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〈07年受験資格問題 -上-〉 許されない玉川大学の突出した対応

 1月10日、神奈川朝鮮中高級学校教員から一本の電話があった。

 今年3月に卒業予定の同校に在籍する男子生徒が玉川大(東京都町田市)の一般入試に出願しようとしたところ、「受験資格がない」と拒否されたという。同教師らが受験を認めるよう求めたものの、大学側の担当者は「各種学校卒業生に関しては、高等学校卒業程度認定試験(旧大検)合格及び合格見込みの者に限っている。抗議をしても方針は変えない」と繰り返したとのことであった。

 通報を受けた人権協会の呼びかけで寄せられた全国の同胞、日本の市民運動家からの方針の見直しを求める要請もあり、15日になって大学による緊急の入試検討委員会が開かれるも、受験不可の決定が再確認されたに過ぎなかった。

 これを受け、18日に神奈川朝高の教員とともに人権協会の弁護士2人が大学を訪れ当事者の生徒の代理人として入学資格認定書交付申請書を提出、翌19日には日朝友好関東学生の会の代表らが要請に行き、24日には神奈川オモニ連絡会が入試拒否決定の見直しを求める要望書を提出するなど、26日の願書提出締切日までさまざまな要請活動が繰り広げられた。しかし、大学側は「各種学校卒業生に対しては『平等』に高卒認定試験(旧大検)を受けて貰うことにして」いるとして、当初担当者が宣言した通り受験拒否の方針が変わることはなかった。

 03年9月、文部科学省は大学入学(受験)資格問題に関する省令等を改定し、それ以降文部科学省は朝鮮学校の卒業(見込み)生について、大学の自主的判断で入学(受験)資格を認めることは問題ないとしている。

 これによって朝高卒業生の大学入学資格問題は大きく前進し、国立大学をはじめそれまで門戸を閉ざしていた大学においても朝高卒業生の受験が認められるようになった。

 05年12月、私立の日本歯科大学(東京都)が神奈川朝高3年生の受験を一度は拒否したものの、同胞弁護士らによる要請により立場を一転、受験を認めることとなった。昨年10月には公立である会津大学短期大学部(福島県)が東北朝高に在籍する3年生の推薦入試申請を受け、入試委員会による協議を経て同大推薦入学者出願資格を改定し、生徒の推薦入試を認めるに至った。

 このように、かつて朝高に通いながら通信制の高校に通うなどの「ダブルスクール」を余儀なくされ、自らが通った母校の看板を背負えず大検合格者としての受験を強いられた朝高卒業(見込み)生は今や、保護者たちや学校関係者、同胞弁護士や良心的な日本人による要請活動によって「朝高生」として堂々と希望する大学への進学の道が開かれることとなってきているのだ。

 このような趨勢のなかで一条校卒業生でない朝高生の受験申請は受け付けないとする玉川大学の対応は突出したものといえるだろう。

 また、日本全国に数ある大学のなかから研究したい分野、学びたい環境から同校を志望した生徒の夢や希望を打ち砕くものであり、何よりも民族の言葉や文化を学び民族的アイデンティティを育む朝鮮学校での生活、ひいては朝鮮人として生きることの否定につながるもので、到底許されるものではない。(宋恵淑、在日本朝鮮人人権協会)

[朝鮮新報 2007.2.10]