総連、在日朝鮮人への不当弾圧 東京で真相報告会 |
「主人公になって反対運動を」 朝鮮に対し独自に実施している制裁措置を半年間延長するなど、日本当局の対朝鮮強硬策と総連、在日朝鮮人に対する不当な政治弾圧が強まる中、「朝鮮総連と在日朝鮮人への不当弾圧真相報告集会」(主催=在日本朝鮮人人権協会)が6日、中央大学駿河台記念館で行われた。同胞と日本市民ら約150人が参加した集会では、金舜植弁護士、古川健三弁護士、龍谷大学の金尚均教授らが発言。一連の強制捜査の不当性を指摘しながら、在日朝鮮人と日本市民が連帯して当局の暴挙に立ち向かおうと訴えた。 「朝・日連帯し立ち向かおう」
「薬事法違反」事件など強制捜査の違法性について発言した金舜植弁護士は、「薬事法違反」を口実にした一連の捜索の問題点を@被疑事実のねつ造、A正当な理由と犯罪の捜査をする必要性、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況にある場合など、日本国憲法や刑事訴訟法でうたわれている令状主義の違反、Bウィーン条約の違反であると指摘。捜査当局が、いまだ同胞女性に対する書類送検すらできていないことや、強制捜索時の押収物のほとんどが、準抗告申立後に還付されていることなどをあげながら、一連の不当捜索の違法性を訴えた。 金舜植弁護士は、東京都と国などに対して国家賠償を請求したことについて、「令状を発布したのが裁判所なので、裁判自体はとても難しいものになるだろう。それでも国家賠償を請求したのは、それだけ私たちの怒りが頂点に達しているから。法廷闘争とは別に、ここに集まったすべての人が今後どのような運動につなげていくかを考えていくべきだ」と述べた。 また、「税理士法違反」を口実にした北海道、兵庫県商工会などに対する強制捜索に関しても、商工会が結成された歴史的経緯と実績に鑑み、税務当局が一括申告と立会権などの税務代理を事実上認めてきたことを見ても、今回の強制捜索は不当極まりないと強調した。 そのうえで、首相官邸主導で行われている「総連つぶし」が、在日本朝鮮人科学技術協会から商工会、ひいては学校にまで及んでいるのが現状だと述べながら、「歴史を紐解くと、65年の『韓日条約』締結時にも同じような弾圧が加えられたが、70年代には組織と同胞の力でそれをはね除けた。傍観者、評論家になるのではなく、みんなが主人公になって、今の時代に合った運動を展開していかなければならない」と強調した。 日比谷公園大音楽堂使用許可取り消し問題について発言した古川健三弁護士は、都側は使用許可取り消しの理由として、右翼の抗議活動をあげていたが、裁判所にはその旨を伝える文章だけで、写真をはじめとする証拠物はいっさい提出していないと指摘。公の施設の利用拒否が違法であることは、地方自治法からも明らかであるばかりか、最高裁判例でも決着済みのことであり、今回の許可取り消しは法律、判例をあえて無視した暴挙だと強調した。 また最近、集会拒否の事例が増えていることに触れながら、「これは政治的表現の自由への侵害にほかならず、国際人種差別撤廃条約の明らかな違反だ」と語った。 そのうえで、国籍や民族の枠を超えた連帯が必要だと述べた。 最近の刑事事件における捜査当局と裁判所のあり方について発言した金尚均教授は、「不安」につきまとわれ「安全」を求める雰囲気が日本社会に広がりつつあり、そんな中で、いわゆる共謀罪法案や憲法9条改正、国民投票法案などが議論されていると指摘。一方で、日本当局が外為法の改正や特定船舶入港制限法、北朝鮮人権侵害対処法などにより朝鮮への圧力を強めていることについて、「限定された戦争」だと強調した。 また、一連の事件の問題点は、いわゆる微罪を嫌疑とする捜索と押収、別件逮捕、朝鮮との関係悪化に比例した日本政府と警察の対応にあると述べながら、「在日朝鮮人に対する弾圧を通して、日本の三権分立は崩壊していることが証明された」と語った。 「次世代では起こらないように」 集会では、参加者からも多くの発言があった。 東京青商会の鄭斗徹幹事長は、そもそも「薬事法違反」と総連東京都本部は何の関係もないと強調したうえで、本部会館に対する強制捜索の際、青商会の事務所には入ってこなかった警察当局が、自宅と乗用車に対し強制捜索を行ったと怒りを露にした。 鄭斗徹幹事長は、「警察が自宅に来た時、なぜこんな令状が出るのかという憤りを禁じえなかった」と述べながら、警察は「正当な理由だ」という一辺倒で、弁護士や関係者に連絡を取らせなかったと強調した。 また、「幼稚班に通う2人の娘たちは、乗用車の捜索に立ち会うため1時間半くらい家を空けた私が、警察に逮捕されたと思い泣いていた。強制捜索からしばらくの間は、インターホンが鳴るたびにとても不安がっていた」と当時を振り返りながら、「在日朝鮮人の地位は昔に比べよくなったと言われるが、一連の弾圧を通じて根本的な部分では何も変わっていないということを痛感した。次世代の時にはこんなことが決して起きないようがんばっていきたい」との決意を表明した。 3月12日から30日にかけてスイス・ジュネーブの国連欧州本部で行われた第4回国連人権理事会に、総連代表団のメンバーとして参加した人権協会の申静子理事は、「国際社会では、右傾化しつつある日本が孤立しているということを実感できた。これからも声を大にして国際世論に訴えていきたい」と力強く語った。 東京造形大学の前田朗教授は、「日本の中での人権侵害を反対するたたかいを、どのように連帯し展開するかというのは長い間の課題だった。しかし、多くのマイノリティーが分断されている状況でこれがなかなか難しい。すべてのマイノリティーが連帯するためには、内容的に不十分ではあるが、国際人権法しかない。ここに現在の悪い状況を乗り越えていく方法があるのではないか」と語った。 人権協会の柳光守会長は、「政府と警察が人種差別を先導するという恐ろしい現況は、まさに傍若無人の一言だ。しかし、私たちが厳しい状況に置かれるたびに日本の法律家や幅広い日本市民が連帯闘争を展開してくれた。これからも、不当な弾圧があるかぎり、日本市民と連帯し、団結の力で立ち向かっていかなけらばならないとの決意を新たにした」と語った。(李松鶴記者) [朝鮮新報 2007.4.11] |