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〈同胞法律・生活センターPART4 H〉 子ども家庭福祉 B−ひとり親家庭

福祉サービスの積極的利用を 弱くなりがちな生活基盤

 現在、日本社会では夫婦の4組に1組が離婚しているとのこと。厚生労働省の統計によると、2004年をピークとしてここ数年はわずかながら減少傾向にはあるものの(離婚件数減少の原因は、2007年度より離婚による年金分割が可能になったことから、この新制度の施行を待って離婚を先送りする人たちが増えたと言われています)、バブル崩壊直後の1990年代前半より離婚件数は大幅に増加してきました。

 そのようなことを背景にして、ひとり親家庭が増加しています。若い世代のライフスタイルや価値観の多様化もあってか、「生別」「死別」には因らない、結婚をしないで子を持つ「未婚」の家庭も増えています。

 「ひとり親家庭」という言葉は、母子家庭・父子家庭の総称として近年定着してきた用語です。母子家庭や父子家庭が、いわゆる「両親家庭」と対置される「欠損家庭」として捉えられがちであることや、上記で述べたひとり親家庭の多様化などの現実を踏まえ、「欠損」という捉え方を否定する中立的な価値を備えた用語として使われるようになりました。

 実際のところ、2002年には「母子及び寡婦福祉法」が改正され、その対象が「母子家庭等及び寡婦」とされ、父子家庭も含まれることになっています。

 ひとり親家庭はその文字どおり、一人の親が稼いで子を養育するという生活のため、就労と育児の両立に伴うさまざまな負担や、両親共働きの世帯に比べて所得が低いことなどから、生活基盤がどうしても弱くなりがちです。そのため、さまざまな支援が必要とされており、ひとり親支援のための施策が日本政府や自治体独自で行われています。

 Q 先頃ようやく離婚調停が終わり、私が娘を引き取って育てることになりました。ひとり親家庭のための福祉サービスにはどのようなものがありますか?

 A 児童福祉の分野ではひとり親家庭の支援サービスについては国籍などの制限はないので、在日同胞もなんの問題もなく利用ができます。

 ひとり親家庭が利用できるサービスには、とくに母子家庭の場合、まず児童扶養手当があります。所得による制限があり、手当の金額は異なりますが、全額が支給される場合子ども1人ならば4万1720円で、2人ならば月額5000円の加算となります。この児童扶養手当は、例えば、夫が家を出て行方不明となり1年以上経過しているような場合でも受給できます(来年4月より子どもが3歳になってから5年以上受給している世帯は最大で半額まで減額されます)。また、母子福祉資金の貸付(福祉事務所が窓口)や、税制上では寡婦控除や利子非課税制度の適用を受けることができます。

 仕事が忙しく、子どもの保育園への送迎や家事が十分にできないような場合は、家庭生活支援員による生活援助サービスや、一時的に子を施設に預ける短期入所生活援助、夜間のみ子を預けることができるサービスの利用もできます。

 これらとは別に、地方自治体が独自に行っているサービスもあります。東京都の場合は、児童育成手当(父子家庭を対象、所得による制限あり)をはじめ、子どもの医療費助成、JR通学定期券の割引、都営バス・地下鉄などの無料乗車券、粗大ゴミ処理手数料の免除や、水道・下水道の月額基本料金免除などのサービスがあります。大阪市やさいたま市の場合、東京都のような児童育成手当はありません。自治体によりその内容は異なっているので、最寄りの市区町村役場で確認してください。(金静寅、社会福祉士)

 まもなく開設10周年を迎える同胞法律・生活センターは、12月8日土曜日午後3時より浅草ビューホテルで、「パネルディスカッション同胞の生活支援を考える−より暮らしに密着した活動をめざし」を開催します。ぜひ、ご参加ください。(詳細は事務局まで)

※NPO法人同胞法律・生活センターでは、暮らしをテーマにした各種の講座、学習会を企画し、そこに適切な講師を派遣します。地域の同胞を対象にした講座等の開催を検討されている総連本部、支部の担当者のみなさん、お気軽に事務局までお問い合わせください。TEL 03・5818・5424、FAX 03・5818・5429

[朝鮮新報 2007.12.3]