受験拒否の玉川大に個別審査要求、要請書など提出 |
「大学出願資格の有無、判断するべき」 民族教育否定と同義 神奈川朝鮮中高級学校の男子生徒(18、高3)が玉川大(東京都町田市)の一般入試に出願しようとしたところ、「受験資格がない」と拒否された問題で18日、同校進路生活指導の金泰輔教員、人権協会副会長の洪正秀弁護士、李春熙弁護士、金東鶴理事、宋恵淑副部長ら5人が玉川大を訪れ、個別審査を要求し、要請書、申請書などを提出した。 申請書は学校教育法、玉川大学の出願資格に関する規定に触れ、「貴大学において、申請人が『高等学校を卒業した者と同等以上の学力』を有するか否か、大学出願資格の有無を判断する法的責務がある」と指摘した。 玉川大の大学出願資格に関する規定では「その他、相当の年齢に達し、高等学校を卒業した者と同等以上の学力があると本校が認めた者」とある。弁護士らはこの規定を朝鮮学校卒業生に対し適用することが十分可能ではないかと指摘しながら、1条校卒業(見込み)生でない各種学校卒業(見込み)生の場合、高卒認定試験(旧大検)合格が入学試験受験の要件であると繰り返す大学側の担当理事、総務、入試広報担当者らに再度、個別審査を認めるよう要請した。 金理事は、「現行の教育基本法の枠組みの中で民族教育を施すには、各種学校に甘んじるしかない。子どもたちに民族の言葉や文化を教えるのは当然の権利であり、民族教育を受けた子ども達の夢や希望を1条校卒業生でないということで跳ね除け、高卒認定試験を受験要件として課すことは子どもたちに不当にハンデを背負わすものである。同じスタートラインに立たせてあげることが血の通った判断である」と述べ、同大の今回の判断は、民族教育の価値と必要性を認めないことと同義であり、時代錯誤であると強調した。 金教員は、生徒の「朝鮮人として生まれたがためなのか。民族教育という選択肢が間違いだったのか」と苦悩する心情を代弁。宋副部長は、朝鮮学校高級部卒業生に高卒認定試験を課すことは、高級部での学校生活と民族教育、ひいては朝鮮人として生きることの否定につながり、国際化の流れの中で認められることではないと話した。 大学側は国際化の流れの中で立ち後れている点もあると一部認める発言はしたものの、今回の生徒の件について高卒認定試験合格を条件とする方針を変更し、受験を認める考えはないと繰り返した。願書締め切り日は26日。 文部科学省の大学入学(受験)資格問題に関する省令等が改定された03年9月以降、文部科学省も朝鮮学校の卒業(見込み)生について、大学の自主的判断で入学(受験)資格を認めることは問題ないとしている。それ以降、基本的に朝高卒業生の受験資格は国立大学をはじめそれまで門戸を閉ざしていた大学においても認められるようになった。こうした点から、1条校卒業(見込み)生でない朝高生の受験申請は受け付けないとする玉川大学の対応は現状に逆行したものだ。 民族教育権に関して国連条約委員会からは、「朝鮮出身の児童の高等教育施設への不平等なアクセス」(第1回子どもの権利委員会の総括所見98年6月5日)がたびたび懸念され是正勧告が出されており、「人種主義、人種差別、外国人嫌悪、関連する不寛容の現代的諸形態」に関する特別報告者であるドゥドゥ・ディエン氏が自身の報告書において、朝鮮学校と他の外国人学校との間にある処遇の違いを根絶するために必要なあらゆる手段を講じるべきだと日本政府に対して求めていることに鑑みても、玉川大の判断は重大な人権侵害と言わざるをえない。 人権協会の弁護士らは生徒の夢や希望を絶つことは到底出来ず、願書締切日まで引き続き大学側に対し受験を認めるよう働きかけていくと語ると同時に、外国人の教育権利を保障する観点から一連の法整備が早急に必要であり、03年の文科省の措置ではいまだ不十分であると指摘している。(鄭尚丘記者) [朝鮮新報 2007.1.24] |