top_rogo.gif (16396 bytes)

枝川朝鮮学校弁護団が談話 土地問題裁判和解成立で

「子どもの不安取り除けた」

 東京地方裁判所で8日行われた東京朝鮮第2初級学校土地問題裁判で和解が成立したことと関連し、弁護団は同日、談話を発表した。談話全文と東京地裁が示した和解勧告案を以下に紹介する。

弁護団談話

 本件訴訟は、東京都及び江東区が、学校法人東京朝鮮学園が運営する江東区枝川にある東京朝鮮第二初級学校(枝川朝鮮学校)が都有地を「不法占有」しているとし、65人の子どもたちが現に学んでいる学校について、それまでの経緯を無視して、不当にも校庭の明渡と校舎の一部取壊し及び地代相当損害金として4億円もの損害金の支払いを求めたものです。

 私たちは本件訴訟において、戦前、在日朝鮮人が都によってゴミ焼却場しかない荒地であった枝川の地に強制的に移住させられた歴史と戦後、東京都が枝川の地の管理、改善を一切放棄し、校庭整備も新校舎建築もすべて在日朝鮮人が自力で築いてきた歴史について主張しました。また、憲法及び国際人権規約に照らせば、国籍、民族にかかわらず全ての子どもたちに人権としての教育権が保障されなければならず、そのためには朝鮮学校を含めたすべての外国人学校、民族学校を「正規の学校」として制度的に保障し、子どもたちの心身の全面的な発展をはぐくむ母国語(継承語)による普通教育を受ける権利を保障することが、日本政府及び地方自治体の法的責務であることを主張しました。そして、歴史的経緯と教育権保障のために、1972年に東京都との間で都有地の無償利用契約を締結するに至ったこと、その契約は継続しており、学校に占有権原があることを主張してきました。

 2006年12月21日の法廷における学校当事者及び弁護団の意見陳述並びに被告の主張を受けて、2007年3月1日付で裁判所より和解勧告がなされました。和解勧告は、本件土地が戦後直後から在日朝鮮人が心血を注いで築き今日まで守ってきた朝鮮学校の校地であり、今後もそうであり続けることを理由として特別な安価での売却を勧めるものでした。

 本日、私たちは3年以上にも及ぶ裁判の間、自分たちの学校が取り上げられてしまうという不安の日々を強いられてきた子どもたちに対し、一日も早く、不安を取り除き安心して学べる学校を確保することを第一の意義とし、和解するに至りました。子どもたちはもう二度と、学校をとりあげられるという不安に苛まされることはないという事実が、私たちの一番の喜びです。

 裁判において、朝鮮学校は正規の学校ではなく各種学校だから校庭は必要ないと主張していた東京都が、最終的に朝鮮学校が朝鮮人の子どもたちの教育権を保障する場であり、日本社会にとって公共的、社会的な存在意義があると認めて和解に至ったことは重要な意義があります。

 和解という決着の性質上、在日外国人の教育権の法的権利性を明記できなかったことは残念ですが、それは私たち、また日本の裁判所、そして日本社会に残された課題です。在日朝鮮人をはじめとする外国人の子どもたちの教育権保障のため、最後の2年間をがんと闘いながら、文字通り命を削って奮闘した故・新美隆弁護団長の遺志を継ぎ、私たち弁護団は、引き続きこの課題に取組むことを誓います。

 本件和解は、何よりも枝川朝鮮学校をはじめとする朝鮮学校関係者、枝川住宅管理委員会をはじめとする枝川住民の方々の、子どもたちを、朝鮮学校を守ろうとする献身的な尽力の成果であり、また江東区民を中心とする「枝川裁判支援連絡会」及び「枝川朝鮮学校支援都民基金」に集まった全国の方々、さらに韓国における「枝川朝鮮学校問題対策会議」など多くの方々の熱い支援のたまものであり、弁護団はここに厚く感謝の意を表します。

東京地裁和解勧告(案)

 本件は、原告が、別紙物件目録1記載の各土地及び同目録2記載の各土地(東京都道の敷地であり、昭和28年4月、江東区が区道として認定し、その後、道路路線廃止となった)の所有権に基づき、それらの土地を東京朝鮮第2初級学校の校舎敷地及び付帯施設として使用している被告に対し、建物収去土地明渡等を求めている事案である。

 これらの土地は、昭和20年ころから、深川初等学園、東京都立第2朝鮮人小学校等の用地等として一体利用されてきたが、原告は、昭和30年ころ、被告に対し、朝鮮学園校地として使用を承認した上、昭和38年12月23日には、そのうちの280坪を売却し、昭和40年ころには、そのうちの1220.12坪を有償で東京朝鮮学園敷地として使用を承認し、昭和45年4月からは1220.12坪について無償で貸し付けた(昭和47年3月15日付の東京都公有財産管理運用委員会の決定により、昭和45年4月1日に遡及し、同日から20年間を貸付期間として、随意契約により東京朝鮮第2初中級学校敷地としての用途指定をして貸し付けられた)という経緯があり、平成2年4月以降も、原告と被告との間で、上記各土地の払下げについて断続的に交渉が行われてきたが、合意に至らなかった。

 被告は、引き続き、現状のとおり、上記各土地を東京朝鮮第2初級学校の校舎敷地及び付帯施設として使用する意向を有している。

 当裁判所は、以上のような上記各土地の利用状況及び本件紛争の経過等にかんがみ、被告が、今後とも、現状のとおり、東京朝鮮第2初級学校の校舎敷地及び付帯施設として利用し、それ以外の目的には使用しないことを条件とした上で、原告が、被告に対し、上記各土地を、上記の経過を踏まえた相当額で売却することによって、本件紛争を早期に解決することが相当であると考え、ここに、和解条項(案)のとおり、和解を勧告する。

[朝鮮新報 2007.3.12]