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NHK番組改変事件 国際的非難に晒される日本 勝訴までの愛と勇気の6年

 いま、安倍政権は、「従軍慰安婦」問題をめぐって、国際的な批判の矢面に立たされている。米下院での決議の動き、ニューヨーク・タイムズ紙6日付は安倍首相ら日本の政治家らに対して「恥ずべき過去を克服する第一歩は、それを事実と認めることだ」と警告を発した。

 NHK番組改変事件における安倍氏らの政治介入もまさしくその「事実」を否認、抹消するために行われたのだ。

 00年12月に行われた女性国際戦犯法廷は、日本軍性奴隷制について昭和天皇に有罪判決を下すとともに、日本の国家責任をも認定した。世界の女性たちの長期にわたる勇気ある闘いとその成果への猛反発が、右派政治家たちを「法廷」をテーマにしたNHKのドキュメンタリー番組への圧力という前代未聞の異常行動に駆り立てたのである。

「女性国際戦犯法廷」は国際的に大きな注目を浴びた(中央は松井やよりさん、00年12月)

 しかし、NHK番組改変事件をめぐる裁判は、6年の闘いを経て、原告・バウネットが高裁で勝訴を勝ち取った。思えば、長い道のりであった。その間、金学順さんはじめたくさんの被害女性のハルモニたちが、加害者である日本政府の一片の謝罪を受けることなく無念の死を迎えた。また、「法廷」の実現のために世界各国を飛び回り、文字通り命をかけて取り組んだジャーナリストの松井やよりさんも病に倒れた。同氏は死の床で最後のメッセージを寄せて、拉致問題をめぐるメディアの偏向報道を追及しながら、「日本がかつての植民地支配と戦争によって北朝鮮の人々を痛めつけた歴史に対して謝罪も賠償も拒んで、隣国同士の正常な関係を作ってこなかった」(著書「愛と怒り闘う勇気」より)と批判した。松井さんのこの指摘は「法廷は謀略で、北朝鮮の工作活動」などと荒唐無稽な攻撃を繰り返す安倍首相らへの正鵠を射た反撃であった。拉致問題と絡めて北を非難すれば、何でもまかり通る日本の政治風土への鋭い警鐘が込められているのだ。

 この裁判を支えた人々は、「法廷」に結集した世界各国の民衆であり、長い間、日本軍の性奴隷制の下で苦難を強いられた女性たちとその支援者であった。NHKの番組改変事件を裁く裁判は、実は、日本の歪んだ歴史観そのものを問う場でもあった。

 近年、日本の右派政治家らは「従軍慰安婦」問題や朝鮮人強制連行についての妄言を繰り返している。「これらの言葉が教科書から減ってきてよかった」と述べた中山文科相(当時)や「創氏改名は朝鮮人が望んだ」(麻生外相)などと恥ずべき発言が止まない。性奴隷を強いられたハルモニたちの謝罪と補償を求める動きを「金ほしさ」と決めつけた政治家もいた。

 麻生氏に聞きたい。強制連行してきた朝鮮人たちを奴隷のように働かせ、賃金も払わず、炭鉱の事故の際にはボロ雑巾のように打ち捨て、補償金も支払わなかった血塗られた歴史を持つ麻生炭鉱の子孫として一片の良心はないのか。

 他民族、女性蔑視の土壌の中で生まれ、育まれた政治家が、拡大再生産され、戦争を煽り続けている日本。しかし、それを批判する人々もまた勇気を奮って発言している。「権力者は歴史の真実を捻じ曲げ、隠すことがある。だが、隠したはずの事実から生じた罪は消えない。事実をそのまま伝えようと努力するなかで、悲惨な戦争を繰り返させない平和主義の考え方をしっかり学ぶことこそ大事だと思う」(朝日新聞、04年11月30日付「声」欄より、19歳)

 この事件は、闘う勇気と連帯の力をもう一度私たちに教えてくれたように思う。(朴日粉記者)

[朝鮮新報 2007.3.16]