学部出身が多いけれど、初、中級部はそうでない場合もあるので、初級部用の実験DVDがあると役立つのでは。希望としては、魚の解剖、気体の発生、ろ過の方法などを取り上げてくれるのが望ましい」との感想を寄せた。

役立つ教材

 呉さんは、DVD制作を通して感じたことについて、「高級部の教科書に載っている実験を通して新しい発見こそはなかったものの、朝高時代に理論や原理を学んで知識として知っていたものを自分の目で再確認することができて楽しかった。中高級部の時には理科室はあっても実験ができないことも多かった。僕らが作ったDVDが現場で活用されることを願っている」と話した。

 卒業を目前に控えている4年生の鄭さんは、地元(山口県)の学校に戻って教べんを執りたいと考えている。

 「私が朝大理工学部に来たのも山口で教師をしている両親の影響があってのこと。厳しい状況の中で、民族教育に半生を捧げてきた両親のような立派な教育者になりたい」と語った。

 呉さんも、「これまで理科の授業を通して学んできたことを子どもたちに教えたい。世の中にはまだまだぼくらの知らないことがたくさんある。これまで数多くの科学者たちがさまざまな研究のすえ、その原理を見つけ出し、後代に伝えてきた。ぼくも教育者となって、次代を担う子どもたちと学ぶ楽しさを分かち合いたい」と瞳を輝かせた。

 朝青朝大委員会・理工学部支部では、実験DVDに関する質問、意見を受付けている。

 問い合わせはEメールで、rigong-chibu@stu.korea-u.ac.jpまで。(金潤順記者)

[朝鮮新報 2007.3.2]