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そこが知りたいQ&A−大阪朝高土地裁判が行われているが?

子どもの「学習権」「民族教育権」を奪う不当なもの

 大阪朝鮮高級学校(東大阪市)の運動場明け渡しに関する裁判が3月15日から行われている。5月23日の第2回公判では大阪朝高側が準備書面を提出。歴史的経緯とともに東大阪市の不当な要求に反論した。7月11日には第3回公判が行われる。裁判で何が争われ、何が問題なのかをQ&Aで見る。

 Q:裁判では何が争われているのか。

 A:東大阪市が大阪朝高を提訴したもので、内容は@当該土地の明け渡し、ブロック塀、防球ネット等の撤去、A約7800万円等の支払い、B2007年1月1日から土地の明け渡し完了日まで月約47万円の支払い、C訴訟費用の負担−である。明け渡しを求められているのは運動場の4分の1に相当する約600坪だ。

 Q:提訴までの経緯は。

 A:大阪朝高は1965年に現在の敷地を購入し、73年に東大阪市玉串町から現在の菱江(町)に移転した。大阪朝高側はこれに先立つ72年、73年に移転した時点で東大阪市の土地区画整備事業に組み込まれていた敷地600坪について「土地区画整備事業による減歩(公共用地を生み出すために宅地面積を減らすこと)に関わる覚書」を市側と交わした。

第1回公判後に行われた緊急報告集会(3月15日)

 覚書には、「後刻決定される減歩は土地等で行うものとし、その方法については、学校という教育施設の有益性を考慮して、双方協議のうえ履行するものとする」と記されている。

 覚書に基づいて、同校は市と長年にわたって協議を重ねてきたが、市側が価格交渉の開きを理由に協議を一方的に打ち切り、同校に対し土地の明け渡しなどを求め、今年の1月31日、大阪地裁に提訴した。

 Q:何が問題なのか。

 A:まず、単なる土地に関する問題ではなく、子どもたちの学ぶ権利と民族教育権に関するものだということだ。東大阪市は、「人権尊重を目指した市民都市の創造」を掲げており、市側が提訴した根拠としている今回の土地区画整理事業はこの理念に反しているといえる。

 そもそも土地区画整理事業とは、都市計画区域内において、公共施設の整備改善と宅地の区画形質の変更による利用増進を図り、新たな市街地、住環境の構築を目指すものだ。

 同事業には特別な措置(95条)として、1項では「次に掲げる宅地に対しては、換地計画において、その地位、地積等に特別の考慮を払い、換地に定めることができる」ことが規定されており、その宅地として1号では「…学校、…その他の公共の用に供する施設で政令で定めるものの用に供している宅地」が、また政令58条5号では「学校教育法1条に規定する学校、同法82条の2に規定する専修学校及び同法83条1項に規定する各種学校」などが含まれている。

 こうしたことから、東大阪市は本来、同校での母国語での普通教育や体育を学ぶ生徒たちの学習権、教育権を保障するために、同校の基盤的な教育施設を保護することこそが求められている。

 Q:東京第2初級の裁判では和解が成立したが。

 A:和解とはいえ、学校側の正当な主張が受け入れられた、実質的には勝利と言えるものだ。東京第2の裁判に関しては、都側がそれまで学校側と続けてきた無償使用に関する契約を一方的に打ち切って提訴に踏み切った。

 今回の裁判でも、市側が覚書で協議しながら問題を進めることを確約しながらも、同様の対応を取って提訴を起こしている。日本当局による「朝鮮バッシング」「総連バッシング」が今回の裁判の背景にあることには留意すべきだ。

 また、東京第2のケースと同じように、日本の植民地支配によって奪われた朝鮮民族としての尊厳を取り戻すために同胞らが努力して築き上げたという歴史的経緯があり、運動場用地の砂の一粒一粒には同胞たちの「血と汗と涙が染み込んでいる」。

 Q:今後の展望は。

 A:東京第2の裁判が物語るように、「教育の場」と子どもたちの「学習権」を守るためには、多くの支持と協力が不可欠だ。現在、署名運動のほかに「支援する会」の発足が準備されている。第1回公判後の4月20日には、明け渡しに反対する緊急集会が行われ、1000人を超える同胞と学父母、日本市民らが参加した。

 国際人権規約上ではその権利性が高まっているにもかかわらず、日本における民族教育に対する権利が弱まるということはない。今回の裁判を、すべての子どもたちの学ぶ権利を保障させる裁判にしなくてはならない。(李松鶴記者)

[朝鮮新報 2007.6.27]