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高齢者無年金訴訟、京都地裁 訴えを棄却

「年金、掛けたくても掛けられなかった。もらいたくても、もらえない」 ただ差別なくしたいだけ

「命をかけて闘う」と固く決意した原告のハルモニたち

 「原告らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする」

 2月23日、京都地裁101号法廷には入りきれないほどの人々が傍聴に訪れた。しかし下されたのは非情な「3秒判決」であった。

 外国籍を理由に無年金状態に置かれている京都府の同胞高齢女性5人が、老齢年金を受給できないのは違憲であり、長い間精神的苦痛を受けたとして日本に損害賠償を求めた(2004年12月21日提訴)。

 しかし、京都地裁(山下寛裁判長)は、「立法府の裁量権の範囲を逸脱するとは言えない」として、原告らの請求を棄却した。

「最悪の判決」

 大阪地裁の同種訴訟では原告側が1、2審ともに敗訴している。4月以降、福岡地裁でも新たな訴訟が起こされる見通しだ。その流れの中で京都地裁には強い関心と期待が寄せられていた。それだけに歴史的経緯を無視した判決に「どこまで私たちを苦しめるのか。くやしくて言葉にならない」と原告のハルモニはこぼした。弁護団は「最悪の判決」と断言する。

 閉廷後の報告集会で、伊山正和弁護士は新しいものがなにもない、大阪地裁の判決より一歩後退したような判決であり、何を悩み、何を考えたのか、判断までの思考が見えない、価値の乏しい判決であると判決文に目を通して述べた。

 ほかの弁護士、支援者たちも立法裁量権を盾にした血の通わない判決、歴史的経緯よりも国籍が重要とは裁判官はなにを聞いていたのか、細かな事柄を無視し判決が下されたと、一同に京都地裁が下した「不当判決」に批判の声を上げた。

 また、社会科学的にみてよい判決とは立場を変えても納得のいくものであり、自国が責任を負うべき社会保障を一方的に本国(朝鮮)が保障すべきとは国際的に鼻で笑われる程度、最高裁から見れば京都地裁は「優等生」との指摘も出た。

 総聯京都府本部常任委員会(金學福委員長)は「日本政府は歴史的経緯から見て、本来在日朝鮮人を保護し補償すべき立場であるにもかかわらず、反人道的、反道義的行為を繰り返していることに、われわれは強い憤りを感じている」と批判声明を出した。

「勝訴するまで」

 昨年の口頭弁論で原告のハルモニたちは「在日が年金をもらえないのは不公平。戦争中は朝鮮人をこき使って、戦争が終わったら利になることは全部カットされた。旧植民地出身者の犠牲者が死ぬまで『悪い奴』のレッテルを貼られることなく、人間としてあたりまえの権利を保障してほしい」「戦時中は『非国民』、戦争が終わったら『国が違う』とは、あまりにも虫が良すぎる。残り少ない私の人生を助けて」と悲痛な思いの丈を訴えている。

 棄却判決に対し原告のハルモニたちは「もっといい答えが聞けると思っていたのに、日本政府は勝手だ」「年金、掛けたくても掛けられなかった。もらいたくても、もらえない」「同じように働いてきたのに許せない」と語り、「勝訴するまで、命をかけて闘う」と決意を表明した。会場からは割れんばかりの拍手が起こった。

 ハルモニたちは今なお、年金の助けもなく苦しい生活を余儀なくされている。

 ある支援者はハルモニたちの心情を代弁する。

 「ハルモニたちはただ年金がほしいのではない。差別を無くしたいのだ」

 原告たちの年齢からも、この無年金問題の解決には一刻の猶予も許されない。(鄭尚丘記者)

[朝鮮新報 2007.2.28]