国際ワークショップに参加して 韓昌道 |
一つの民族である証を実感、朝鮮半島のツルの保護など論議 このたび、私は11月3〜8日にかけて中国の遼寧省盤錦市で開催された、北東アジア地域におけるツル類の生息地を保護するための国際ワークショップに朝鮮大学校の野生生物研究室の室長をされている鄭鐘烈教授と一緒に参加してきた。 このワークショップには、北東アジア地域に含まれる中国やモンゴル、ロシア、日本を始め、もちろん北南朝鮮からも研究者が参加しただけでなく、米国やドイツ、オーストラリアからも熱心な研究者が参加した。この期間に得たすばらしい経験について紹介したい。 話し合われたこと
今回のワークショップでは、ツル類の繁殖地や越冬地、また一時的な生息地(渡りをするにあたっての中継地点など)をどのように保護し、そこで発生しているさまざまな問題をどうやって解決していくべきなのかを各国の研究や経験を基に、それぞれの国が互いに情報交換を行いながら学び模索していこうというもので、多くの発表がなされた。もちろん朝鮮半島に関してもツル類の一時的な生息地や越冬地があるため、そこで発生している多くの問題について議論がなされた。 とくに今回のワークショップの場において積極的に話し合われたのが、朝鮮の江原道に位置する安辺地域にもともと生息していたタンチョウ(ツルの一種)を南朝鮮の鉄原から呼び戻すという計画と、鹿児島県出水市に集中したマナヅルとナベヅルを慶尚北道亀尾市の海平湿地(洛東江流域)に呼び戻す計画の2つだった。 現在、これらの地域内(鉄原と出水市)ではツル類に対する人工的な給餌や保護活動によりその数が増え、周辺地域における農作物への被害や鳥インフルエンザなどの伝染病による大量死が危惧されるようになった。この計画は、それらを解決するための試金石となるものだが、規模も大きいだけに困難も多いと予想される。しかし、今回私が感じたのは、この問題を解決する鍵こそ北と南だけではなく私たち、海外同胞研究者の惜しみない協力と努力にあるのだということだった。 統一を実感した日
今回催されたワークショップの期間において、私にとっての何よりも大きな収穫、それはまさに「出会い」だった。多くの研究者と出会い共に過ごし議論する中で築かれていった信頼や期待などは、これからの私の可能性を幅広く深いものにしてくれるだろうと確信している。 そんな中でやはり一番の出会いは北南の研究者との出会いであり、千金とも換えることのできない大切な思い出だ。 6日の夕食時のこと。 北南朝鮮の研究者、そして鄭先生と私の9人が偶然にも一つのテーブルを囲み食事をすることになった。それまでにも一緒に食事をしていたが、席があらかじめ指定されていたために「オール朝鮮民族」にはならなかった。 そしてこの時、この偶然に感激した鄭先生の「ウィハヨ(〜のために)!」という音頭に合わせてみなが祝杯をあげた。これには大きく2つの意味が込められていた。朝鮮民族の切実な願いである祖国統一と、先ほど紹介した計画の成功のために共にがんばろうということだ。大変感動的で意義深い瞬間だった。
また、食事をする最中に亀尾市から来られた方がチューブ型のコチュジャンを私に手渡し、ご飯につけて食べればおいしいぞと薦めてくれた。中国料理にも飽き飽きし食欲がなかった時だったので、水を得た魚のようにうれしかったのだが、そのコチュジャンは、やがて手から手へと渡りテーブルを一周したのだ。これこそわれわれは一つの民族であるという証ではないだろうか!! ツルをはじめ渡り鳥は、分断の象徴である38度線を簡単に飛び越え、皮肉にもわれわれ民族の傷跡であるDMZ(demilitarized zone、非武装地帯)を「安全地帯」として休息のために利用している。そのツルや渡り鳥の研究にみなが携わってこられたからではないだろうか。 私には、このテーブルにおいて分断の鉄条網など一切探すことはできなかった。まさにこの状況こそ、「祖国統一」そのものだと感じた。「わが民族同士」というスローガンがあるが、その理念の基で考えてみると、まさにあの場こそ私たちの夢が夢だけでは決して終わらないという証だったのだと思う。 祖国統一はもう夢物語ではない。渡り鳥を羨ましく、恨めしく思う時代はもう終わると思う。 少なからず私には自分の羽が見えるが、今はただもっと大きく力強くするために必死に勉強しなければと焦る気持ちでいっぱいだ。早く祖国の空を思いっきり飛びたい。思いっきり!!(愛媛大学大学院農学研究科生物資源学専攻環境昆虫学研究室修士2年) [朝鮮新報 2007.12.7] |