枝川裁判終結記念シンポ 朝鮮学校中心に連帯 民族教育権、さらなる拡充を |
「枝川裁判終結(実質勝訴)」記念シンポジウム「21世紀多民族共生社会とマイノリティの民族教育権−枝川裁判から今後の課題を展望する−」(主催=枝川朝鮮学校支援都民基金(「枝川基金」)、枝川裁判支援連絡会)が13日、東京朝鮮第2初級学校(東京都江東区)で行われ、学校関係者、支援者をはじめ同胞、学父母、日本人ら約100人が参加した。シンポジウムでは、在日同胞と日本市民、南朝鮮の同胞が心を一つにして朝鮮学校を守り抜いた力と運動経験をもとに、民族教育の権利をより拡充させ外国人学校、民族学校間の連帯を広げていくことが強調された。 ゴールでなくスタート
シンポジウムは、東京都が土地問題をもって不当に起こした裁判で、民族教育を実施してきた朝鮮学校の意義が認められ学校側が「実質勝訴」したことを受け、3年間の裁判闘争で得た経験を共有するために行われた。日本人の大学生や記者らも多く参加するなど関心の高さが伺えた。 主催団体である「枝川基金」世話人の佐藤信行氏は、「裁判はゴールではなく、多民族、多文化共生社会に向けてのわれわれのスタートだ」と強調した。 シンポジウムでは、裁判で民族教育の権利問題を歴史的、法的に解説、提起する意見書を提出した3人の教授と南朝鮮の支援者が発言した。 「原状回復義務としての民族教育権」という題目で発言した龍谷大学の田中宏教授は、在日朝鮮人の歴史について言及し、民族教育の権利の法的根拠について解説した。田中教授は、「日本の法は在日朝鮮人を外国人としながらも外国人として育つなと言っているようなもの」と指摘し、朝鮮学校が建てられた経緯、外国人学校が建てられている要因を深く考えなければならないと述べた。
四国学院大学の佐野通夫教授は「普通教育としての民族教育の権利」について述べた。佐野教授は憲法と学校教育法について言及し「朝鮮人の子どもたちであれば朝鮮語による教育を保障する。それが普通教育だ」と指摘。「日本社会が外国人学校、民族学校の重要性を認めるようになった。(日本が)民族教育を保障する国になれば」と述べた。 「国際人権法における教育への権利」について述べた大阪女学院大学の元百合子准教授は、在日朝鮮人と同じ外国人、マイノリティの人権としての母語(母国語)教育、民族教育の重要性を強調し、日本政府は朝鮮学校のような外国人学校、民族学校を財政的に補助する義務があると指摘した。 続いて、南朝鮮で裁判問題を提起し大きな反響を呼び起こし支援活動を展開した「韓国・枝川朝鮮学校問題対策会議」の宋在根事務局長が活動経過について報告した。宋事務局長は在日朝鮮人はこれまでは政治に利用されてきたが、今は在日朝鮮人の問題が北東アジアの平和と南北統一の象徴になっていると強調。南の人々は朝鮮学校の問題を日本の過去清算問題の一部とみなし関心をしめしており、民族教育が統一の重要性、必要性を確認させてくれたと述べた。 子どもの笑顔戻った
シンポジウムでは、東京第2初級の宋賢進校長が裁判を勝利に導くのに多大な貢献をした4人(発言者)に、教職員と生徒たちの手作りの感謝状を授与した。 宋校長は「多くの方々の支援によって生徒たちが安心して笑顔で学校生活を送れるようになった。学校を在日同胞だけでなく日本人や外国人が集える場にしていきたい」と述べた。 東京都枝川住宅管理委員会の金成泰委員長は、支援者らに感謝しながら「これですべてが終わったとは思っていない。新校舎を建設し未来ある子どもたちに立派な学校を残してあげたい」と述べた。 シンポジウムに先がけ、「枝川基金」の第3回総会が行われた。総会では継続して学校を支援していくことが決まった。 シンポジウムに続き、運動場で交流会が行われた。参加者らは焼肉を食べ、踊りも踊り、裁判終結を祝った。互いに裁判闘争の労をねぎらい交流を深めた。 ある学父母は「子どもたちの笑顔を取り戻してくれたみなさんに心から感謝している」と涙ながらに語っていた。(李泰鎬記者) [朝鮮新報 2007.5.18] |